飛行機

飛行機の離陸操作!~離陸許可からギアアップまでの手順~

こんにちは。ころすけです。

飛行機に乗っていてスリルを感じる瞬間はあるでしょうか?

おそらく、その瞬間の1つに「離陸」を挙げる方は多いかと思います。

離陸でスリルを感じる大きな理由は、飛行機の速度や姿勢の変化が激しいことによるかと思われますが、これは一歩間違うと危険な状態に陥ることも意味しています。

そしてそのような場面での飛行機の操縦は、当然ながら手順も多く、気を付けないといけない項目がたくさんあるのです。

今回は飛行機の離陸操作について、実際のパイロットの手順を解説したいと思います。

手順① 離陸許可から離陸推力のセットまで

手順①-1 Takeoff Clearance(離陸許可)と滑走路へのLine Up

航空業界では、パイロットが行う運航や操縦に関する一連の操作や手順のことをProcedure(プロシージャ―)と言います。

飛行機が離陸する際は、まず管制官からテイクオフクリアランス(離陸許可)をもらわないといけません。

先行する離陸機や着陸機がおらず順番待ちをする必要がない場合は、誘導路をタキシング中に「Cleared for Takeoff」のクリアランスが出されます。

この許可が出れば飛行機は滑走路に進入し、離陸を開始することができるのです。

しかし大きな空港では通常、自分より先行する離陸機や着陸機に続いて離陸するケースが大半です。

この場合、先行する離陸機が離陸滑走を開始した時点や、先行する着陸機が離陸開始位置の誘導路前を通過した時点でまずは「Line Up and Wait」の指示が来ます。

先行機が完全に滑走路から離脱するまで離陸許可は出せないけれども、滑走路には進入して次の指示を待てということです。

ちなみに機種により若干異なりますが、Line Upの指示やTakeoffのクリアランスが出たタイミングで、パイロットはランディングライトストロボライトを点灯させます。

ランディングライトは前輪と翼の付け根に付いている白色のライト、ストロボライトは翼の先端や胴体の後部でピカッピカッと光っている白色の点滅のことです。

そうしてテイクオフクリアランスが出ると、いよいよ離陸操作を開始します。

ここまでの流れ↓

管制官
管制官
Japan Air 〇〇, Runway34 Line Up and Wait.
飛行機
飛行機
Runway34, Line Up and Wait, Japan Air 〇〇.

管制官
管制官
Japan Air 〇〇, Wind 310 at 5, Runway34 Cleared for Takeoff.
飛行機
飛行機
Runway34 Cleared for Takeoff, Japan Air 〇〇.
滑走路へのLine Upの図

手順①-2 Normal Takeoffでの離陸推力セット

次はいよいよ離陸操作です。

ですが、操作の説明に入る前に1つ知っておかなければならない重要なことがあります。

それは、パイロットの役割分担についてです。

最近の飛行機は全てパイロット2人で操縦されますが、2人が同時に飛行機を操作することはできませんし、それでは2人で乗務する意味もあまりありません。

なのでそれぞれ役割を分担するのですが、まず操縦桿やスロットルレバーを握り、飛行機の操縦を担当するのがPF(Pilot Flying)です。

そしてもう一方は、主に計器類の監視や管制官との無線交信を担当する役割でPM(Pilot Monitoring)と呼ばれます。

PMはかつてはPNF(Pilot Not Flying)と呼ばれていましたが、より役割を明確にするために最近ではPMと呼ぶ方が一般的です。

この役割分担は”肩書”とは関係がありません。

つまり、機長がPFになる場合もあれば副操縦士がPFになることもあります。

また、上空でご飯を食べる時など、操縦を交代する目的で一時的に入れ替わることもあります。

通常はフライト毎にどちらがPFでどちらがPMになるのか、出社(Show Up)した段階で決めることがほとんどのようです。

さて前置きが長くなったところで、本題の離陸操作に入りましょう。

ここでは、最も基本的な離陸手順となるNormal Takeoffについて説明します。

まずはざっと離陸推力セットまでの流れを並べると以下のとおりです。(機種や航空会社によって若干異なるところもあります)

① 管制からテイクオフクリアランスを受領。↓

② PFがスロットルレバーを少しだけ前に進める。この時ブレーキは解除せずに踏んだまま。↓

③ エンジン計器にてパラメーターが安定していることを確認しPMが「スタビライズ!」とコールする。↓

④ PFはTOGAボタンを押す、もしくはレバーをTOGAポジションまで進めると同時にブレーキをリリースする。↓

~機体が動き出す~

⑤ PMはエンジン計器をモニターし、エンジン推力を表す指標(N1、EPRもしくはTPR)が離陸推力まで達したことを確認したら「スラストセット!」とコールする。

こんな感じです。

まず②~③ですが、エンジンをアイドルの状態からいきなり離陸推力まで上げてしまうと、エンジンに負荷が掛かったり左右の推力のアンバランスが発生したりしてしまいます。

なので、まずはエンジン推力を少しだけ上げて、エンジンの挙動が安定していることを確認するのです。

どれぐらい少し推力を上げるのかはマニュアルで決まっていて、指標はエンジンのメーカーによって異なりますが、例えばGE(General Electric)のエンジンであればエンジンファンの回転数(N1)で40%までと言った表現がなされます。

次に④ですが、TOGAとはTake off and Go aroundの略で、離陸推力やゴーアラウンド推力を使用する時に使われる言葉です。

ボーイング機ではTOGAボタンを押すとオートスロットルが作動し(Activateすると表現します)、スロットルレバーが自動的に離陸推力位置まで進められます。

エアバス機の場合は、レバーポジションをTOGAまで進める(TOGA位置にくるとカチッとはまります)と離陸推力にセットされオートスラストがActivateします。

細かいですが、ボーイングは“オートスロットル”、エアバスは“オートスラスト”なんですね。

⑤では、エンジンの推力がきちんと離陸推力まで達したかをエンジン計器でモニターします。

エンジン計器を表示する画面を、ボーイングではEICAS、エアバスではECAMと言います。

下の画像はボーイング風のEICASイメージです。

EICASのイメージ図エンジン計器画面(EICAS)のイメージ

エンジンの推力値を示す計器はどの機種でも一番左上の表示になります。

推力の指標となるのはエンジンメーカーによって違っていて、GEならN1(ファンの回転数)、プラットアンドホイットニー(PW)であればEPR(エンジン入口と出口の圧力比)、ロールスロイス(RR)ならTPR(エンジン入口と出口の圧力比や温度を考慮に入れた指数)といった具合です。

Pilot Monitoring
Pilot Monitoring
Thrust Set!

手順② 加速初期からV1通過まで

続いて飛行機が加速し始めて、離陸決心速度であるV1に至るまでです。

V1とは、もしもその速度に到達する前にエンジンが1基故障してしまった場合、離陸中断(RTO:Reject Take Off)を判断する目安の速度です。

V1(離陸決心速度)の決め方【入門編】こんにちは。ころすけです。 みなさんはV1やVR、V2といった用語を聞いたことはあるでしょうか? これは飛行機が離陸する時に...

V1に到達するまで、PFは前方の視界に目をやりながら、PMは速度計の他にエンジン計器にも目をやりながら、異常がないことを確認して加速を続けます。

V1へ加速中、速度が80ktもしくは100kt(機種により異なる)に達すると、PMは「エイティ!」または「ワンハンドレッド!」とコールします。

これを受けてPFも速度計を確認し「チェック!」と返答するのです。

このコールはハイスピードRTOロースピードRTOの境界を認識するためと言われています。

この段階ではまだV1に達していないので、何か異常があれば離陸は中断される速度域です。

ですが、同じく離陸中断(RTO)する場合であっても、V1間際でRTOするのと十分遅いスピードでRTOするのでは、当然V1間際でRTOする方が気を使います。

減速するまでに距離も時間もかかりますし、止まれるにしても滑走路の端ぎりぎりになる可能性もあるからです。

80ktもしくは100ktより速いスピードでの離陸中断はハイスピードRTOと言って、離陸中断する場合は特に注意を要することを意識するのです。

Pilot Monitoring
Pilot Monitoring
Eighty!
Pilot Flying
Pilot Flying
Check!

そして速度がいよいよV1に到達すると、ここでもPMがV1に達したことをPFに知らせるために「ブイワン!」とコールします。

パイロットの正面にあるPFD(Primary Flight Display)の左側が速度計になりますが、V1のスピードはラベル表示されています。↓

PFDの表示イメージPrimary Flight Displayのイメージ

V1を超えると、その時点でPFはスロットルレバーに添えていた手を離します。

V1以降はRTOすることはないので、即座にエンジン推力を絞れるように備えておく必要がなくなるからです。

手順③ V1通過からギアアップまで

さあ続いてはV1を通過していよいよ機種起こし操作に移ります。

手順③-1 ローテーションから上昇姿勢への移行

さらに加速が進んで、速度計がVR(ローテーションスピード)まで到達すると、PMは「ローテート!」とコールします。

そうするとPFはゆっくりと機首上げ操作を行い、飛行機の機首(ピッチ)を上昇姿勢まで持ち上げます。

この時、どの角度まで機首を持ち上げるかはPFDに表示されたFD(Flight Director:フライトディレクター)によってガイダンスが出されています。

フライトディレクターによる機首上げガイダンス

手順③-2 ギアアップ

機首を起こすと機体は間もなく地面から離れます。

その間、機体はさらに加速をしてV2に到達するので、PMはこれもまた「ブイツー!」とコールします。(しない航空会社もあります。)

機体が上昇を始めると高度計の目盛りが上昇を始めますから、PMはそれを確認して今度は「ポジティブ!」とコールします。

機体の上昇率がプラス(Positive Rate)であることをコールするのです。

高度計の表示例

PMの「ポジティブ」のコールを受けたPFは、すかさず「ギアアップ!」とランディングギアの格納をPMに指示します。

PMはPFの指示に従い、正面のパネルの中央付近にあるランディングギアレバーをアップ位置に上げるのです。

Pilot Monitoring
Pilot Monitoring
Positive!
Pilot Flying
Pilot Flying
Gear Up!

これでギアアップまで完了です。

ここから先は定常上昇のフェーズに移っていくというわけです。

+αの手順 3種類の離陸推力セット方法

ここまでで基本的な離陸操作の手順を解説しましたが、おまけとして離陸推力のセット方法を3つ紹介しましょう。

先ほど、離陸推力をセットする際の手順をNormal Takeoffと説明しました。

実はNormal Takeoffの他にもStanding(Static) TakeoffRolling Takeoffという手法があるのです。

3つを比較すると下図のとおりですが、注目したいのはブレーキを外すタイミングです。

3種類の離陸推力セット方法のイメージ図Standing Takeoffでは滑走路にLine Upした後、エンジンの出力が離陸推力にセットされるまでブレーキを解除しません。

離陸推力セット後にようやくブレーキを解除するので、最初の加速はロケットスタートのようになります。

Standing Takeoffのメリットは必要な滑走路の長さを短くできることです。

国内では旧石垣空港で滑走路が1,500mしかなく、Standing Takeoffが行われる空港として有名でしたが、空港が新設されて今では実施されていません。

このように特に滑走路が短い空港ではStanding Takeoffを実施する必要があるのですが、通常は滅多に行われない離陸方式なのです。

一方でRolling Takeoffは、それとは逆に滑走路へのLine Upから離陸推力セットまで、一切ブレーキを掛けずに行う離陸方式になります。

メリットとしては余計な時間を掛けずに離陸できる点ですが、滑走路に余裕がない場合などは行いません。

こちらは条件が許せば頻繁に実施される離陸方式ですので、経験があるという方も多いのではないでしょうか?

このように離陸推力のセット方法は、3つの方式を状況によって使い分けているのです。

終わりに

いかがでしたか?

飛行機の離陸操作について、何となくでもイメージを思い浮かべることができたでしょうか。

飛行機に乗る機会がありましたらぜひ、離陸を楽しむ傍ら、パイロットが行っている操作や手順を思い浮かべてみてはいかがでしょうか?

 

以上!

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