飛行機

羽田空港の滑走路運用について解説!~離着陸にはどの滑走路を使用する?~

こんにちは。ころすけです。

日本で離着陸便数が一番多い空港はどこでしょうか?

答えは「羽田空港」です。

羽田空港の年間の発着回数は2019年時点で40万回超えと、国内の空港で随一の数を誇っています。

これだけの飛行機を捌くために、羽田空港には4本の滑走路があるのですが、滑走路の本数でも国内ナンバー1の空港です。

そんな羽田空港では、状況によって使用する滑走路の向きが異なったり、使用されないものがあったりするのです。

空港で飛行機の写真を撮る場合や、見送りや出迎えの飛行機を待つ場合など、どの飛行機がどの滑走路を使用するか知りたいと思うことはないでしょうか。

羽田空港の滑走路運用について詳しく解説します。

羽田空港には4本の滑走路があります。

まずは羽田空港の滑走路の全体像について理解しておきましょう。

羽田空港には4本の滑走路があります。

国内では4本はおろか、3本以上の滑走路を持つ空港でさえ、羽田空港以外にありません。

羽田空港の4本の滑走路は、A滑走路やB滑走路といった名称で呼ばれています。

羽田空港の滑走路の全体像
A滑走路 磁方位 160度-340度(Runway16R or Runway34L):全長 3000m
B滑走路 磁方位  40度-220度(Runway04 or Runway22)     : 全長 2500m
C滑走路 磁方位 160度-340度(Runway16L or Runway34R):全長 3360m
D滑走路 磁方位  50度-230度(Runway05 or Runway23)    :全長 2500m

 

ここで磁方位というのは磁石式コンパスで測った場合に指す方角のことで、例えばA滑走路とC滑走路は北北西から南南東に伸びる向きにあります。

図を見ても分かるように、羽田空港ではA滑走路とC滑走路、B滑走路とD滑走路がほぼ平行でペアになっています。

滑走路を平行に配置することで、同じ向きに離着陸する飛行機を分散して処理することができるのです。

さらに異なるペアが交差するように配置されているのですが、これは風向きが変化した場合でも柔軟に対応するための配置です。

飛行機の離着陸は向かい風に向かって行いますから、このような配置にすることで、どの方角から風が吹いても真正面に近い風向きで運航することが可能なのです。

ちなみに、例えばD滑走路を磁方位50度の向きに離着陸する場合は「Runway05(ランウェイ ゼロファイブ)を使用する。」と表現します。

同じようにA滑走路を磁方位160度で使用する場合は「Runway16R(ランウェイ ワンシックス ライト)」と表現します。

磁方位160度の滑走路はA滑走路とC滑走路の2つありますから、区別ができるようにL(レフト)やR(ライト)を後ろに付けるのです。

滑走路の使い分けについて解説!ポイントは風向きと時間です。

このように複数の滑走路により柔軟な運用ができる羽田空港ですが、見ている側からすると、どの場合にどの滑走路がどの向きで使用されるのか戸惑ってしまいます。

ここからは、状況別に離着陸機がどの滑走路を使用するのか、詳しく解説していきます。

滑走路運用を考える上でポイントになるのは以下の3点です。

① 風向き(北風なのか南風なのか)

② 時間

③ 目的地・出発地の方面

まず最重要ポイントとして、①の風向きはどの空港であってもポイントになる要素です。

たとえ滑走路が1本であっても、風向きによって離着陸する方向が180度異なるからです。

一方で②の時間については、大都市に位置する羽田空港ならではのポイントと言えるかもしれません。

羽田空港は東京都心に位置していて市街地も近いため、周辺社会への影響も考慮して、一部の運用では時間(時刻)も滑走路運用に関わってくるのです。

最後の③は、これまた羽田空港特有のポイントと言えるもので、行き先や出発地の空港が使用滑走路と密接に関わっています。

北風時の滑走路運用

まず始めは風向きが北寄りの場合の滑走路運用です。

風向きが北寄りの場合の滑走路運用

北風時の離陸では、Runway34R (C滑走路) とRunway05 (D滑走路) が使用されます。
また、着陸にはRunway34L (A滑走路) とRunway34R (C滑走路) が使用されます。

つまり、北風時にB滑走路は使用されません。

さらに離陸と着陸でそれぞれ2パターンある滑走路は、目的地や出発地の方面が北方か南方かによって、使い分けがされています。

目的地・出発地の各方面と使用される滑走路をまとめたものが以下の表です。

離陸時に使用される滑走路※
北海道・東北・ヨーロッパ・北米・ハワイ Runway34R
北陸(富山・能登・小松など)・山陰・中部
韓国・中国北部(北京・大連・瀋陽など)
Runway34R
(Runway05)
福岡・広島・長崎 Runway34R
Runway05
関西・中国四国・九州
沖縄・南西諸島
中国中南部(上海以南)・インド・東南アジア
グアム・サイパン・オセアニア
Runway05

※夜間(23:00~6:00はヨーロッパ・北米便など長い滑走路が必要な長距離便を除き、全ての便でRunway05が優先)

着陸時に使用される滑走路※
北海道・東北・ヨーロッパ・北米・ハワイ
北陸(富山・能登)
Runway34R
(Runway34L)
北陸(小松)・山陰・中部
関西・中国四国・九州
沖縄・南西諸島
韓国・中国・インド・東南アジア
グアム・サイパン・オセアニア
Runway34L
(Runway34R)

※夜間(23:00~6:00は全ての便でRunway34Rが優先)

表中の括弧表示は、交通量などを勘案して稀に使用されることがあるという意味ですが、基本的には括弧がない方の滑走路が使われます。

少々ややこしいのは、離陸の時は北方方面に分類されていた中部・小松・山陰・韓国・中国北部が、着陸では南方方面に分類される点です。

また夜間(23:00~6:00)は近隣地域への騒音に特に配慮が必要なため、離陸・着陸とも目的地や出発地に関わらず、陸地から最も遠い滑走路が使用される点もポイントです。

南風時の滑走路運用

続いては風向きが南寄りの場合の滑走路運用です。

風向きが南寄りの場合の滑走路運用南風時の離陸では、Runway16R (A滑走路) とRunway16L (C滑走路) が使用されます。
また、着陸にはRunway22 (B滑走路) とRunway23 (D滑走路) が使用されます。

南風運用では北風運用と違い、4本全ての滑走路が使用されます。

さらに北風時と同様に、目的地・出発地の各方面と使用される滑走路をまとめたものが以下の表です。

離陸時に使用される滑走路※
北海道・東北・ヨーロッパ・北米・ハワイ Runway16L
北陸(富山・能登・小松など)・山陰・中部
韓国・中国北部(北京・大連・瀋陽など)
Runway16L
(Runway16R)
福岡・広島・長崎 Runway16L
Runway16R
関西・中国四国・九州
沖縄・南西諸島
中国中南部(上海以南)・インド・東南アジア
グアム・サイパン・オセアニア
Runway16R

※夜間(23:00~6:00はヨーロッパ・北米便など長い滑走路が必要な長距離便を除き、全ての便でRunway16Lが優先)

着陸時に使用される滑走路※
北海道・東北・ヨーロッパ・北米・ハワイ
北陸(富山・能登)
Runway23
(Runway22)
北陸(小松)・山陰・中部
関西・中国四国・九州
沖縄・南西諸島
韓国・中国・インド・東南アジア
グアム・サイパン・オセアニア
Runway22
(Runway23)

※夜間(23:00~6:00は全ての便でRunway23が優先)

出発地・目的地の分類は北風の時と変わりませんが、使用する滑走路が南風時のものにそれぞれ変わっています。

騒音に配慮が必要な夜間では、陸地から遠いRunway16L(離陸時)とRunway23(着陸時)が優先的に使用される点も、北風時と考え方は同じです。

南風時の滑走路運用(15:00~19:00限定)

南風時の運用では、時間帯限定で別パターンの滑走路運用が行われる場合があります。

それが下図のような、離陸にRunway16R (A滑走路) とRunway22 (B滑走路)を、着陸にRunway16R (A滑走路) とRunway16L (C滑走路)を使用する運用です。

時間帯限定の滑走路運用

この運用方法は、2020年3月29日から実施されるようになった新しい運用で、南風時の離発着回数を増やすために導入されました。

先に解説した南風運用では、特にRunway16Lからの離陸機とRunway23への着陸機の経路が被ってしまうため、離陸機が着陸機を待たなければならない場面がありました。

待ち時間の発生は滑走路の運用効率を下げることになりますから、離発着回数の制限に繋がります。

新しい運用では経路が被らないように、使用する滑走路と向きが大幅に変わっています。

離陸ではRunway22を、着陸ではRunway16L・16Rを使用していますが、いずれもこれまでになかった滑走路の使い方です。

ただし図からも想像できるとおり、Runway22からの離陸もRunway16L・16Rへの着陸も、ともに東京都心の市街地を通過せざるを得ないことが分かります。

なので、市街地上空を通過することによる騒音問題に配慮して、運用は15:00~19:00と時間を限定して実施されるのです。

例によって目的地・出発地の各方面と使用される滑走路をまとめると、以下の表のとおりです。

離陸時に使用される滑走路
北海道・東北・ヨーロッパ・北米・ハワイ Runway16R
北陸(富山・能登・小松など)・山陰・中部
韓国・中国北部(北京・大連・瀋陽など)
Runway16R
(Runway22)
福岡・広島・長崎 Runway16R
Runway22
関西・中国四国・九州
沖縄・南西諸島
中国中南部(上海以南)・インド・東南アジア
グアム・サイパン・オセアニア
Runway22

 

着陸時に使用される滑走路
北海道・東北・ヨーロッパ・北米・ハワイ
北陸(富山・能登)
Runway16R
(Runway16L)
北陸(小松)・山陰・中部
関西・中国四国・九州
沖縄・南西諸島
韓国・中国・インド・東南アジア
グアム・サイパン・オセアニア
Runway16L
(Runway16R)

方面別のまとめ方は通常の南風運用の時と変わりませんが、使用する滑走路と向きがまるで異なりますので、該当する時間帯に南風の時には注意が必要というわけです。

北風と南風どちらが吹くのか?

ここまで見てきたように、羽田空港で使用される滑走路を判断するには、まず北風運用なのか南風運用なのかを知る必要があります。

実際にどちら向きの風が吹いているのかは、当日の天気予報や実況天気の状況から判断するしかありませんが、事前にある程度予測することは可能です。

風向きは季節による傾向がおおよそはっきりしているからです。

季節を踏まえた風向きの傾向をまとめると以下のようになります。

北風運用・・・夏場(4月~10月)の午前中と冬場(11月~3月)

南風運用・・・夏場(4月~10月)の日中

もちろん日によって例外はありますが、全体的に見ると、北風運用となることが多いと言えます。

日本の太平洋側で南風が吹くのは、太平洋側の高気圧が強い場合で、かつ日射によって地面が温まった時が典型です。

特に春先などは、朝方は冷えて北寄りの風が吹いていたものが、日中に暖かくなって南寄りの風に変わることがよくあります。

逆に冬場は大陸側の高気圧が張り出して、いわゆる西高東低の冬型の気圧配置となる場合が多く、この場合は一日を通して北風が吹くことになります。

季節による大体の風向きを押さえておくと、飛行機の離着陸方向を想定する際に非常に役に立ちますから、興味があればぜひ参考にしてみてください。

終わりに

いかがでしたか?

若干複雑であったかもしれませんが、時間をかけて順番に整理すれば、イメージが身についてくるかと思います。

羽田空港は離発着回数を増やしたい需要がある一方で都心にも近く、航空需要と地域問題を両立させるには、やや複雑な滑走路運用とならざるを得ない事情があります。

今後の世の中の動向次第で、現在の運用からさらに変化していくことが予想されるのです。

反面、複雑であるがゆえに運用上の工夫を理解したり整理したりすることで、発見できるものが多い非常に興味深い空港でもあるのです。

羽田空港を訪れる際にはぜひ、滑走路の運用方法について注目してみてはいかがでしょうか?

 

以上!

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POSTED COMMENT

  1. 流れもの より:

    羽田空港事故の当日ではc滑走路が着陸用と離陸用と同時使用になっています。離陸機も大型旅客機も使用しているようです。記事はこの離陸と着陸の両用は書かれていますか。

    • ころすけ より:

      流れものさん

      コメントありがとうございます。
      記事の「北風時の滑走路運用」にあるとおり、北風時のC滑走路は離陸と着陸の両方で使用されます。
      これが標準的な運用方法で、当該事例の際も北風運用をしていました。

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