飛行機

飛行機の制限速度!~機体構造上の制限~

こんにちは。ころすけです。

飛行機が飛ぶ速度に制限があるのをご存知でしょうか?

速度制限には大きく分けると2種類あって、①管制上の速度制限と②機体構造上の速度制限に分けられます。

①は管制上の制約で、他機も含めた交通流を整えるための制限なので、機種によらず守らなければならない速度制限です。

一方①は、機体構造上の制限ですので、機種(型式)によってその種類や制限値は若干異なります。

今回は機体構造上の制限速度について、どのようなものがあるのか紹介したいと思います。

制限速度① VMOとMMO(運用限界速度)

まず始めに紹介するのはVMOMMOという速度です。

VMO・MMOは、飛行機がいかなる場合であっても超えてはいけない最大の速度になります。

つまり、飛行機の構造上で飛行可能な最大の速度がVMO、MMOなのです。

VMOやMMOはより正確に記述するとVMOMMOのように、MOの部分は下付き文字で表現されます。

V1やV2という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

V1は離陸滑走中にエンジンが故障した場合、離陸継続か中止の判断が切り替わる速度のことで、V2は機首上げ操作後に安定上昇するための最低速度です。

このように飛行機では、運航上の制限や基準となる種々の速度をV○○というように表現するのですが、VMOもその1つというわけです。

これらの速度は通称Vスピードとも呼ばれます。

Vスピードは前方からぶつかってくる空気の圧力を基準にした速度なのですが、コックピットの速度計は正にぶつかってくる空気の圧力を速度に換算して表示しているのです。

速度が速い=前方からぶつかってくる空気の圧力が大きいことを意味しますが、これは機体に働く抗力が大きいということでもあります。

あまりに速い速度では空気の力によって機体が耐えられなくなるため、速度の限界があるのです。

機種によって値が異なりますが、VMOは大体320kt~350ktの間に設定されています。

一方でMMOのMとはマッハ数(Mach Number)のMを指し、こちらは音速基準の速度制限です。

音速基準の速度とは、飛行機が気体の粒子一粒一粒を横切る速度であり、この速度が例えば音速の80%の時にM.80という表現をします。

これが音速の100%、すなわちM.100になると機体に衝撃波が発生してしまい、大きな抵抗と衝撃が発生することになります。

そのために設けられる制限がMMOなのです。

実際にはM.100に到達する前に機体の部分部分で音速に達することや、ある程度の余裕を持たせる必要もあることから、旅客機ではM.82~M.90あたりを構造上の限界速度と定めている機種がほとんどです。

すなわちMMO=M.82~M.90というわけです。

このVMOとMMOはどちらも飛行中に守らなければならない速度なのですが、実際は飛行高度によってどちらか制限が厳しい方を守ることになります。

下の図をご覧ください。

VMOによる制限とMMOによる制限のイメージ図

大気は低高度ほど空気密度が大きいので、低高度では空気粒子一粒一粒に対する速度が遅い場合であっても、前方からぶつかってくる空気の圧力は大きくなります。

すなわち、速度を上げていくと、低高度では先にVMOに近づいてしまうのです。

一方で高度が高い場合には空気密度が小さいので、空気粒子に対する速度を上げても前方からぶつかってくる空気の圧力はそれほど大きくなりません。

この場合はVMOに対しては余裕があるのですが、逆に空気粒子に対する速度が音速に近づくため、MMOで制限されるのです。

下の図はコックピットの速度計のイメージになりますが、飛行機の速度計は前方からぶつかってくる空気の圧力基準の速度がメインで表示されています。

コックピットの速度計のイメージ図

ですが、高高度では音速基準の速度がMMOを超えないように注意する必要があるため、Mach Numberによる速度も表示されるようになっています。

図ではM.51、すなわち音速の51%の速度であることが分かるのです。

さらに速度計の目盛りの上部には、VMOやMMOの範囲が一目で分かるようになっています。

図の赤白の帯がVMOやMMOを超過してしまう範囲で、この印のことをBarber Poleと呼んでいます。

パイロットはVMOやMMOの値を暗記しておくのが基本なのですが、実際の操縦では計器に表示されるBarber Poleの範囲にさえ入らないようにすればよいのです。

※セスナ機など旅客機以外の飛行機ではVMOやMMOではなく、VNEと呼ばれる制限速度が使われますが、考え方はVMOやMMOと同じく飛行可能な最大速度を意味しています。

制限速度② VFE(フラップ使用時最大速度)

続いての制限速度はVMOと同じくVスピードの1つで、VFEと呼ばれる速度です。

VFEもより正確に記載するとVFEと表されます。

Vスピードですから、VFEも前方からぶつかってくる空気の圧力を基準とした制限速度になります。

VFEフラップを展開した場合の制限速度になるのですが、フラップとは翼の前縁や後縁に取り付けられていて、離陸時や着陸時に展開される装置のことです。

フラップの格納時と展開時の比較画像

フラップは日本語で高揚力装置と翻訳されるように、低速であっても大きな揚力が得られるようにするための装置です。

しかしこのフラップは、逆に高速飛行時に使用してしまうと構造に負荷が掛かりすぎてしまうため、使用する際には制限速度が設けられているのです。

フラップは翼からせり出してくる度合いで展開具合を調整することが可能で、例えばB737-800の場合、フラップの展開度合いは1度、2度、5度、10度、15度、20度、30度、40度の8段階から選択することが可能です。

角度が深ければ深いほど、速度を落としても十分な揚力が得られるので、低速で飛行が可能になります。

その一方で、使用可能な速度の上限もフラップの展開度合いによってそれぞれ値が異なっているのです。

例えばB737-800の場合、各フラップの展開度合いと制限速度(VFE)の関係は下表のようになっています。

Flap Position 1度 2度 5度 10度 15度 25度 30度 40度
VFE (kt) 250 250 250 210 200 190 175 162

B737の場合、離陸時に使用するフラップは1度、5度、10度、15度、25度から選択が可能です。

飛行機は離陸後、定常上昇速度(大体250kt~300kt)に向けて徐々に加速していくのですが、加速中に各フラップのVFEを超えないように注意する必要があるのです。

例えばフラップ15度で離陸した場合のVFEは200ktですから、徐々に加速して速度が200ktに達する前に次の10度、5度とフラップを格納していくのです。

反対に着陸する際は、最終的にフラップは30度か40度まで展開されます。

飛行機は着陸に向けて徐々に速度を落としていくのですが、その際もVFEを超えないよう減速に合わせてフラップは展開されるのです。

例えば、250kt以下に減速 → フラップ1~5度に展開 → 200kt以下に減速 → フラップ15度に展開、といった具合です。

制限速度③ VLOとVLE(ランディングギア展開時最大速度)

3つ目の制限速度は、これもVスピードの1つで、VLOVLE(VLO、VLE)という速度です。

これはランディングギアを操作してもよい最大速度を表しています。

VLOのOはOperationの意味で、ランディングギアの上げ下げ操作ができる最大速度になります。

一方でVLEのEはExtentionの意味で、ランディングギアを下ろしたまま飛行できる最大速度です。

ランディングギアは離陸直後や着陸間際といった、飛行速度が遅い段階で使用されることが想定されているため、必要以上に速い速度で使用可能な設計にはなっていないのです。

VLOやVLEの値は機種によってまちまちですが、通常は手順通りのタイミングでランディングギアの上げ下げを行えば、まず超過することのない速度で設計されています。

制限速度④ VA(運動速度)

続いての速度はVA(運動速度)と呼ばれるVスピードで、これは機体の舵を急激に目いっぱい切った場合でも、構造上影響がない速度とされています。

飛行機の舵は飛行速度が速いほど大きな力が発生するのですが、どのような操作をしても構造にダメージを与えない上限の速度がVAなのです。

しかし旅客機の通常の飛行では、まず目いっぱい舵を切るような操作をすることはなく、VAを意識しなければならない場面はほとんどありません。

VAは曲技飛行をするような飛行機では注意が必要な速度になりますが、旅客機でも同様に制限速度として値が定められているのです。

制限速度⑤ 機種によって設定がある特殊な制限

ここまでの制限速度はボーイング機であれエアバス機であれ、はたまたエンブラエルやボンバルディアの機種であっても、同様に設定がある制限について紹介してきました。

ここからは機種によって設定がある、少々特殊な制限速度について触れてみたいと思います。

まず1つ目が、コックピットウインドウを開け閉めする際の制限速度です。

飛行機のコックピットウインドウのうち、側方のウインドウは機種によって内部から開閉が可能な設計になっています。

この操作ができる速度について、エアバス機やエンブラエル機では速度制限が設けられています。

また2つ目が、コックピットウインドウのワイパーを作動させる際の速度制限です。

これもエアバス機やエンブラエル機に特有の制限なのですが、ワイパーを作動できる速度にも上限が設定されているのです。

ただし、飛行中にコックピットウインドウを中から開けることは通常ありませんし、ワイパーも着陸直前に十分低速になってから使用されるものです。

ですから、これらの速度制限については設定はあるものの、ほとんど気に掛けることのない制限と言えるかもしれません。

制限速度を超過するとどうなる?

ここまで紹介してきた種々の制限速度ですが、万が一超過してしまったら一体どうなるのでしょうか?

一言で言うと、制限速度を超過した場合には、必ず次の飛行までに所定の整備作業を行うことが必要になります。

飛行機には機種ごとに整備作業の基準や方法を記したメンテナンスマニュアルがあるのですが、各制限速度を超過した場合の処置方法がきちんと定められているのです。

ただし、飛行中に制限速度を超過したかどうかは、パイロットが自己申告をしなければ発生したことが分かりません

そのため、パイロットは各制限速度について暗記しているのはもちろんのこと、もしも制限速度を超過してしまった場合には所定の報告をするよう、航空会社の社内規則で定められているのです

終わりに

いかがでしたか?

飛行機は空中を高速で移動する乗り物であるため、当然飛行中にかかる負荷も大きな乗り物と言えます。

これは設計範囲を超えた速度で飛行した場合には、重大なダメージに繋がることも意味しますから、そのために様々な制限速度が設定されているのです。

飛行機の速度に関する雑学は他の記事でも紹介していますので、興味があればぜひご覧になってみてください。

 

以上!

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