飛行機(旅客機)の離陸速度がどれぐらいかご存知でしょうか?
一般的に新幹線ぐらいの速度(300km/h)と聞いたことがある人は多いかもしれません。
しかし飛行機には小さな飛行機から大きな飛行機まで様々な種類があります。
小型と言われるB737や大型の代表であるA380で、離陸速度がどれほど違うか気になりませんか?
今回はジェット旅客機の離陸速度について調べた結果をまとめてみました。
中、大型機の国際線では300~330km/hぐらい
飛行機の翼は表面を通過する空気が速ければ速いほど大きな揚力を生み出してくれます。
逆を言えば、速度が速くなければ重い重量を支えて離陸することはできません。
つまり、
重量が重い=速い離陸速度が必要
と言えます。
大型の飛行機の例ではボーイングのB777-300ERという機体やエアバスのA380といった機体が挙げられます。
一方で中型機にはB787-8やB767-300などが該当します。
一般的に国際線は、長距離を飛ぶためにたくさんの燃料を積む必要があります。
従って、その機体が構造上耐えられる上限の重量近くで離陸することが多いのですが、その時の重量と離陸速度をまとめると大体以下のとおりです。
・A380 離陸重量550トン 離陸速度310km/h
・B777-300ER 離陸重量340トン 離陸速度330km/h
・B787-8 離陸重量230トン 離陸速度300km/h
・B767-300 離陸重量180トン 離陸速度310km/h
B767-300とA380では離陸重量が3倍近く違いますが、その割に離陸速度は同じぐらいになっていますね。
ここで言う離陸速度とは、機体が浮揚して安全に離陸を継続できるとされている速度を指しています。
この速度のことをV2(ブイツー)と言います。
若干の違いはあれ、中、大型機では機体のサイズが異なっても、燃料をたくさん積んで目いっぱいの重量で離陸する時に必要な離陸速度は大体同じなのです。
小型機や中型機の国内線では270~300km/hぐらい
では、もう少しサイズの小さい機体では離陸速度はどれぐらいになるでしょうか?
小型の機体の例ではボーイングのB737-800や、エアバスのA320などが挙げられます。
同じようにこれらの機体で離陸が許される最も重い重量近辺での離陸速度を見てみましょう。
また中型のB787やB767では、国内線の運航では国際線ほど燃料を積まないので先ほどより重量が軽くなります。
その場合のおおよその離陸速度も併せて見てみましょう。
・B737-800 離陸重量70トン 離陸速度280km/h
・A320 離陸重量70トン 離陸速度290km/h
・B787-8 離陸重量170トン 離陸速度270km/h
・B767-300 離陸重量140トン 離陸速度270km/h
B737やA320のように100トンを下回るような機体では、先ほどの国際線機材より若干遅い速度でも十分なようです。
しかし、それでも300km/h 近くまで加速が必要であることが分かりますね。
B787やB767は国際線よりも重量が軽い分離陸速度が遅くなっており、小型の機材と同程度になっていることが分かります。
それでも離陸速度は200km/h後半が必要です。
リージョナルジェットでは260~270km/hぐらい
最後にもう少し小さい機材としてリージョナルジェットを見てみましょう。
リージョナルジェットとは席数が100席に満たないぐらいの機材で、例としてはエンブラエルのE170などが該当します。
リージョナルジェットの離陸速度はどれほどでしょうか?
・E170 離陸重量36トン 離陸速度270km/h
小型旅客機のB737やA320よりも10~20km/hぐらい遅いイメージですね。
それでも離陸速度は250km/h以上が必要になります。
重量は36トンなので、A380と比べると10分の1以下!
B737と比べても2分の1の重量です。
その重量を考慮しても270km/hの離陸速度が必要になるのです。
機体サイズが小さいほど離陸速度は遅いが、大きな差はない
ここまで中・大型機の国際線、小型機や中型機の国内線、リージョナルジェットと見てきました。
これらをまとめると次のようなことが言えます。
・機体サイズが小さいほど離陸速度は遅い傾向にある
・離陸速度は機体サイズの重量比ほど違いはない
・どの機体でも250km/h程度の離陸速度は最低必要
注目したいのは2番目の「離陸速度は機体サイズの重量比ほど違いはない」ということですね。
先ほどの例で、一番軽いE170は36トンで270km/hぐらいでしたが、一番重いA380は550トンで310km/hほどです。
確かにA380の方が重量が重いので、必要な離陸速度は速くなっていますが、重量が10倍以上違うにも関わらず速度は1.15倍程です。
ちょっと小難しい話をすると、揚力は速度の二乗に比例して大きくなるのですが、それを差し引いても重量ほど離陸速度に大きな違いはありません。
ではなぜ機体重量に差があっても離陸速度はそれほど違わないのか?
その大きな理由の一つは、
機体重量が大きい=大きな翼を備えている
が挙げられます。
飛行機の翼は面積が大きければ大きいほど、それに比例して揚力が大きくなります。
大きな機材はサイズに見合った面積の翼を備えていますから、重量が重くなっても著しく離陸速度を速くする必要がないように設計されているんですね。
どの機体も使う滑走路の長さは同じ
機体サイズの割に離陸速度が大きく異ならない理由を別視点から考えてみましょう。
一般に重量が重い飛行機の方が長い滑走路を必要としますが、そうかと言って軽い飛行機の2倍も3倍も長い滑走路が必要というわけではありません。
仮に同じ長さの滑走路で、離陸に必要な速度が2倍違うとするとどうでしょうか?
例えば同じ距離で2倍の速度まで加速しようとすると、実は4倍の加速度が必要になります。
4倍の加速度が必要ということは、飛行機に乗っている人は加速のGを4倍感じるということですし、加速時に機体にかかる負荷も4倍になるということです。
また、もしも離陸を中断して止まる場合も、より強い減速率で急激に停止させる必要が出てきます。
これでは快適性や安全性の面で大きな問題になってしまいます。
使用する滑走路の長さが大型機でも小型機でも同じという点からも、離陸に必要な速度に大きな差がでないようにする必要があるのです。
まとめ
今回は機体の大きさと離陸速度の関係について注目してみましたが、以下にまとめをしておきます。
・飛行機の離陸速度は中・大型機の最大重量で300km/h以上
・小型機やリージョナル機のような軽い機体でも250km/h以上の速度は必要
・機体サイズの割に離陸速度に大きな差がないのは、翼の大きさが関係している
・同じ長さの滑走路を使うので、離陸速度も大体同じである必要がある