飛行機

型式証明って何?~耐空証明との違いを解説!~

こんにちは。ころすけです。

航空機(飛行機)の「型式証明」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

最近では、未だMRJの方がとおりが良い(?)三菱スペースジェットのニュースでよく耳にする言葉ではないでしょうか?

型式証明の取得が難航しているという悪いニュースですが・・・。(開発も凍結されてしまいましたね)

これとは別に、飛行機に興味がある人の中には「耐空証明」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。

型式証明と耐空証明、似たような名前ですが、それぞれが何の証明でどのような関係にあるのか(もしくは全く関係のない別物なのか)解説したいと思います。

航空機運航に必要なのは「耐空証明」。型式証明があるとその手続きを一部省略できる。

運航に必要なのは「耐空証明」

まず第一に重要なのは、飛行機を運航するにあたって必要なのは「耐空証明」だという点です。

耐空証明とは、その飛行機に「耐空性」があることを証明するもので、“耐空性がある”とは国が定める耐空性基準を満たしていることを指します。

耐空性基準は大きく以下の3つの要素に分けて基準が定められています。

① 航空機および装備品の強度、構造および性能についての基準

② 航空機の騒音の基準

③ 航空機の発動機(エンジン)の排出物の基準

上記の3基準を満たしていると判定されれば、国から「耐空証明書」が発行されるわけです。

「型式証明」があると設計・製造過程についての検査が不要になる

では型式証明とは何か?ですが、型式証明を理解するには先ほどの3つの基準が満たされていることを、「どの段階で検査する必要があるのか?」について知る必要があります。

実は耐空証明検査は、モノが出来上がってから基準への適合性を見ればよいというものではなく、以下の3段階においてその適合性を証明する必要があります。

① 設計の段階:設計が個々の基準に適合しているか詳細に検査

② 製造の段階:製造時における作業、検査の所定項目について立会

③ 現状検査:実際の機体を用いた地上検査および飛行検査の実施

 

さて、そうして開発が順調に進んで、耐空性基準を満たす機体が完成したとしましょう。

その次は当然、実際にエアラインに向けて機体を納入するために機体の量産に入るかと思います。

飛行機は1機1機につき、それぞれ耐空証明を取得する必要があるのですが、では量産機の耐空証明検査はどうするのでしょうか?

なんと、量産機であっても試作機と同様、それぞれに設計、製造、現状の各段階で適合性を証明しないといけないのです!

あくまで耐空性とは、設計、製造、現状の3つの段階での検査の結果証明されるものですから、試作機であろうと量産機であろうと原則は変わらないんですね。

ですが量産体制に入れば、月当たり何機もの機体を製造しなければ商売になりませんから、1機1機に対して設計図面から検査するような手間を掛けられないのは自明です。

そこで登場するのが「型式証明」という制度です。

型式証明は耐空性基準の適合検査の過程で、設計および製造過程については1機の適合性について検査をクリアすれば、以降の同型機に対しては省略できるという制度です。

いわば設計段階と製造段階の部分的な耐空性を証明するのが型式証明と言えます。

なので型式証明を取得した型式では、量産機については出来上がったものの現状確認(地上検査・飛行検査)のみ行えばよいというわけです。

型式証明は量産化のために必要不可欠な制度なんですね。

型式証明は海外のエアラインに売り込むためにも必要

例として三菱スペースジェットの場合、既に購入を表明しているANAは日本の航空会社であるため、ANAが運航する際には国土交通省航空局(JCAB)の型式証明が必要になります。

なぜなら、ANAが運航する機材の登録国籍は日本であるため、耐空証明の取得もJCABの検査を受ける必要があるからです。

では、スペースジェットを海外で運航しようとした場合はどうでしょうか?

海外の航空会社が運航する場合、その機体を登録している国の監督機関から耐空証明を発行してもらう必要があります。

具体的には、アメリカであればFAA(連邦航空局)、ヨーロッパであればEASA(欧州航空安全機関)が日本のJCABに該当する監督機関です。

従って、スペースジェットをアメリカやヨーロッパのエアライン向けに売ろうと思ったら、FAAやEASAの型式証明も取得する必要があるのです

これは逆のパターンもしかりで、例えばアメリカのボーイング社が製造するB787や欧州エアバス社のA350はANAやJALが既に運航している機材ですが、どちらも日本の型式証明を取得しています。

実際には耐空性に関わる証明については各国間で相互承認協定があって、一方の国で耐空性基準を満たしていると認められれば、承認協定のある国の方でも比較的容易に耐空性の証明がなされるようになっています。

日本はアメリカやヨーロッパのほか、カナダやブラジルとも相互承認協定を結んでいます。

スペースジェット(MRJ)の型式証明取得が遅れている原因は何か?

度重なる納入延期の末、ついには事業凍結のニュースまで出てしまった三菱スペースジェットですが、なぜこんなにも型式証明の取得で苦戦してしまったのでしょうか?

難しい話は色々とありそうですが、一言で言えば「自分たちで一から耐空性を審査する経験や知識・技量の圧倒的な不足」と言えるでしょう。

日本が独自に開発して耐空性基準への適合性を審査した民間旅客機は、YS11まで50年ほど遡らないといけません。

その間、確かにB787の翼や胴体などを代表とする個々の部品について製造事業を手掛けてきたとはいえ、それらの大元の設計はボーイングやエアバスであり、型式の審査機関もFAAやEASAだったわけです。

ボーイング機やエアバス機の型式証明を日本も発行しているとはいえ、言い方は悪いですが「FAAやEASAが承認した飛行機なら大丈夫」程度の審査経験しかこれまで積んでこなかったのです。

見ていてやれそうだと思う感覚と実際にやってみて苦戦する現実とのギャップは往々にして乖離が大きい場合が多いですが、それにしてもここまで躓いてしまった事実を日本の航空業界は真摯に受け止めなければいけないと個人的には思います。

終わりに

最後は少し蛇足のような話になりましたが、「型式証明とは耐空性証明の一部である」ということを理解していただければ十分かと思います。

今後も航空業界に関わる雑学について紹介していきますので、よろしければご覧になってみてください。

 

以上!

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