飛行機

飛行機のコックピット。基本のディスプレイは3種類です!

こんにちは。ころすけです。

みなさんはコックピットと聞くと、何を思い浮かべるでしょうか?

飛行機を操縦するための操縦輪(操縦桿)であったり、エンジンの推力調整をするスロットルレバーなんかが印象的かもしれませんね。

ですがそれと同じぐらい、コックピット=たくさん並んだディスプレイを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?

コックピットには何枚ものディスプレイが並んでいて、様々な計器の値が表示されているので、非常に複雑なように見えます。

ですが、基本となるディスプレイはどんな機種でもたった3種類に分けられると聞いたら、ちょっと取っつきやすいと思いませんか?

今回はコックピットディスプレイの基本について紹介したいと思います。

コックピットのディスプレイ。基本となるのは3つの画面。

下の画像はB777のコックピットの様子です。

最近の機種ではコックピットの計器類も、液晶画面を用いたグラスコックピットが採用されていて、たくさんのスイッチ類と共に液晶画面も複数装備されています。

B777のコックピット出典:http://hirob777rjff.blog.fc2.com/blog-entry-43.html

パイロットは操縦中、これらのディスプレイに注意を払わないといけないのですが、実はディスプレイの中には「常に注意を払わないといけないディスプレイ」「必要に応じて操作、使用するディスプレイ」の2種類があるのです。

下の図にその2種類を分けてみました。

ディスプレイの用途分け

図の中の赤枠のディスプレイが「常に注意を払わないといけないディスプレイ」で青枠が「必要に応じて操作、使用するディスプレイ」になります。

赤枠のディスプレイは常に注意を払わないといけないわけですから、それだけ操縦にとって重要な情報が表示されているということになります。

つまり、操縦する上で必要なほとんどの情報は上図の5つのディスプレイから得られるというわけです。

さらに①と⑤、②と④のディスプレイは通常、同じ内容が表示されています。

パイロットは右席と左席と2人座りますから、それぞれの見やすい位置に同じ情報が表示されているのです。

ということは、コックピットの中で基本となるディスプレイは、真ん中の③のディスプレイと外側の2枚のディスプレイ(①と②または④と⑤)の計3種類になるというわけです。

3つの基本画面を順番に見ていこう!

それではここからは、基本となる3種類のディスプレイについて順番に見ていきましょう。

以下では一般的なディスプレイの表示をイメージ図と共に解説します。

どの飛行機でも表示される内容や表示方法などは概ね共通していますが、細かなところは機種によって異なりますのでご了承ください。

① PFD (Primary Flight Display)

まず始めのディスプレイはPFD(Primary Flight Display)と呼ばれ、先ほどの図で①または⑤の位置に表示されています。

このディスプレイは “Primary” と言うだけあって、操縦の最も基本的で、最も重要な情報を表示していると言っても過言ではありません。

下の図はPFDのイメージ図です。

PFDのイメージ図

PFDには様々な情報が表示されているのですが、表示エリアと表示の内容をまとめたものが下の図です。

PFD表示情報のエリア分け

PFDには通常、速度計、高度計、昇降計のほかに、ADIHSIと呼ばれる機体の姿勢や機首方位を示す計器、それから現在の自動操縦装置モードを示すFMAが表示されています。

速度や高度はパイロットが常に把握していなければならない情報になりますし、機体の姿勢も常に注視し、異常があればすぐに対処しなければならない重要な情報です。

なので、これらの情報は “Primary” な情報として、左右どちらのパイロットに対しても目の前に表示されているというわけです。

ちなみに、左から速度計、ADI、高度計、昇降計の順に並び、ADIの下にHSIが置かれる配置は、どのような機種でも必ず同じになっています。

これは情報の表示位置に共通性を持たせることでパイロットが理解しやすく、間違いを起こさないようにするためであり、文字盤と針を用いた機械式計器の時代から同じなのです。

② ND (Navigation Display)

続いてのディスプレイはND(Navigation Display)で、先ほどの図では②または④の位置に表示されています。

NDのイメージ図

Navigation Displayは車のカーナビをイメージすると分かりやすいかもしれません。

最近の機種では、FMS(Flight Management System)に目的地までの経路や途中のチェックポイント(Waypoint)を入力することで、飛行すべき経路をコックピット画面上に表示することができます。

このように飛行経路=MAPに関する情報が表示されるのがNDというわけです。

図の赤紫色(マゼンタ)の線がFMSに入力した飛行経路で、BKIYOやKOROSがWaypoint名です。
さらに上側の目盛りを読むと、機首方位は180度を向いていることが分かります。(イメージ図のWaypoint名などは全て架空です)

左上には風向風速や、地面に対してどのぐらいの速度で飛行しているのか(対地速度)、空気に対してどのぐらいの速度で飛行しているのか(対気速度)といった情報も表示されています。

図では対地速度が389kt、対気速度が412ktで、風は360度の方位から23ktといった具合です。

右上の表示は次のWaypointまでの距離と通過見込み時刻で、この場合は距離が12.3NM、世界標準時の7:12に通過する見込みとなるわけです。

さらに下段には、VOR/DMEと呼ばれる無線航法施設の識別コードと距離であったり、RNAVと呼ばれる航法に必要な情報が緑色で表示されています。

NDには基本的に上で挙げたような情報が表示されるのですが、パイロットの選択によって表示内容が変わることもあります

例えば上のイメージ図では現在の飛行状況が表示されていますが、飛行経路を組み直したり修正したりする場合には、NDの画面はPLANモードにすることが可能です。

PLANモードでは修正した飛行経路を有効にする前に、経路の全体図や経路イメージを確認することができます。

他にも表示されるMAPの拡大縮小や、参考情報として周辺の地形図や雨雲レーダーの情報をMAPに被せて表示させる機能など、必要に応じて表示内容を調整することができるのです。

③ EICAS (Engine Indication and Crew Alerting System)

3つ目はEICAS(アイキャス)で、ちょうどコックピット中央の③のディスプレイが該当します。

EICASは略語を見れば分かる通り、主としてエンジンの作動状況パイロットへの警報の2つの情報を表示するディスプレイです。

正確には、Engine Indication + Crew Alert + その他の情報を表示します。

EICASのイメージ図上の図は典型的なEICASのイメージ図ですが、それぞれのエリアに表示されている内容をまとめると以下の図のようになります。

EICAS表示情報のエリア分け

左上の一番広いエリアは、何よりもまず重要なエンジンに関する情報が表示されています。

表示されている情報は、エンジンの回転数排気ガスの温度潤滑オイルの温度オイル圧などです。

続いて右上のエリアがCrew Alertのエリアで、飛行機が異常を検知した際にパイロットに警告を発するエリアになっています。

飛行機の各システムには様々なセンサーが付いていて、それらが異常を検知すると状況に応じたメッセージがこのエリアに表示されるのです。

例えば、エンジンには出火を検知するセンサーが付いています。

そのセンサーが出火を検知すると、EICAS上に「FIRE ENG」というメッセージが警告音と共に表示されて、エンジンから出火があることをパイロットに知らせるのです。

メッセージは他にもたくさんあって、油圧システムに関するものや空調システムなど様々です。

これらの警告メッセージが出た場合、パイロットはそのトラブルに対して対処する必要がありますが、各警告メッセージに対してどのような対処を行うかは予め決められています。

コックピットにはすぐに取り出せる位置にQRH(Quick Reference Handbook)という冊子が搭載されていて、ここに各警告メッセージに対する処置が示されているのです。

例えば「FIRE ENG L」は左側のエンジンから出火した際に出る警告メッセージですが、このメッセージに対する対処はQRHの「FIRE ENG L or R」の項目を見ればよいというわけです。

さらにEICASに表示されるメッセージは、によって深刻度の度合いが分かるような工夫がされています。

例えば、直ちに対処しないと最悪の場合墜落や事故に至るような異常の場合は赤(レッド)、赤ほどではないけれども緊急を要する異常の場合はオレンジ(アンバー)と言った具合です。

EICASメッセージの色分け例

エンジン計器表示と警報以外では、Landing Gearのアップ/ダウンの状況やFlap/Slatの状況、与圧システムの作動状況や燃料残量など、機体システムの状態も表示されるのが一般的です。

色々な機種のディスプレイ。B787ではディスプレイが4つしかない?

さあ、ここまでコックピットディスプレイの基本的なスタイルを解説してきましたが、冒頭でも述べた通り、ディスプレイのスタイルや表示は機種ごとに異なります。

ここでは先ほど解説したスタイルとは一風変わった仕様の機種を紹介しましょう。

まず下の図はB787のコックピットの様子です。↓

 

B787のディスプレイ出典:https://response.jp/article/img/2015/01/05/240902/812980.html?from=tpimg

 

よく見ていただくと分かるとおり、B787ではパイロット正面のディスプレイが大型化し、左右2枚ずつの計4枚のディスプレイで構成されていることが分かります。

近年、このように4枚ディスプレイの機種がいくつか登場しているのですが、B787はその代表とも言えます。

当然、4枚ディスプレイで中央がないので「EICASはどこへ行ってしまうの?」と疑問が湧くかと思います。

このようなスタイルのディスプレイでは通常の1画面を2分割して情報を表示できるようになっており、EICASも中央2枚のディスプレイのうちどちらか半分のエリアに表示されるようになっているのです。

図では左から2番目のディスプレイの右半分がEICASの表示になっていて、もう半分はNDの表示になっていることが分かるかと思います。

右から2番目、副操縦士側のディスプレイでは半分はND、もう半分は機体のドアロック状況などを表示する画面になっています。

4枚ディスプレイになっても、基本であるPFD、ND、EICASの表示があることは変わらないのです。

次の画像はA320のコックピットの様子です。↓

A320のディスプレイ

出典:https://news.mynavi.jp/article/20161226-a320neo/

A320ではディスプレイの配置はさほど特色はありませんが、中央のディスプレイ表示はEICASではなくECAMと呼ばれています。

EICASというのは主にボーイング系機種でのシステム名称なんですね。(CRJやERJなどでもEICASというシステム名が使われているようです)

ただし、表示内容としてはEICASとほぼ同等で、A320のECAMは中央上下2段のディスプレイ表示のことを指しています。

このようにシステム名称は異なっても、表示内容としてはボーイング機でもエアバス機でも概ね共通しているのです。

終わりに

いかがでしたか?

飛行機のコックピットは機種によってスタイルがまちまちなので、違う機種を見るたびに全く異なるシステムで動いているように思いがちです。

もちろん細かな部分は機種によって全然異なるのですが、パイロットが見るディスプレイの基本的な部分は、機種によらず共通の設計思想になっているんですね。

コックピットの様子は一般的にはあまり見ることができないので、なかなかイメージを持つのが難しいかもしれません。

この記事を読んで、少しでも「コックピットの世界を知ることができた!」と思っていただければ嬉しいですね。

 

以上!

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