飛行機

飛行機の高度はどうやって測る?実は計器は3つあります。

こんにちは。ころすけです。

みなさんは飛行機がどのように高度を測っているのか知っていますか?

知っているという方もいらっしゃるかと思いますが、

では、最新の飛行機では高度を測っている計器が3つもあることはご存知でしょうか?

今回は、その3種類の計器がどのようなもので、どのような使われ方をするのか解説します。

最新の飛行機では3種類の測定方法がある!

元々、飛行機の高度の測り方は1つしかありませんでした。

今でも、あまりハイテクではない小型の練習機なんかでは高度を測る計器は1つしかありません。

しかし技術が進歩するにつれて、最新の機体では高度を測る方法も1つではなく、より進歩した運航を行うために使われています。

以下に示す計器が、現在実際に高度を測定し利用するために使われている計器です。

・気圧高度計

・電波高度計

・GPS

気圧高度計で測る(これがメイン!)

まずは気圧高度計ですが、これは簡素な練習機からハイテクな旅客機まで、全ての飛行機に装備されているメインの高度計になります。

実は残りの2つの計器も高度を測っているのですが、使われるフェーズは限定的で、あくまでプラスアルファの飛び方をするために使われるにすぎません。

気圧高度計はパイロットが高度を知るために常に拠り所とする計器であり、航空機の高度計=気圧高度計と言ってもいいぐらいです。

今回は飛行機の意外な豆知識を紹介するので、3つの高度計を並べていますが、他の2つに比べて気圧高度計が圧倒的に重要な計器であることは知っておくと良いでしょう。

気圧高度計の測定原理

気圧高度計の原理は単純です。

地球の大気は上空に行くほど気圧が小さくなっており、飛行機が飛ぶ高度、すなわち高度12,000mぐらいまでは一次関数(直線)的に気圧が下がっていきます。

中に地上気圧での空気を封入したダイアフラムを用意し上空に持っていくと、中と外の気圧差によってダイアフラムは膨張、収縮をします。

この膨張、収縮に合わせて針が動くようにし、気圧に合わせた目盛りをふるだけで初歩的な高度計が出来上がります。

現在のハイテク機では、センサーで読み取った気圧をコンピューターで処理して高度の変換を行っていますが、基本となる原理は同じなのです。

気圧の大きさ=高度

気圧高度計は補正が必要

気圧高度計は原理が簡単で非常に使い勝手の良い高度計なのですが欠点もあります。

気圧高度計では、ある気圧の値の時に何メートルというような関係を紐づけるのですが、天気予報を見ていても分かるように、気圧は高い日もあれば低い日もあり、場所によっても異なります。

下の図を見てください。

地上気圧の違いによる気圧高度計の誤差イメージ

例えば、ある日に850hPaの地点の高度が1500mだったとします。

でも、もしもこれより気圧が高い日であれば、1500m地点の気圧は850hPaよりも高く、実際に850hPaとなる高度は1500mよりも高くなるはずです。

しかし、850hPa = 1500mが基準になっていると、高度計は実際よりも低い1500mを指してしまうのです。

つまり、その日その場所の気圧によって、何hPaが何mに該当するのかを毎回補正する必要があるのです。

気圧高度計はその日の気圧と高度の関係を毎回補正する必要がある

高度計補正の仕方

高度計の補正の仕方には3つありますが、航空の世界でよく使われるのはこのうちの2つです。

まず1つは、自分がいる地点がちょうど海抜高度(平均海面からの高さ)を表示するように高度計の指示を調整する方法です。

この高度計補正の仕方をQNHと言います。

もう1つは、その日の気圧が高かろうが低かろうが1013hPaが0mを指すように補正する方法です。

この高度計補正の仕方をQNEと言います。

なお、航空の世界ではhPaではなく、水銀柱の液面の高さで圧力を表現したinHgという単位が使われますが、1013hPa = 29.92inHgになります。

QNH:自分のいる高度が平均海面からの高さを指すように補正

QNE:その日の気圧によらず29.92inHg = 0mとなるように補正

後1つ、自分が離着陸する空港の高度が0mになるように補正する仕方があって、これをQFEと言いますが、これはあまり使われていません。

QNHとQNEの使い分け

それでは、どのような時にQNHを使って、どのような時にQNEを使うのでしょうか?

その前に、どうして高度計の指示値を何かに合わせる必要があるのか考えてみましょう。

1つは、地面からの高さを知ることで墜落を防ぐためですが、もう1つ理由があります。

それは、自分以外の航空機と同じ基準で高度を見るためです。

もしも、近くに自分以外にもう一機いたとして、その機体が自分と違う高度計の補正をしていたらどうでしょう

お互いに無線で高度を知らせ合って、違う高度を飛んでいると思っていたら実は同じ高度だったということが起こりえるのです。

高度計を補正する目的

① 地上からの高度を知って墜落を防ぐため

② 周辺にいる機体が同じ基準で高度を判断するようにするため

このような観点で見ると、機体が低い高度にいる時は地面が近いので、地面からの高さが気になります。

なのでQNHでの補正が必要になります。

飛行チャートには障害物や地形の高さが海抜高度で表示されているので、QNHの高度補正で判断ができるのです。

一方で、周辺にいる機体が同じ基準で高度補正をすることも必要ですから、ある高度以下で同じ空港を離着陸しようとする機体は、みなその空港での気圧補正値を使用します。

ではある高度以上の場合はどうでしょう?

高度が高い場合は基本的に地上の障害物からは垂直距離があるので、高度は必ずしも海面からの高度を指している必要はありません。

また、高い高度にいる時は巡航中なので、速度も速く、気圧が違うエリアをいくつもまたいで飛行することになります。

その時にいちいちその地点の海抜高度に合うようにQNHを使うのは面倒です。

最低限、みなが同じ高度補正値を使っていれば目的は果たせるわけですから、高い高度を飛ぶ時はQNE、すなわちいつでも29.92inHgの補正を使用します。

QNEとQNHの使い分けイメージ

QNHとQNEの切り替え高度は国によって異なりますが、日本では14,000ftを境に切り替えることになっています。

・地上の障害物との距離が重要な低高度はQNH

・地上の障害物を気にする必要のない高高度はQNE

電波高度計で測る

さて、気圧高度計のほかに飛行機で高度を測っている計器は何があるでしょうか?

その1つは電波高度計です。

電波高度計の測定原理

電波高度計の測定原理も単純です。

機体の下面に電波を発信する送信アンテナと、もう1つ受信用のアンテナがついています。

送信アンテナから電波を飛ばすと、電波は地上で跳ね返り受信用のアンテナにキャッチされます。

この時に掛かった時間を計測することで高度を判定するのです。

この原理からも分かるように、電波高度計は真下の地点からの高度(対地高度)を表示します。

電波高度計の測定原理イメージ

電波高度計はいつ使う?

電波高度計は地面からの距離が遠すぎると電波が届かないので低高度でしか使えません。

一般的に2,500ft(750m)以下でしか計器に表示されないのが普通です。

従って飛行機が低高度を飛ぶ時に使われるのですが、一番の使い道は視界が悪い時の着陸時です。

基本的に飛行機は、着陸するためには最終的に滑走路を視認して降りなければなりません。

天気が悪く、視界が悪い場合は滑走路を視認するためできるだけ低い高度まで降下を続けたいのですが、あまり降下しすぎてしまうと地面への衝突の可能性があります。

この時、気圧高度計ではなく、電波高度計の値を使うと気圧高度計を使った時よりも低高度まで降下することが許されるのです。

なぜなら、電波高度計は正に真下の地面との距離がどのぐらいあるかを表示する上で、気圧高度計よりも精度が高いからです。

着陸時の降下以外の用途では、飛行機の対地接近警報にも電波高度計が使われています。

真下の地面に対して接近率が高くなると「Terrain! Terrain!」という警報がコックピット内で鳴るのですが、この接近率のセンサーにも電波高度計が使われています。

電波高度計の使い道

① 着陸時に降下できる限界高度の判断

② 対地接近警報器の接近率センサーとして

GPSで高度を測る

高度測定器の最後はGPSになりますが、これは現在実用化が進んでいる最中で、次世代の高度測定機器と思ってください。

GPS高度の測定原理

GPSと言うと、一般的なイメージではカーナビのように二次元の地図上に自分の位置を表示する機能を思い浮かべますが、実際にGPSが計測している座標は二次元座標ではなく、三次元座標です。

GPSで位置を把握するためには、最低4つのGPS衛星から測位されていなければなりません。

4つの内3つでX、Y、Zの三次元座標の計算、後の1つを測位時間の時間補正に使うことで自分の居場所を割り出すことができます。

GPS高度を使うのはいつ?

GPS高度の使用はまだ発展途上ですが、現在実用化されているGPS高度の使い方としては、着陸時の高度計としてです。

飛行機を精度高く、一定の降下率を維持しながら正確に滑走路に向かって着陸させるには、現在ILSと呼ばれる装置が使われています。

ILSは平面方向に滑走路延長線を示す電波と、垂直方向に地面からの降下角を示す電波を合わせて飛行機を誘導する装置です。

しかしこのILS、例えば滑走路が複数ある空港では、電波を発生させる装置を滑走路ごとに設置しなければならなかったり、施設維持に面倒な部分があるのです。

これに代わる手段として、平面方向の経路も垂直方向の降下角も、GPSの位置情報と高度情報を用いて飛行機が自ら誘導されるようなシステムが実用化され始めています。

GPS高度の問題点

そんな次世代の測定機器であるGPSですが、現在のところはまだ課題があります。

それは精度の問題です。

GPSの精度は随分向上してきたとは言え、着陸時の高度計として使えるようになるためには誤差数メートルというような高い精度が要求されます。

これだけの精度を出すためには4つのGPS衛星で測位されるだけでは不十分であり、もう1つ別の精度補正用の人工衛星が必要であったり、地上側にGPS信号を補正するための施設が必要だったりします。

また飛行機側も、それら補正電波を処理できるだけの機能を持ったGPS受信機を搭載した機材が少なく、これから普及していくことが見込まれています。

繰り返しになりますが、GPSは近い将来の新しい高度計なのです。

・GPSは近い将来の高度測定機器でまだ発展途上

・現在は着陸時に使う高度計として実用化が始まった段階

まとめ

いかがでしたでしょうか?

高度1つ測るにもいろいろな方法があり、興味深いと思っていただければ幸いです。

以下にまとめをしておきます。

要点まとめ

・高度を測る方法は3つある(気圧高度計、電波高度計、GPS)

・気圧高度計は気圧と高度の関係を補正する必要がある(QNH、QNE)

・電波高度計は着陸時の降下限界高度を下げることができ、対地接近警報にも使われる

・GPSは高度も測っているが、本格的な実用化はこれから

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