飛行機

エンジンが故障しても飛行機は墜落しません!理由について解説します。

こんにちは。ころすけです。

飛行機が空を飛ぶことができるのは、エンジンの力があるからです。

一般的な旅客機で言えばエンジン=ジェットエンジンですね。

これは紛れもない事実で、そのために飛行中のエンジン故障=墜落を連想される方も多いかと思います。

ですが実際には、エンジンが飛行中に故障したとしても、すぐに墜落するとは限らないのです。

えっ?そんなことは知っている?

確かにエンジンが飛行中に故障する事例は、頻度こそ多くはないもののニュースになることがありますから、飛行機がエンジン1基でも飛べると知っている方も多いと思います。

実際に、この記事を書いている2021年2月末の直近でも、那覇発羽田行きのJAL機(2020.12.4)、デンバー発ホノルル行きのユナイテッド航空機(2021.2.20)のいずれもB777-200型機が、飛行中に片側エンジンの故障に遭遇しましたが無事に着陸しています。

ただそうは言っても、やはり飛行中にエンジンが停止しても墜落しない理由について、いまいち釈然としないという方が多いのではないでしょうか?

本記事でその理由を詳しく解説します。

エンジンが故障しても飛行機は墜落しません!

飛行機はエンジン推力で自重を支えているわけではありません

飛行中のエンジン故障≠墜落と言える最大の理由は、飛行機の自重を支えているのが、直接的なエンジンの力ではないからです。

そもそも空中に浮かぶためには、機体に働く下向きの重力に対して、同じだけの上向きの力が必要になります。

この上向きの力が喪失する、または足りなくなった時に、飛行機は地面に向かって真っ逆さまに墜落するのです。

下の図をご覧ください。

重力に対抗する力

左の図のように、もしも飛行機のエンジン推力が直接重力に対抗しているなら、エンジン推力の喪失=墜落です。

例えばロケットの場合はこれに該当するので、その場合はエンジンが故障した時点で致命的な結果になります。

一方で飛行機の場合、エンジンの推力は重力に対して直角方向に作用するため、重力に逆らう力は別の力になります。

これが揚力です。

揚力はどのようにして発生しているかと言うと、飛行機が前進して風を切ることで力が発生しています。

つまり飛行機にとって重要なのは、機体を前進させて翼に揚力を発生させ続けることなのです。

「ではなぜエンジンが必要なのか?」という疑問が当然湧くかと思いますが、エンジンの推力が必要とされるのは、機体にかかる空気抵抗に対するためです。

飛行中の力のつり合い

機体にかかる空気抵抗が推力よりも大きな場合、抵抗に引きずられて飛行機の速度は減少するように作用します。

飛行中、エンジン推力は空気抵抗と釣り合うように調整されるのですが、これは機体の重量よりもはるかに小さな力で十分なのです。

エンジン1基の最大推力は機体重量の7~8分の1程度

飛行機にとって最もエンジン推力が必要になるのは離陸の時です。

離陸の時は停止した状態から所定の速度まで加速する必要があり、エンジン推力は単に空気抵抗と釣り合うだけでなく、空気抵抗よりも大きな力が必要になるからです。

ではこの時のエンジン1基の推力は大体どれぐらいかと言うと、双発の飛行機であれば、機体重量の大体7~8分の1程度の大きさになります。

下の表に、代表的な機種の重量とエンジン推力の関係を大まかにまとめました。

型式 最大離陸重量 エンジン推力 エンジン型式
B777-300ER 775,000 lb 115,000 lb GE90-115B
B787-9 560,000 lb 78,000 lb Trent 1000-K
A350-900 617,000 lb 75,000 lb Trent XWB-75
A320neo 174,000 lb 24,000 lb PW1127G
ERJ190 114,000 lb 18,500 lb CF34-10E5

エンジンが2基搭載されていることを考慮しても、離陸の際の最大推力ですら機体重量の30%程度なわけですから、ただ空気抵抗と釣り合えば良いだけの飛行中は、当然もっと小さな推力で十分なのです。

高度を落とせばエンジン1つでも十分に飛行できます

巡航中は案外と小さなエンジン推力で十分なわけですが、高い高度ではさらにエンジン推力は小さくなります。

正確に言うと、高高度ではエンジン推力は自然と小さくなってしまうのです。

ジェットエンジンは吸い込んだ空気を後方に吐き出すことで推力を発生させますが、飛行速度が速くなると、より速い速度で空気を後方に吐き出す必要があります。

空気密度が小さい高高度では、揚力を発生させるために飛行速度を速くしないといけないのですが、このため地上付近を飛行する時に比べて推力が低下してしまうのです。

なので高高度を飛行する場合、エンジンは全て作動していないと、空気抵抗に逆らうだけの十分な力を得ることができません。

逆に言えばエンジンが1基不作動でも、高度を落としさえすれば燃費こそ悪くなるものの、飛行の継続自体は十分可能な推力を得られるのです。

実際、高度約10000mの巡航高度でエンジン故障が発生した場合、パイロットはエンジン1基でも飛行継続が可能な高度まで降下操作を行います。

これはドリフトダウンと呼ばれています。

エンジンのない飛行機?グライダーという航空機

グライダー≒エンジンなしの飛行機です

このように、実は意外に小さくても十分なエンジン推力ですが、究極を言えばエンジン推力がゼロであっても飛行することが可能です。

実際にエンジンのついていない飛行機とも呼べる乗り物が存在します。

それが「グライダー」です。

グライダーグライダー

グライダーは日本語で言うと滑空機と言い、飛行機と同じく航空機の仲間になりますが、簡単に言えばエンジンのない飛行機です。

航空機=飛行機?セスナ機=小型機?違いについて解説!航空機と飛行機という言葉の違いをご存知でしょうか?あまり意識したことがないかもしれませんが、実はきちんとした定義があって明確に区別されているのです。言葉の定義にまつわる豆知識を紹介します。...

グライダーはエンジンがないので、離陸だけはエンジンの付いた飛行機に引っ張って行ってもらいますが、上空で切り離した後は飛行機同様に自由に飛行することができます。

冒頭で説明したように、飛行に必要な力はあくまで翼に発生する揚力であって、グライダーも前進することで翼に揚力を発生させて飛行するのです。

では、エンジンが必要となる、空気抵抗に対する力はどうするのでしょうか?

グライダーが飛行する原理

実はグライダーでは、機首を下方に傾けることで、空気抵抗に対する力を発生させています。

地面に対して垂直な揚力を前方に傾けることで、空気抵抗に対する力を作り出すのです。

グライダーの力のつり合いグライダーの力のつり合い

このような姿勢になるため、グライダーは自然に高度を維持することはできず、緩やかな滑り台を下るように高度を落としながら飛行します。

グライダーが滑空機と呼ばれる所以です。

いずれにしても、もしも飛行機の全エンジン推力が喪失した場合であっても、最終的にはグライダーと同じ原理で飛行を続けることが可能なのです。

飛行機にとって最悪なケース2つ!

ここまで解説してきたように、飛行機にとってエンジン故障≠即墜落ではありますが、やはり平常時の状態とは異なります。

エンジンが故障するタイミングや、エンジン故障が誘発する不具合によっては、飛行機が墜落する可能性は高まるのです。

飛行機にとって最悪な状況は、以下の2つのケースです。

低高度でエンジンが故障する

飛行機はエンジンが1基故障した場合であっても、低高度であれば飛行の継続が可能ですが、やはり機体性能の低下は避けられません。

具体的には離陸直後にエンジンが故障した場合、1基のエンジンで安全な高度まで上昇する必要がありますが、この上昇力が小さくなります。

この場合、もしも地上付近で避けなければならない高い障害物(建物や山など)があった場合、接触して墜落する危険性が増すのです。

ただしこれについては、エンジンが1基故障した場合でも所定の上昇力が得られるように、パイロットが予め機体重量が基準以内であることを確認する決まりになっています。

一方で問題になるのは、低高度で全エンジンの推力が停止した場合です。

飛行機は全エンジンが停止した場合でも、グライダーのように滑空することが可能ですが、高度を維持することはできません。

離陸直後にエンジンが故障して引き返すには、それなりの高度がないと届かずに、滑走路手前で墜落してしまうのです。

このようなことが実際に起こった事例として、2009年1月15日に発生した、USエアウェイズ1549便の着水事故が挙げられます。

USエアウェイズ1549便は、ニューヨークのラガーディア空港を出発直後に鳥の群れに遭遇し、エンジンが鳥を吸い込んだ結果、左右両エンジンの推力を失う最悪の事態に陥りました。

出発地のラガーディア空港に引き返そうにも高度が足りなかったため、止む無くマンハッタンを流れるハドソン川に着陸をしたのです。

幸いにもパイロットの巧みなテクニックにより、誰一人死者を出すことはありませんでした。

これは「ハドソン川の奇跡」として称えられていますが、低高度でのエンジン推力喪失がいかに危険であるかを再認識させる事例で、死者が出なかったのは正に奇跡なのです。

姿勢制御が不可能になる

飛行機にとって最悪のケース2つ目は、姿勢制御が不可能になることです。

飛行機が進行方向を変えるためには、旋回と言って、飛行機の傾きを調整する操作が必要になります。

飛行機が旋回できるのはなぜ?原理と仕組みについて解説します。飛行機がなぜ旋回できるのか考えたことはありますか?原理を理解するにはちょっとした物理の知識が必要ですが、実はそれほど難しい理屈ではないのです。飛行機が旋回する原理について解説します。...

また飛行機は機首を上げ過ぎてしまうと、失速と言って翼に揚力が発生しない状態に陥ってしまうため、機首の上げ下げ操作も非常に重要です。

この制御は主翼や垂直尾翼、水平尾翼に取り付けられたエルロン・ラダー・エレベーターと呼ばれる装置で行われます。

【入門編】飛行機の操縦方法を解説!基本は3つの回転のコントロールです。飛行機の操縦はどのようにして行うのかご存知でしょうか?実は飛行機操縦の基本は、3つの回転運動をコントロールすることなのです。飛行機操縦の基本的な知識と理屈を解説します。...

もしもエンジンの破損に伴ってこれらの装置も破損してしまった場合、飛行機の針路が制御できなくなったり、失速したりして墜落に繋がってしまうのです。

さらに主翼は揚力を発生させるために必要ですし、垂直尾翼水平尾翼も飛行機の姿勢を安定させる働きがありますから、主翼や尾翼へのダメージも何らかの悪影響を生みます。

エンジンの故障が危険と言うよりも、飛行機の姿勢制御に関わるシステムが故障することの方がはるかに危険なのです。

ちなみに、エルロンやラダー、エレベーターの装置は、油圧機構を介して操作されます。

この油圧を生み出しているのは実はエンジンの力なのですが、バックアップとして胴体に取り付けられた電気モーターで代用することが可能なので、エンジンがなくとも姿勢制御は可能です。

姿勢制御についても、実際に不可能になった結果、墜落に至った事例がいくつかあります。

国内では1971年に発生した全日空機の雫石事故や、1985年に発生した日本航空機の御巣鷹山墜落事故が有名です。

雫石事故では水平尾翼が破損したために操縦不能に、御巣鷹山事故では垂直尾翼の破損と、それに伴う油圧機構の全不作動により操縦不能な状態に陥りました。

いずれもエンジンは作動している状態で墜落に至っており、飛行機にとって重要なのはエンジンよりも姿勢制御システムであると、認識させられる事例と言えます。

終わりに

いかがでしたか?

「飛行機はエンジン1基でも飛行可能」

「パイロットは緊急時に備えて訓練を受けている」

このような話は既に知られているかもしれませんが、なぜエンジン1基でも飛行可能なのか理屈が分かると、同じ事例でも見え方や感じ方が変わってくると思います。

いくら原理的なことが分かったとしても、実際の光景を目の当たりにして全く恐怖を感じないことはないと思いますが、エンジンの役割について少しでも理解が深まれば嬉しいです。

以上!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です