飛行機

航空管制入門!③離陸から着陸まで飛行経路の基本を押さえよう!

こんにちは。ころすけです。

航空管制入門!①と②では、航空管制の目的と空域の種類について解説しました。(過去記事のリンクは最後にあります。)

航空管制を理解するためには、

1.空域の種類
2.飛行経路の基本
3.管制席の種類(管制官の役割分担)

の3要素の関係を紐づける必要があります。

今回は飛行経路の基本について解説します。

離陸から着陸まで飛行経路の基本を押さえよう

飛行機の運航を理解するために重要なことは、飛行フェーズを理解することです。

フェーズとは物事の一連の流れを場面場面で区切った各段階のことを指します。

ここでは飛行経路におけるフェーズを考えてみましょう。

1つポイントになるのは、飛行機では平面的な動きだけでなく、地上から高度1万m付近まで高さ方向の動きも考える必要がある点です。

つまり、飛行経路を考える際も前後左右の平面方向の動きのフェーズと、上下方向の動きのフェーズがあるということです。

飛行機の飛び方にはVFR(有視界飛行方式)とIFR(計器飛行方式)の2つがあることを航空管制入門!①で解説しました。

VFRでは他機とのセパレーションを管制機関ではなくパイロットの目視で確保しながら飛行するため、平面的な飛行経路も高度変更による上下方向の動きも、パイロット自身の判断で自由に選択することができます。

従ってVFRでは飛行経路や飛行フェーズの様子はフライト毎にまちまちですが、IFRはそうではありません。

IFRでは飛行フェーズごとに予め決められた飛行経路が設定されていて、その経路を飛行することを前提に管制機関により他機とのセパレーションが監視されるのです。

ではここからは、具体的にIFRにおける飛行フェーズを見ていきましょう。

まず上下方向の動きのフェーズは、離陸から着陸まで以下のように分けることができます。

上下方向の動きのフェーズの流れ

一方で平面的な動きのフェーズは以下のようになります。

平面的な動きのフェーズの流れ

上下方向の飛行フェーズと平面的な飛行フェーズを合わせると下図のようになります。

飛行フェーズのイメージ

このように飛行フェーズの全体像をイメージした上で、次は飛行フェーズを4つに分けて詳細を見ていきましょう。

飛行フェーズは4つに分けて理解する

出発経路はSIDと呼ばれる上昇フェーズ

滑走路を離陸したら、飛行機はまず初めに出発経路を飛行することになります。

この出発経路は標準計器出発方式(SID: Standard Instrument Departure)と呼ばれています。

出発経路と上昇フェーズの対応イメージ

SIDは東西南北の様々な方面へ向けて出発できるように、各空港ごとに複数設定されています。

下の図は羽田空港から離陸して西日本方面へ向かう時のSIDの一例であり、RITLA DEPARTUREと名前が付いています。

RITLA DEPARTUREの例

SIDの終点がRITLAと呼ばれるポイントになっているのが分かるかと思いますが、このようにSIDの終点のポイント名から名前が付くことがほとんどです。

RITLAまでの途中の経路を見ると、ほかにもPLUTOやKAMATと行った経路上のポイントがあることが分かります。

これら飛行経路を構成するポイントのことをWaypoint(ウェイポイント)と言います。

ちなみにKAMATは”カマット”と読むようですが、このウェイポイントの由来は東京都の地名である”蒲田”から来ているようです。

このようにウェイポイントは結構ユニークな名前のものがあって、その地域を連想させるようなものが他にもたくさんあるのです。

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SIDは離陸直後からの飛行経路のため、上下方向の動きでは基本的に上昇のフェーズに当たります。

RITLAはSIDの終点ですが、ここから先は次の飛行経路フェーズである航空路に接続しているというわけです。

ただし、一部例外があります。

下の例は成田空港のTETRA DEPARTUREからさらに先の経路を表していますが、TETRAから3方向に分かれて、それぞれKIMIN、AGRIS、ENPARの3地点が終点になっています。

トランジション経路の例

この場合はKIMIN、AGRIS、ENPARでそれぞれ航空路に接続することになります。

このようにSIDからさらに分岐が必要な場合など、SIDと航空路を結ぶ経路のことを転移経路(トランジション: Transition)と言います。

トランジションはない場合も多いので、トランジションまで含めてSIDであると考えると理解がしやすくなると思います。

航空路(エンルート)の大部分は巡航飛行のフェーズ

SIDの終点から始まるのが航空路であり、通常エンルートと呼ばれています。

エンルートと巡航フェーズの対応イメージ

エンルートは飛行経路全体の大半を占める部分であり、よく高速道路の本線に例えられます。

エンルートが高速道路なら、SIDは高速道路に至るまでの下道部分で、SIDの終点はインターチェンジというイメージです。

下の図は羽田空港付近のエンルートの様子を示しています。

羽田空港付近のエンルートの様子

先ほどのSIDの終点であったRITLAがあることが分かります。

RITLAはその後、LEBOS→VENDIとウェイポイントを繋いでいくのですが、この経路はY20という名前が付いており、さらに西に伸びていることが分かります。

このY20や、そのすぐ南にあるY28といった経路がエンルートなのです。

下の図はY20をさらに先に進んだ様子を示しています。

Y20の飛行経路

Y20は長崎県の壱岐島まで伸びています(終点のウェイポイントはIKE)。

IKEより西にさらに進むと、韓国の済州島方面に向かうエンルートになるのですが、IKE以降はA595という名称になります。

このようにルートにアルファベット+数字で名前が付いている様子からも、エンルートを高速道路に例えるとイメージしやすいのではと思います。

エンルートは上下方向のフェーズでは、ほとんどの部分を巡航飛行(水平飛行)が占めることになります。

正確にはエンルート=水平飛行というわけではなく、実際にはエンルートに入ってもまだ上昇を続ける場合が多いですし、エンルートの途中から降下も開始します。

また、巡航する飛行高度によってもどこで水平飛行に移るかは変わります。

けれどもイメージを持ちやすくする意味では、エンルート=巡航フェーズと考えると理解がしやすくなります。

到着経路はSTARと呼ばれる降下フェーズ

さあ、ここからはエンルートを離れて、目的地空港へ向けて飛行を続けましょう。

今回は羽田空港からY20を通って、福岡空港に向かう場合を想定してみましょう。

先ほどの図でKIRINという名前のウェイポイントを表示しておきました。

東側から福岡空港に向かう場合はこのKIRINから次の経路に移るのです。

すなわち、KIRINで高速道路を降りるイメージというわけです。

エンルートを離れて次に飛行する経路が到着経路であり、標準計器到着方式(STAR: Standard Instrument Arrival)と呼ばれています。

到着経路と降下フェーズの対応イメージ

下の図はKIRINから始まる福岡空港のSTARの例を示しています。MALTS EAST ARRIVALの例

このSTARはMALTSというウェイポイントまで続いており、MALTS EAST ARRIVALと名付けられています。

こちらもSIDと同じように、STARの起点や終点となるウェイポイント名にちなんだネーミングになっているのが一般的です。

そしてMALTSから先はと言うと・・・?

もうパターンは同じですね。

次の進入の経路がMALTSから始まるというわけです。

STARはエンルートから離れた飛行機が、空港周辺に集まってくるにつれて降下しながら交通整理されるフェーズになります。

進入は滑走路の延長線上に合わせて最終降下するフェーズ

さあ、いよいよここまでやってきました。

最後は進入と呼ばれるフェーズになるのですが、これは通常アプローチ(Approach)と呼ばれます。

進入経路と最終降下フェーズの対応イメージ

ILSという言葉を聞いたことがある人は結構いるのではないでしょうか?

ILS=計器着陸システムは、空港に設置された着陸を支援する装置そのものを指す語ですが、ILSアプローチと言えばILSを使って滑走路に着陸する進入方式名、すなわち進入フェーズの具体的な名称の一例になります。

下の図が福岡空港でのILSアプローチの例です。

福岡空港ILSアプローチの例

見ての通り、先ほどのMALTSからアプローチが始まり、終点は福岡空港の滑走路=着陸までの経路になっています。

アプローチはSTARを通って交通整理されながら降下してきた飛行機が、最終降下をして滑走路に着陸するまでのフェーズなのです。

これでようやく目的地まで到達することができました!

終わりに

いかがでしたか?

どのような飛行機のフライトであれ、出発地から目的地までの飛行フェーズは今回解説したように4つのフェーズにまとめることができるのです。

例えば、羽田からヨーロッパのパリに向かうような長距離フライトであっても、エンルートのフェーズが大陸を横断するほど長いだけで、SID→エンルート→STAR→APPROACHの流れは変わりません。

どうですか?簡単でしょう。

実はこの飛行フェーズについて理解すると、管制官とパイロットの無線交信も理解がしやすくなります。

パイロットは今回紹介した飛行フェーズによって、交信する管制官を変えながら飛行するからです。

管制官とパイロットの無線交信については別の記事で紹介したいと思います。

以上!

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