こんにちは。ころすけです。
「飛行機の墜落」
できればと言うか、絶対に聞きたくもなければ、遭遇なんてもってのほかというワードですね。
ですが残念ながら、飛行機の事故を完全にゼロにすることは限りなく不可能に近く、墜落する可能性もゼロとは言えないのが現実です。
「ブラックボックス」という言葉を、ほとんどの方が聞いたことがあるかと思います。
飛行機には万が一墜落した場合に原因分析ができるよう、ブラックボックスと呼ばれる記録装置が搭載されているのです。
今回はブラックボックスと、飛行機が墜落した際に働くシステムについて解説したいと思います。
ブラックボックスとは?
Flight Data RecorderとCockpit Voice Recorderで構成されます
一般にブラックボックスと呼ばれる装置ですが、これは正確にはフライトデータレコーダー:Flight Data Recorder(FDR)とコックピットボイスレコーダー:Cockpit Voice Recorder(CVR)の2つの記録装置の通称です。
機種によって異なりますが、FDRとCVRがそれぞれ別の装置として搭載されている機種もあれば、2つが一体型となった装置を搭載している機種もあります。
航空運送事業(エアラインまたは貨物機)の飛行機やある程度の重量がある飛行機は、ブラックボックスの装備義務が航空法で定められているのです。
“ブラック”と名称にありますが、実際には赤色に近いオレンジ色をした金属製の箱で、これは残骸の中からでも見つけやすくするためです。
ブラックボックスは数千Gもの衝撃に耐えられる非常に頑丈な造りで、墜落事故後でも中の記録が取り出せるようにできています。
FDRとCVRは、以下のようにそれぞれ異なる記録機能を持っています。
Flight Data Recorder (FDR)は飛行機の挙動を記録する
まず始めにFDRですが、こちらはFlight Dataと言う通り、飛行機の姿勢や挙動について記録する装置になります。
最小限記録すべき情報は航空法で決められていて、以下の5つの区分に分けられた最大78項目の情報を記録している必要があります。
航跡・飛行速度に関する情報
・気圧高度 ・対気速度 ・機首方位 ・前後左右の加速度 など
機体姿勢に関する情報
・ピッチ姿勢 ・ロール姿勢 ・すべり角 ・迎角
エンジンの作動状況に関する情報
・エンジン出力 ・スラストコマンド値 ・エンジン回転数や燃料流量値 など
機体形態に関する情報
・水平尾翼(ピッチトリム)位置 ・フラップ/スラット位置 など
運航状況に関する情報
・警報メッセージ情報 ・パイロットの操舵入力状況 ・ナビゲーション装置の指示値 など
これらは飛行機が、いつ、どのような姿勢で、どのような挙動をしていたのかが分かるパラメーターです。
FDRのデータを解析することで、墜落事故時に飛行機がどのような動きをしていたのか、原因追究のための解析を行うことができるのです。
Cockpit Voice Recorder (CVR)は機内の音声を記録する
CVRは名称のごとく、コックピット内の音声を記録する装置です。
具体的にはコックピット内で行われた、以下の会話や音声が記録されている必要があります。
・無線装置により発信または受信された会話
・コックピット内の背景音
・コックピット内のインターホンを通じて交わされた乗務員同士の会話
・無線航法装置の識別シグナル音
・管制機関とのテキスト通信の内容
これらコックピット内の会話や音声を解析することで、事故に至るまでにコックピットで何が起こっていたのかや、パイロットが何を考え行動したのかが分かります。
CVRも先ほどのFDRと併せて、事故の全貌を解き明かすために必要な情報なのです。
CVRに記録される音声データは、事故時点から遡って2時間以上であることが求められています。
飛行機が墜落するとどうなる?
遭難時にはEmergency Locator TransmitterやUnderwater Locator Beaconが作動する
飛行機が墜落事故を起こした場合には、原因究明のためにFDRとCVRをまず回収することが求められます。
それ以前の話をすれば、まずは「飛行機が墜落した」という確かな情報を一早く入手することが重要です。
確かな情報がなければ捜索の初動が遅れますし、もしも生存者がいる場合には時間との勝負になるからです。
これらを考慮すると、墜落事故の捜索にあたっては、「墜落事故を起こしたという情報」と「墜落した場所の情報」が重要であることが分かります。
飛行機にはこれらの情報を発信する装置としてELT(Emergency Locator Transmitter) やULB(Underwater Locator Beacon) と呼ばれる装置が備わっています。
Emergency Locator Transmitter(ELT)
ELTは飛行機が遭難や墜落した際に、救難信号を発信する装置です。
ELTは通常、機体胴体の最後部に取り付けられています。
飛行機の胴体上部には、様々な無線機器のアンテナが出ていますが、最後部の垂直尾翼の付け根あたりにあるのがELTアンテナです。
ELTは機体が強い衝撃を受けると自動的に遭難電波を発するようにできていて、これにより周囲に遭難や着水、墜落の事実を知らせるのです。
発信する電波は、周囲の航空機に向けて発する2種類の電波(121.5MHzと243MHz)と、人工衛星に向けて発信する電波(406MHz)の計3種類です。
このうち、人工衛星に向けて発信する電波には位置情報も含まれていて、事故が発生した場所を特定する手がかりとなるのです。
ELTはコックピットから手動で作動させることもできるほか、機外に持ち出して使用できるポータブルタイプも装備されています。
ELTがきちんと作動すれば、墜落した飛行機の場所を容易に特定できそうですが、実際にはELTシグナルを受信できずに行方不明となるケースもあるようです。
例として2014年3月に消息を絶ったマレーシア航空370便は、ほぼ墜落が確定したと思われていますが、ELTシグナルを受信できずに墜落場所が未だに特定されていません。
これは僕の予想も入りますが、ELTはブラックボックスのように耐衝撃性が高いわけではないので、激しい衝突でアンテナなどが損傷すると有効に機能しないことが考えられます。
また、内臓電池で作動する時間が2、3日と短いことや、水中でも作動し続けるようなシステムになっていないことも挙げられるかと思います。
しかしながら、万が一の事態に備えて、飛行機にはELTが搭載されているのです。
Underwater Locator Beacon(ULB)
ULBは海中で作動する装置で、海中に沈んだブラックボックスを発見するための装置です。
下の画像で、FDRの右端に取り付けられた銀色の筒がULBです。
ULBは海水に浸かると電源が入るようになっていて、作動すると周囲に音声パルスを発信するようになります。
この音声を捜索者がキャッチすることで、海中に沈んでしまったブラックボックスを発見できるというわけです。
冒頭でも述べた通り、墜落事故の原因を究明するためには、ブラックボックスを回収して飛行記録を解析することが必要不可欠です。
機体が水中でバラバラになってしまった場合でも、ブラックボックスだけは回収が可能なようにULBが取り付けられているのです。
ULBは内蔵された電池で30~90日程度と、比較的長期にわたって作動し続けることができます。
終わりに
いかがでしたか?
飛行機の墜落事故は想像もしたくない事かと思いますが、万が一の事態に備えて、飛行機には手掛かりを残す仕組みが備わっているのです。
とりわけ旅客機の墜落事故は、世界中のどこの機体であっても、発生すればニュースで報じられることかと思います。
その際にはFDRやCVR、ELTやULBといったワードに注目して、捜索状況を見守ってみてはいかがでしょうか?
以上!