飛行機

航空の世界に独自の国境があるって知ってますか?FIR(飛行情報区)について解説!

こんにちは。ころすけです。

突然ですが、日本の国境はどこでしょうか?

僕もうろ覚えなんですが、確か海岸線から12海里の距離までのうんちゃらかんちゃらだったと思います。

これはいわゆる領海や領土の話であって、その上空が領空とされていたはずです。

すなわち、それより外は日本ではないということですね。

ところで、航空の世界における国境がどうなっているかご存知でしょうか?

何となく感覚的に、「領空と同じなんじゃないの?」と思ってしまいがちですが、そうではないんです。

航空の世界には航空の世界だけの国境があるのです。

解説します。

航空業界にある国境!Flight Information Region: FIRとは?

航空業界における各国の領土や領空のイメージに該当するものはFlight Information Region(飛行情報区)と呼ばれ、通常FIRと略されます。

正確に言えば、FIRは領土というよりも航空運用において各国の担当範囲を定めたエリアと言うことができます。

世界の航空ルールを束ねている国際機関をICAO(International Civil Aviation Organization)と言いますが、ICAOは加盟国に対して世界の空の内、各国がその運用に責任を持つべきエリアを割り振っているのです

どういうことかと言うと、一般的に飛行機(航空機)は飛行している間ずっと、どこかしらの航空交通機関から援助を受けて飛んでいます。

分かりやすい例が航空交通管制です。

航空交通管制は例えば太平洋のど真ん中を飛んでいても行われるものなのですが、領海や領空ではどこの国にも属さないエリアができてしまいます。

そこで航空運用のための各国の分担空域を別に定めて、世界中の空で隙間なく飛行機が援助を受けられるようにしているのです。

日本の担当空域は福岡FIRと呼ばれる

それでは次に日本が担当しているFIRを見てみましょう。

日本が担当するFIRは福岡FIRと呼ばれています。

何で福岡?と疑問に思うかもしれませんが、実は日本の空域を全体的に監視している航空交通管理センター(ATMC)が福岡にあるからなのです。

FIRの名前には、基本的にその空域を監視する機関が設置されている地域名が付いています。

下の図が福岡FIRの範囲(水色部分)を示した図です。

福岡FIRの範囲出典:国土交通省ホームページ

お隣のFIRを見ると、仁川FIRや台北FIR、マニラFIRなどと接していることが分かります。

また、日本の東側は太平洋ですが、太平洋の一部の公海上空も福岡FIRに含まれていることが分かります

福岡FIRより東側の太平洋はアンカレッジFIR、オークランドFIRとなっており、太平洋は日本とアメリカの2国で概ね役割分担しているというわけです。

日本のFIRは域内でさらに空域が細分化されており、札幌、東京、福岡、神戸の各航空交通管制部が管轄するエリアと、洋上の空域に分かれます。

洋上空域の管轄は先ほど紹介した、福岡にある航空交通管理センターが行っています。

日本は海に面した国であるため、洋上を含めて広い範囲が担当になっているのですね。

飛行機への援助は、その国に離着陸する飛行機だけでなく、上空を通過するだけの飛行機に対しても行われます。

東南アジアや東アジアと北米を結ぶ便は必ず福岡FIRを通過することになるため、世界の航空交通流の中でも重要な役割を担っていると言えますね。

FIRにおいて分担される役割とは?

では各国に割り振られたFIRにおいて、各国が責任をもって実行しなければならない役割とは具体的に何なのでしょうか?

専門用語で言うと、この役割における業務のことを航空交通業務(ATS: Air Traffic Service)と言います。

航空交通業務はさらに3つの業務に分けられるのですが、以下のとおりです。

航空交通管制業務

一般に航空管制と聞いてイメージされる業務が該当します。

つまり、飛行機の飛行経路や離着陸などに対して指示や許可を与えるのが航空管制です。

航空管制の目的は、第一に航空機同士が万が一にも接近して衝突してしまわないようにすることであり、それと同時に航空交通の流れを円滑にすることです。

航空管制は無線を介して行われますが、FIRの境に来ると次のFIRを担当している国の管制機関と通信するように無線周波数を切り替えるのです。

航空管制はFIRの中でもさらに細分化されていて、地域ごとに担当するエリアが分けられています。

例えば「東京コントロール」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、これは日本が担当するFIRのうち、北海道を除く東日本を担当する東京航空交通管制部の無線呼び出し符号(コールサイン)なのです。

飛行情報業務

2つ目が飛行情報業務です。

飛行機は飛行するにあたって様々な情報が必要になりますが、一番わかりやすいものは気象情報になります。

空港には気象庁からの出先機関が設けられたりしていて、航空運用に特化した気象情報を提供しています。

専門的な用語で説明は省略しますが、例えばTAFやMETARと呼ばれる気象情報などがそれに該当します。

また、航法援助施設や空港の運用状況などの情報も必要になってきます。

飛行機は地上に設置された電波を発する無線標識を利用して自分の位置を割り出すのですが、この施設がどの周波数で運用されているのかや、仮に運用を停止している場合などはその情報が必要です。

また、ある空港が目的地であったとして、その空港の滑走路が一時閉鎖されていたとしたら、その情報を知る仕組みが必要になります。

このような情報提供の仕組みを整え、実際に情報提供する業務が飛行情報業務なのです。

警急業務

3つ目の業務は警急業務です。

これは簡単に言えば捜索救難を実施する業務のことです。

飛行機は管制機関と通信するための無線機を搭載することが義務付けられており、また万が一遭難してしまった場合に、捜索救難用の電波を発する機器を搭載しています。

このような緊急、遭難に関する情報を自国のFIR内で入手した場合、担当国は直ちに捜索救難体制を立ち上げ、最善を尽くす必要があるのです。

終わりに

いかがでしたか?

FIRなんて言葉は航空業界に携わっている人でなければ、まず聞くことのない言葉だと思います。

飛行機の世界自体、あまり世間一般で知られていない世界のような気もしますが、この記事を読んで航空の世界に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいですね。

今後も飛行機に関する雑学を記事にしていきます!

 

以上!

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