飛行機

コックピットに表示されるのは移動速度ではない?飛行機の速度は何のために必要?

こんにちは。ころすけです。

飛行機のコックピットの様子を見たことがあるでしょうか?

左右それぞれのパイロットの前にディスプレイが4~5枚並んでいて、いろいろな計器の値が表示されています。

この中に、飛行機の速度を表示している画面があるのですが、この速度は地上に対しての移動速度を表しているわけではないということをご存知でしょうか?

パイロットがこの速度表示を使って何を判断しているのか、解説します。

飛行機のコックピットに表示される速度は移動速度ではない!

下の図はパイロットの真正面にあるPFD(Primary Flight Display)と呼ばれるディスプレイの様子を描いています。

パイロットは二人が横に並んで座っていますが、それぞれの真正面にあるディスプレイに同じ表示が出ています。

PFDのイメージ

真ん中が飛行機の姿勢を表示する部分で、左側の緑色の数値が速度、右側の緑色の数値が高度を表示しています。

飛行機の種類によって若干ディスプレイの見た目は異なりますが、どの機種でもほとんど同じスタイルになっていて、左から速度、姿勢、高度の順に表示されるのは共通です。

ちなみにこの速度と高度ですが、単位はノット(kt) とフィート(ft) が使われています。

1ktは1時間に1.852km進む速さになっていて、大体数値を倍にしたらkm/hに変換できます。

1ftは約30cmなので、0.3倍したらmに変換できます。

この表示では速度は245ktを示しているので、大体245×2=490km/hぐらいの飛行速度であると言えるわけです。

そしてここからが本題。

計器表示が約490km/h なので、飛行機は地上に対して490km/hで飛んでいるの?と思えそうですが、実は違うのです。

実は地上に対しての速度は490km/hよりも速い速度になっているのです。

なぜ計器の表示と地上に対する速度が異なるのかを見ていきましょう。

飛行機の速度はぶつかってくる空気の圧力の大きさを表している

そもそもコックピットに表示される速度はどのようにして測られているのでしょうか?

飛行機の速度はピトー管と呼ばれる機首に取り付けられた細いチューブ状の装置によって計測されています。

ピトー管の取り付け位置例

このピトー管は簡単に説明すると、機体が前進することで相対的にぶつかってくる空気をチューブの中に通してやり、そのぶつかってくる圧力の大きさを測っているのです。

速度が速くなればぶつかってくる空気の圧力は大きくなり、速度が遅くなれば圧力は小さくなりますから、圧力から速度を求めることができるのです。

ピトー管で計測する速度と地上に対する速度では差が出る

ピトー管は原理も簡単であるため、飛行機の黎明期から用いられてきた計器ですが、実は地上から見た速度と比較すると必ずしも一致するわけではありません

その理由は空気(大気)の密度にあります。

先ほど、コックピットに表示される速度の値はぶつかってくる空気の圧力の大きさを速度として表示していると言いました。

ですが少し考えれば分かるとおり、ぶつかってくる空気の圧力は速度だけで変わるわけではありません。

速度が速くても大気の密度が大きければ大きな圧力になるはずですし、密度が小さければ小さな圧力になります。

実はピトー管で計測される速度は、この密度の変化が考慮されていないのです。

飛行機の計器ではピトー管で計測された圧力が速度に変換される場合、密度は常に地上の平均的な大気(標準大気と言います)の値が前提になっているのです。

そうすると以下の図に示すように計器表示と地上から見た速度との間に差が発生することが分かります。

空気密度の違いによる速度の違いのイメージ

地球の大気は上空へ行くほど空気の密度が小さくなっています。

仮に地上で飛行した時と上空数千mで飛行した時を比べてみると、地上から見た速度が同じであっても、上空で飛行した時の方が空気密度小さいためぶつかってくる空気の圧力は小さくなります。

つまり、上空での計器表示は地上から見た速度よりも遅い値を表示することになるのです。

逆に今度は地上と上空で計器表示上の速度が同じであった場合を考えると、このようになるためには上空を飛行している時は地上から見た速度でより速く飛行していることになります。

これが コックピットに表示される速度≠移動速度 となってしまう理由です。

では、なぜ移動速度ではなくぶつかってくる空気の圧力を基準とした速度をコックピットで表示させているのでしょうか?

一つの理由としてピトー管の原理が簡単であり、技術が発達していない時代の仕組みがそのまま現代に引き継がれているというのがあるかと思います。

ですが、それ以外に飛行機の操縦に関わるもっと大きな観点で、ぶつかってくる空気の圧力を基準とした速度を使う理由があるのです。

ぶつかってくる空気の圧力から速度を求める方が都合がよい理由

下の図は飛行機の翼の断面と翼に揚力が発生している様子を示しています。

揚力の発生原理イメージ

飛行機が飛行している時、翼に働く揚力は機体に働く重力と釣り合っており、重力と反対向き(垂直方向)に働いています。

つまり、飛行機の重さが同じであればどのような時でも同じ大きさの揚力を発生させる必要があるのです。

この揚力の大きさには次のような特徴があります。

揚力の大きさは前方からぶつかってくる空気の圧力の大きさ翼が空気を受ける角度で決まる。(※フラップなどは考えない時)

つまり、前方からぶつかってくる空気の圧力を基準とした速度を使う事で、揚力の大きさと関連付けることができるのです。

さらに飛行中に発生している揚力の大きさは機体の重さと釣り合っており、機体の重さは分かっているわけですから、翼にどのぐらいの角度で空気が当たっているかを見積もることができます

実はここが大きなポイントなのです。

空気の流れに対して翼の面に角度をつけてやると、効果的に揚力を発生させることができます。

しかしこの角度をあまりつけ過ぎると、翼の表面に沿って空気がきれいに流れなくなり、揚力が全く発生しなくなってしまうのです。

失速による揚力喪失イメージ

この現象を失速と呼んでいます。

失速では揚力が発生していないので、当然機体はその瞬間に安定性を失い、適切な回復操作をしないと最悪の場合墜落に至ってしまう危険な状態です。

パイロットは絶対に機体がこの失速状態に陥らないように操縦する必要があるのですが、ぶつかってくる空気の圧力基準の速度に注意を払えば、翼に当たる空気の角度が直接分からずとも失速に近づいていないか知ることができるのです。

具体的には、コックピットに表示される速度がある値を下回ると失速に入るのですが、その範囲が分かるように速度計に表示が出るようになっています。

このように、パイロットが計器上の速度を見るのは、地上から見た移動速度を知りたいというよりも、機体が安全な範囲で飛行しているか判断するためという理由の方が大きいのです。

だからコックピット上の速度表示は地上から見た移動速度とは違うのです。

計器上の速度は第一に飛行機が安全な範囲で飛行しているか知るために見ている!

最後に補足

いかがでしたか?

速度と失速の関係は飛行機を操縦する上で一番と言っても良いぐらい重要なものなので、パイロットの世界ではきちんと理解しておかなければならない理屈です。

一方で、そうは言っても飛行機は移動手段として使用するわけですから、やはり地上に対してどのぐらいの速度で移動しているのか知りたいところです。

特にエアラインは交通機関として運航しているので、目的地にどのぐらいで到着するかは定時性などにも関わってきます。

さらに地上と上空の空気密度の差は上空に行けば行くほど大きくなり、高度1万m付近を飛ぶジェット旅客機では計器速度との差が大きくなりますからなおさらです。

なので飛行機には普通、ぶつかってくる空気の圧力基準の速度以外に、地上から見た速度(対地速度)がどのぐらいか別のディスプレイで確認できるようになっています。

この地上から見た速度は別のセンサーによって計測されいるのです。

ただし、パイロットが飛行機を操縦する上で重要なのはぶつかってくる空気の圧力を基準とした速度なので、座席の真正面にあるPFDにはこの速度が表示されているというわけです。

 

以上!

 

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