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航空管制入門!④空域、飛行経路と管制官の役割分担を結び付けよう!

こんにちは。ころすけです。

航空管制入門!①~③では、航空管制の目的、空域の種類、飛行経路(飛行フェーズ)の考え方を解説しました。(過去記事のリンクは最後にあります。)

ここまでは航空管制と言いながら、実は航空管制官が全く出てこない記事だったのですが、今回ようやく航空管制官が登場します。

なぜこのように回りくどい段階を踏んだかと言うと、航空管制官の業務内容だけ説明したところで空域の理解や飛行経路についての知識がなければ、おそらく意味不明で終わってしまうからです。

管制の目的や空域の種類、飛行経路を理解していれば、間違いなく管制官の業務について解説をスッと理解できることと思います。

それでは始めましょう。

航空管制官の役割は管制席で異なりコールサインも違う

エアラインのようにある空港を出発して、何百キロも離れた別の空港に向かって飛行する場合、その飛行機を同じ管制官が出発から到着までずっと管制するということはありません。

飛行機は交信する相手の管制官を順次切り替えながら、目的地に向かって飛行するのです。

では、どのタイミングで交信する管制官を切り替えるのでしょうか?

実は管制官の役割は空域や飛行フェーズによってそれぞれ担当が分かれているのです

つまり空域や飛行フェーズが変われば、その飛行機を担当する管制官も変わるということです。

飛行機の管制担当がある管制官から次の管制官にバトンタッチされることをハンドオフと言います。

管制官はそれぞれ、その日自分が担当する役割に応じて管制所内で座る座席が異なります。

このように座席ごとに目の前のモニターに映し出される情報や目を配るべきエリアが異なり、文字通り席が分かれていることから、それぞれの担当役割は管制席と呼ばれます。

また航空管制は無線機を使った音声通信をするのが基本ですが、その際、相手を呼び出すための呼び出し符号(コールサイン)というものがあります。

飛行機側が管制官を呼び出す際、パイロットは現在自分が飛行している空域や飛行フェーズを担当している管制官を呼び出す必要がありますが、これらの名前も管制席によって区別されるようになっています。

「東京コントロール」や「○○タワー」といった管制用語を聞いたことはありませんか?

実は「コントロール」も「タワー」も航空管制官のコールサインであることは同じなのですが、それぞれ管制席が異なり、異なった役割を担当しているために区別されているのです。

それではここからは具体例に沿って、空域と飛行フェーズ、そしてこれらを担当する管制席を順番に見ていきましょう。

例では羽田空港を離陸して、福岡空港に向かう便を考えます。

離陸許可を出すのは「タワー」で、航空交通管制圏を担当する

まず、飛行機が離陸する際に交信する管制席は「タワー」と呼ばれ、離陸の許可はタワーから出されます。

この管制席がどこにあるかと言うと、空港に立っている管制塔の最上階です。

タワーは別名飛行場管制席と呼ばれ、担当する範囲は航空交通管制圏、つまり飛行場から半径5NMの範囲内です。

この範囲の飛行機は今まさに離陸しようとしている飛行機や、もう間もなく着陸する飛行機になりますから、タワーのメインの役割は飛行機に離着陸の許可を出すことです。

航空交通管制圏のイメージ

コールサインは羽田空港なら「東京タワー」、成田空港なら「成田タワー」といった具合に空港名+タワーです。

ちなみタワーの管制席ではレーダー画面のようなモニターを見るのではなく、目視管制が基本になります。

管制官は肉眼で飛行機の状況を確認し、指示や許可を出すのです。

タワー管制官の画像出典: 国土交通省ホームページ https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr14_000068.html

離陸後の監視は「デパーチャー」で、進入管制区を担当する

離陸した後、飛行機はSID(標準計器出発方式)にしたがってエンルートを目指しますが、タワーの担当エリアを出て次にコンタクトするのが「デパーチャー」です。

デパーチャーは出域管制席と呼ばれますが、”デパーチャー”と表現するほうが一般的です。

では、デパーチャーの管制席はどこにあるのでしょうか?

こちらは先ほどの管制塔ではなく、空港の敷地内にあるレーダー管制室になります。

デパーチャーの管制席では飛行機を直接見ることなく、レーダーの画面だけを頼りに飛行機を監視し、指示や許可を出すのです

レーダー管制室の画像出典:国土交通省ホームページ https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr14_000086.html

このデパーチャーが担当する空域は進入管制区になります。

進入管制区のように空港に近いエリアのことをターミナルエリアと言いますが、このターミナルエリアをレーダーを用いて管制を行うことから、デパーチャーが担う業務のことをターミナルレーダー管制業務と言います。

羽田空港の場合は東京進入管制区と言い、羽田空港内のレーダー管制室で業務が行われています。

進入管制区は出発してエンルートに至るまでの飛行機を交通整理する空域ですから、飛行フェーズで言えば概ねSIDのフェーズに一致します。

離陸から進入管制区(出発)へのイメージ

下の図は東京進入管制区の外枠と、羽田空港から出発するSIDの終点となるウェイポイントをプロットしたものです。

これら終点のウェイポイントから次のエンルートのフェーズに移っていくわけですが、SID終点のウェイポイントの多くは進入管制区の境界近くに設定されていることが分かります。

東京進入管制区の範囲

コールサインは東京進入管制区なら「東京デパーチャー」となり、ターミナルレーダー管制が実施されている空港名+デパーチャーとなります。

ところで、よく見ると東京進入管制区は成田空港の離着陸機が通る霞ヶ浦周辺や、銚子沖のエリアもカバーしていることが分かります。

東京進入管制区は成田空港を離陸する飛行機も取り扱っており、成田の航空交通管制圏を出た飛行機も次に東京デパーチャーにコンタクトするのです

実は数年前まで、成田空港には成田進入管制区があって、羽田空港とはそれぞれ別の管制室でレーダー管制を行っていました。

より効率的な管制を行うために、現在はこれらの管制室が羽田空港に一元化されているのです。

最近はターミナルレーダー管制の一元化が進んでおり、例えば関西進入管制区では関空、伊丹、神戸空港の飛行機のほか、高松空港や高知空港の飛行機も取り扱われています。

航空路管制は「コントロール」。洋上航空路は少し特殊。

さあ、続いては航空路(エンルート)の管制について見てみましょう。

航空路は陸域(QHN適用区域)のルートと洋上のルートの2種類に分けられます。

まず陸域のルートですが、こちらは空域としては進入管制区を除いた航空交通管制区が該当します。

陸域の航空路管制も進入管制区と同じで、レーダーを用いた管制業務が行われています。

コールサインは「コントロール」です。

ではこのコントロールの管制席はどこにあるのでしょうか?

コントロールを担当するのは全国に4つある管制区管制所(ACC: Area Control Center)の航空交通管制部というところで、札幌航空交通管制部(札幌市)、東京航空交通管制部(所沢市)、福岡航空交通管制部(福岡市)、神戸航空交通管制部(神戸市)の4か所です。

航空交通管制部の所在地

各ACCは下図のように担当する空域を分担しており、それぞれのコールサインは札幌コントロール、東京コントロール、福岡コントロール、神戸コントロールです。

ACCのエリア分け

つまり、例えば羽田空港から離陸して福岡空港に向かう場合、エンルートの最初は東京コントロールと交信しますが、福岡ACCのエリアに入る岡山あたりで福岡コントロールに交信が切り替わるわけです。

沖縄周辺が神戸コントロールになっているところが「おやっ?」と思うかもしれませんが、神戸ACCは少し前まで那覇ACCとなっていました。

実はエンルートも管制の一元化が進められており、最終的には4つのACCが2つに統合されて、東日本を東京ACCが、西日本を神戸ACCが担当するようになります。

今は段階的に運用を変更している最中で、手始めに那覇ACCが廃止されて神戸ACCとなっているのです。

さあ、次は洋上のエンルートについて見てみましょう。

洋上の空域は洋上管制区になります。

洋上管制が行われるエリアの範囲

洋上管制区を担当しているのは福岡にある航空交通管理センター(ATMC: Air Traffic Management Center)です。

ATMCの所在地は先ほどの福岡ACCと同じ敷地内になります。

さてこの洋上管制区ですが、陸域との大きな違いはレーダーによる監視がなされていない点です

地上に設置されているレーダーの電波が届く範囲はせいぜい250NM(東京~大阪ぐらい)であり、太平洋上の飛行機をレーダーで捕捉することはできないのです。

そこでどうしているかと言うと、洋上では飛行機が特定のウェイポイントに到達したら、到達の報告や次のウェイポイントの到達予定時刻などを管制に伝えるのです

これを位置通報と言います。

これにより管制側は飛行機がどこにいるのか、直接的ではないですが知ることができます。

この時に使うコールサインが「東京レディオ」で、レディオは付けずに”Tokyo”と言ったりします。

余談ですが、航空無線は通常VHFと呼ばれる周波数帯を使いますが、この東京レディオはVHFよりも遠くに電波が届くHF帯を使います。

以前はHF無線機を使って、すべて音声で位置通報を行っていましたが、最近では携帯電話のメール機能のようにテキストを送信する機能を使って位置通報することが一般的です。

しかもパイロットが手打ちして送信するのでなく、位置通報点に来たら自動的にテキストを管制に送ってくれる機能があるのです。

この機能はADS-Cと呼ばれています。

航空路管制のイメージ

目的地空港周辺の監視は「アプローチ」で、進入管制区を担当する

続いてはエンルートを離れて到着のフェーズに移ります。

このフェーズは概ねSTAR(標準計器到着方式)に該当しますが、ここでコンタクトするのが「アプローチ」と呼ばれ、入域管制席とも表現されます。

アプローチの管制席がどこにあるかと言うと、到着空港の進入管制区を担当している空港内のレーダー管制室です

「おや?それってデパーチャーと同じじゃないの?」

と思った方は大正解です。

進入管制区はそのエリアを出発する飛行機も到着する飛行機も、どちらも管制の対象になるのです

同じレーダー室内ですが、出発機=デパーチャー、到着機=アプローチという具合に担当する管制席を分けているというわけです。

デパーチャーと同じわけですから、アプローチの管制もレーダーを使用したターミナルレーダー管制業務です。

下図は福岡進入管制区の様子を表しています。

福岡進入管制区の範囲

福岡空港に到着するSTARはKIRIN、IKE、OSTEPといったウェイポイントから始まるのですが、それぞれ進入管制区の境界あたりにあることが分かります。

一方で緑色のYOKAT、YAMGA、OMUTAなどは、福岡空港から出発するSIDの終点になっています。

進入管制区は出発機、到着機のどちらも監視するエリアであることがよく分かりますね。

コールサインは基本的にアプローチが使われますが、まれに「レーダー」というコールサインも使われます。

細かいことは省いて実用的な話だけすると、基本的に到着機の管制はアプローチなのですが、羽田や成田など混雑する空港では時間帯によってアプローチだけでは到着機を捌ききれなくなってしまいます。

そのため管制官の負担軽減のために、混雑時間帯は進入管制区内でさらにエリアを分け、レーダー→アプローチの順に管制席を設ける運用をしています。

エンルートから進入管制区(到着)へのイメージ

着陸許可を出すのは「タワー」で、航空交通管制圏を担当する

さあ、いよいよ着陸です。

そしてここまで来ればパターンも想像できるのではないでしょうか?

進入管制区を抜けて着陸に向かう飛行機は、今度は着陸する空港の航空交通管制圏に入ります。

航空交通管制圏を管制するのが「タワー」であることは、離陸の際に解説しました。

離陸許可を出すのがタワーであるのと同様に、アプローチからハンドオフされて、最後に着陸許可を出すのもタワーなのです。

飛行フェーズとしては進入(アプローチ)のフェーズにあたるので紛らわしいですが、この段階で交信しているのは”アプローチ”ではなく”タワー”です

航空交通管制圏は空港から5NM圏内ですが、実際にアプローチからタワーにハンドオフされるのはもう少し離れた位置からであるのが一般的です。

空港によって事情は異なりますが、大体空港から十数NM(20kmぐらい)離れた位置でハンドオフされるイメージです。

進入管制区から着陸のイメージ

ハンドオフされた飛行機は、最終的にタワーからの「Cleared to Land」の着陸許可により目的地空港に着陸することができるのです。

終わりに

いかがでしたか?

少し難しい部分もあったかもしれませんが、航空管制を理解する上でいかに空域の種類や飛行フェーズの理解が大切かが分かっていただけたのではと思います。

言い換えれば、空域の種類や飛行フェーズを理解してさえいれば、航空管制を理解することはそれほど難しくないということでもあります。

今回解説した一連の航空管制の流れは、実は基本的なモデルケースにすぎません。

実際の飛行では、このモデルケースとは異なる場合が数多くあるのです。

例えば、空港によっては進入管制区がない場合があったり、タワーではなく「レディオ」「リモート」と呼ばれる管制席と交信する場合もあります。

ですがこのような場合であっても、空域の種類や飛行フェーズに結び付けて理解さえすれば、今回使ったモデルケースを少し応用するだけで十分理解できます。

航空管制の応用編はまた別の記事で紹介しますので、ぜひご覧になってみてください。

以上!

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