こんにちは。ころすけです。
飛行機に乗る時、目的地までどのようなルートで飛んでいくのか気になりますよね?
国内であれば日本海側を飛んでいくのか、それとも太平洋側を飛んでいくのか。
海外であれば世界地図のどのあたりを飛んでいくのか。
実は飛行機が飛ぶルートは大体いつも決まっており、出発してすぐどちらの方向に向かうのかでほとんど決まっていると言っても良いぐらいです。
今回は日本で一番の離着陸回数を誇る羽田空港に焦点を当てて、飛行機の出発経路からその先の飛行ルートを解き明かしていきたいと思います。
飛行機の飛行ルートは予め大体決まっている!
飛行機の飛行経路は、大原則として飛行計画(フライトプラン)によって運航者(エアラインなど)が申請するものです。
ですが実際はいろいろな航空会社が好き勝手に飛行経路を申請したのでは管制をする側が大変です。
なので、実は予め管制機関の側から「この空港からこの空港へは大体このルートで」という指定がなされているのです。
下の図はAIC:航空情報サーキュラーと呼ばれる文書で、この文書によって各エアラインやその他の運航者に対して指定された飛行経路について周知がなされています。
例えば上の図では、日本時間の午前5:51~午後10:49までに離陸する飛行機でヨーロッパやトルコに向かう便は、
① 羽田空港 → SPOON → AGRIS or AKAGI という経路を取るか
② 羽田空港 → 関宿VOR → 新潟VORTAC という経路を取るか、
いずれかの経路で飛行計画を作成せよとなっています。
さらに①の経路を通る出発経路(SID)はと言うと、以下のROVER DEPARTUREが指定されたルートに該当します。
一方で関宿VORを通るSIDは、下図のようにSEKIYADO DEPARTUREが該当します。
つまり、羽田空港からヨーロッパやトルコに向かう便は、①の経路であればROVER DEPARTURE経由の飛行ルートで、②の経路であればSEKIYADO DEPARTURE経由の飛行ルートを計画するように予め指定されているのです。
羽田空港からの出発経路と目的地を整理してみよう!
それではここからは、羽田空港から離陸する便がどのような飛行ルートを指定されているのか、各方面別に解き明かしていきたいと思います。
①北海道、東北方面、ヨーロッパ、北米方面はROVER DEPARTURE経由
まず、北海道、東北とヨーロッパ、北米方面は全て同じ方面の出発経路で飛行計画を作成するように指定されています。
使用する出発経路はROVER DEPARTUREです。
図はROVER A DEPARTUREのもので、他にROVERに至るまでの経路が若干異なるBとCの計3種類がありますが、大きくは変わりません。
ROVER以降はそれぞれの目的地に向けて、進む経路が枝分かれしていることが分かります。
東北や北海道方面へ向かう場合は、AGRISからちょうど奥羽山脈上空を飛行するような経路をたどります。
ヨーロッパやトルコへ向かう場合は、AKAGIから新潟方面に針路を取って、日本海側からロシアの空域に入っていくのが一般的です。
また北米へ向かう便は、AGRISを通って北海道方面からカムチャッカ半島上空を抜けていく経路か、銚子上空のINUBOから太平洋に出てカムチャッカ半島より南、アリューシャン列島上空を通過する経路を通るようです。
ハワイへ行く場合は、INUBOから太平洋上の飛行経路に移っていきます。
また、同じ方面へは他にSEKIYADO DEPARTUREがありますが、こちらはROVER DEPARTUREと異なりRNAVではない経路になっています。
RNAVとは近年主流になっている比較的新しい航法のことですが、最近の飛行機の装備であればまずRNAVに対応しています。
なので、SEKIYADO DEPARTUREでも飛行計画を作ることは可能ですが、あまり使われていないと見てよいでしょう。
②北陸から西日本方面へは、北から順にBEKLA、RITLA、NINOX、LAXAS DEPARTURE経由
お次は羽田空港から西日本方面へ向かう経路。
羽田空港の西側には西日本方面へ行く航空路が何本も伸びていて、北から順番にBEKLA、RITLA、NINOX、LAXASのいずれかに接続するように経路が指定されています。
まずは一番北側のBEKLAに接続するのがBEKLA DEPARTUREです。
BEKLA DEPARTUREにも経路がやや異なる3種類がありますが、やはりBEKLAに向かうのは共通しています。
BEKLAからは国内線では北陸や山陰方面の便が、国際線では韓国線や北京などの中国北部に向かう便の飛行ルートとして指定されています。
BEKLA以降は北陸方面へはそのまま目的地空港へ、山陰より西方面へ向かう場合は福井県の若狭湾を目指して、日本海側を飛行する経路になります。
続いて北から2番目のRITLAに続くのがRITLA DEPARTUREです。
RITLA DEPARTUREにもA、B、Cの3種類があります。
RITLA DEPARTUREからは福岡、長崎、広島行きの便と、やや限定的な目的地になっています。
ですが、羽田→福岡はどの航空会社も飛ばしているような需要のある路線なので、交通容量を勘案して目的地が限定されているのかもしれませんね。
RITLAからは名古屋市の北側を通過し、山陽地方の山の上を飛行するようなイメージの経路を辿ります。
さらに続いて北から3番目のNINOXへは、もう名称がパターン化されていますがNINOX DEPARTUREですね。
NINOX DEPARTUREからは神戸や岡山、高松といった瀬戸内海に面した空港や、熊本や大分といった九州北部方面の便が指定されています。
NINOX以降は左手に富士山を間近に見る経路を飛行するので、景色を楽しみたい方は左側の席に座るのがお勧めです。
その後は瀬戸内の都市の上空を通過しながら九州へと向かう経路へと続きます。
また、中国の上海方面へ向かう便も九州北部を抜けて中国の空域に入っていくので、同じくNINOX DEPARTUREが使われます。
さあ、最後はLAXAS経由のLAXAS DEPARTUREです。
LAXAS DEPARTUREは九州南部から沖縄方面の国内線が指定されているほか、東南アジアへの国際線も使う出発経路になっています。
台湾やベトナムといった国へは、南西諸島を超えてさらに遠くへ行くイメージなので、途中までの経路は同じなんですね。
LAXASからしばらくは太平洋沿岸に沿って飛行しますが、紀伊半島あたりで陸地から徐々に遠ざかっていく経路に移っていきます。
また、マニラやシンガポール、ジャカルタといった少し東寄りの東南アジアの目的地へは、紀伊半島付近で針路をもう少し太平洋寄りの南向きに取って、日本国外へ出ていく経路が一般的です。
③グアムやシドニーなどの南方面はVAMOS DEPARTURE経由
羽田空港から南へ向かうシドニー便などではVAMOSというポイントを経由したVAMOS DEPARTUREが使用されます。
VAMOS DEPARTUREはVAMOSからUTIBOへ向かうか、OSHIMAへ向かうか分かれますが、グアムやシドニー方面へ向かうB586という航空路に乗るためにはOSHIMAからの接続になります。
OSHIMAからグアム方面へ向かうB586は下の図のように伸びています。
シドニーなどオーストラリア東岸に向かう場合は、グアムからさらに南下していくのです。
④夜間の出発便はちょっと違う!?時間限定のOPPAR DEPARTURE
さて、実はここまで紹介してきた出発経路は、午前5:51から午後10:49までの日中帯に出発する便だけが対象になっています。
羽田空港は午後10:50から午前5:50分までに出発する夜間便がありますが、この時間帯に出発する便にはまた別の経路が指定されているのです。
その夜間便が使用するのがOPPAR DEPARTUREです。
この出発経路の特徴は、東京湾内で旋回をして高度を稼ぎながら一旦南側の太平洋上に出る点にあります。
夜間ですから、住宅地への騒音に配慮してこのような経路が指定されているんですね。
出発便は一旦南方面に向かった後、ヨーロッパや東南アジアに向かう便はJYOGAから、北米やハワイへ向かう便はUTIBOからそれぞれの目的地に向けて針路を取っていきます。
終わりに
いかがでしたか?
かなりマニアックな内容になったかと思いますが、羽田空港から出発する便の飛行経路を、方面別に理解できたのではないかと思います。
整理してみると分かるとおり、方面別にかなりパターン化されていますので、特別な場合を除いて大体のイメージはすぐ掴めるのではないでしょうか?
僕もここまできちんと整理してみたのは初めてなのですが、かなり勉強になるなぁと思いましたので、いずれは関空など他の空港でも整理してみたいと思います。
以上!
~他の空港や羽田空港への着陸経路の解説はこちら~