こんにちは。ころすけです。
飛行機のエンジンと言えばジェットエンジンですね。
「ジェットエンジンの仕組みを知りたい!」という方は大勢いらっしゃるかと思いますが、一風変わってジェットエンジンのアクセサリーギアボックスというものに興味は湧かないでしょうか?
アクセサリーギアボックスには、エンジンの回転力を一部利用して駆動する様々なエンジン補機(アクセサリー)が取り付けられているのです。
実はアクセサリーギアボックスの補機を理解することで、推進装置としての役割以外にジェットエンジンが持つ役割や、ジェットエンジンが作動する仕組みが見えてきます。
今回はジェットエンジンのアクセサリーギアボックスとその補機について解説します。
ジェットエンジンのアクセサリーギアボックスには何が付いている?
アクセサリーギアボックスはどこにある?
下の図は旅客機のジェットエンジンの中でも最も主流である、ターボファンエンジンの断面をイメージした図になります。
一般的なジェットエンジンは、一番前方にあるファンを高速で回転させ、大量の空気を後ろに噴射することで推進力を得ています。
ではそのファンはどのように回転しているのかと言うと、まずファンの後ろにある圧縮機を回転させることで吸い込んだ空気を圧縮します。
圧縮された空気は次に燃焼室に入り、燃料と一緒に燃やされるのですが、この際に発生する空気が膨張するエネルギーを使って後方にあるタービンを回すのです。
タービンは圧縮機とファンのそれぞれの軸と一緒に回るようにできていて、その回転でファンは推進力を、圧縮機は次に入ってくる空気を圧縮する駆動力を得るというわけです。
さて、問題のアクセサリーギアボックスがどこにあるかというと、ちょうど圧縮機の真下にあるのが普通です。
ボックスはドライブシャフトを通じて圧縮機とつながっていて、圧縮機の回転がボックスに取り付けられた様々な補機類の回転駆動に繋がるのです。
アクセサリーギアボックスに取り付けられている補機は何?
それでは次に、アクセサリーギアボックスに取り付けられている補機の種類について見ていきましょう。
先ほどの画像で、ギアボックスにいくつも丸い穴のようなものが開いていたと思います(裏側にもあります)。
この丸い穴が補機の取り付け部になっていて、それぞれに異なる種類の補機が取り付くとイメージしていただければオーケーです。
もちろん詳細はエンジンによって多少異なるものですが、取り付けられている補機の種類は大体共通しています。
補機は基本的に①エンジンが正常に作動するのを補助する機器、が多いですが、②機体システムの動力源を作り出す機器もあります。
ひとまず典型的な補機の名称を列挙すると、以下のとおりです。
①エンジンが正常に作動するのを補助する機器
1. Oil Scavenge Pump
2. Fuel Pump
3. Permanent Magnetic Alternator
4. Pneumatic Starter
②機体システムの動力源を作り出す機器
5. Integrated Driven Generator
6. Hydraulic Engine Driven Pump
アクセサリーギアボックスに取り付けられた補機類について解説
1. Oil Scavenge Pump
Oil Scavenge Pumpはエンジン内に潤滑オイルを行きわたらせるための流れを作るポンプです。
ジェットエンジンは軸を持ったファンや圧縮機が高速で回転する機構ですので、軸の支持部はベアリングで支えられています。
このような軸受け部などには当然、潤滑オイルが常に供給され循環する必要があるのです。
2. Fuel Pump
Fuel Pumpは翼の燃料タンクからエンジンに流れてきた燃料を加圧し、燃焼室まで送る流れを作るポンプです。
加圧された燃料は不純物除去のフィルターを通り、使用されて熱くなった潤滑オイルと熱交換をして温められたりしながら(逆に潤滑オイルは冷却される)、燃料噴射ノズルまで導かれます。
3. Permanent Magnetic Alternator
Permanent Magnetic Alternator(PMA)は永久磁石を使った小型の発電機です。
何のための発電機?と思うかもしれませんが、PMAはエンジンをデジタル制御するコンピューターに電力を供給するためのものです。
最近のジェットエンジンでは、ファンや圧縮機の最適な回転数をコンピューターが計算し、人の手を介さずとも自動的にエンジンの微妙なコントロールを行ってくれます。
このようなコンピューターはFADECやEECなどと呼ばれるのですが、エンジンに取り付けられたこれらのコンピューターに電力を供給するのがPMAで、アクセサリーギアボックスに伝達された回転力で駆動されているのです。
4. Pneumatic Starter
Pneumatic Starterはここまでの補機とは違い、アクセサリーギアボックスから回転力を受けとって作動するものではなく、逆にアクセサリーギアボックスを介して圧縮機に回転力を伝達するための機器です。
ジェットエンジンの始動にはまず圧縮した空気を燃焼室に送り込むことが必要ですから、始めに圧縮機を何らかの形で動かしてあげないといけません。
しかし圧縮機はそれなりに重量もあるので、最初の動きを加えるためにはある程度大きな力が必要です。
そこでエンジンの始動には、別のところから圧縮空気を引っ張ってきてアクセサリギアボックスに通し、その力を逆に圧縮機側に伝えることでエンジンスタートを補助するのです。
Pneumatic Starterはエンジンスタートの際、この引っ張ってきた圧縮空気を通すバルブであり、その開閉のコントロールをしているのです。
ちなみにエンジンスタートのために引っ張ってくる圧縮空気はどこから来るかと言うと、①既に作動している反対側のエンジン、②APU(補助動力装置)、③地上の圧縮空気供給装置のいずれかです。
5. Integrated Driven Generator
ここからはエンジンの作動を補助するための補機ではなく、作動しているエンジンの回転力を利用して飛行機システムに必要な動力を生み出す補機になります。
まず始めはIntegrated Driven Generator、通称IDGですが、これは飛行機のシステムに必要な電力を発生させるための発電機です。
客室内の照明はもちろん、コックピットで作動する様々な電子機器なども含めて、機体システムに必要な電力は全てIDGによって作られます。
エンジン2機の飛行機であれば、左右2つのIDGが電力を賄うわけです。(B787は左右に2つずつ、計4つのIDGを装備しています。)
ちなみにIDGで作られる電源は、115V・400Hzの交流電源です。
多くのシステムが電気で作動している飛行機にとってIDGは非常に重要な装置になるのですが、これはアクセサリーギアボックスに取り付けられ、エンジンの回転力で作動しているんですね。
6. Hydraulic Engine Driven Pump
続いてはHydraulic Engine Driven Pumpで、これは油圧システム、いわゆるハイドロのためのポンプです。
飛行機のハイドロシステムは作動油を3,000PSI(機種によっては5,000PSI)という高圧にして使用するのですが、そのメインとなる昇圧ポンプが実はエンジンのアクセサリギアボックスに取り付けられたEngine Driven Pumpなのです。
ハイドロシステム用のポンプは通常、Engine Driven Pumpの他に電気モーターで作動するElectric Pumpも備えているのですが、メインとなるポンプはあくまでエンジンにあるEngine Driven Pumpなのです。
ハイドロシステムも電力と同様、飛行機システムを動かす重要な動力源の1つですから、このポンプもまた飛行機になくてはならないものというわけですね。
終わりに
いかがでしたか?
以上がジェットエンジンのアクセサリギアボックスと、それに取り付けられた補機類の解説になりますが、視点を変えたジェットエンジンの仕組みを垣間見ることができたのではないでしょうか?
飛行機のシステムにはまだまだ興味深い装置や仕組みがたくさんありますので、これからも随時紹介していきたいと思います。
以上!