こんにちは。ころすけです。
みなさんは飛行機にとって重心位置はとても大事って聞いたことがありますか?
飛行機は空を飛ぶわけですから、当然地面が機体を支えてくれるわけではありません。
空中でバランスを取って飛行するためには、機体全体の重心位置がどこにあるのか、常に意識しないといけないのです。
今回はそんな飛行機の重心位置についての雑学を紹介します。
飛行機は重量のバランスがとっても大事!
飛行機の重心位置の話をする時、重心とは基本的には前後方向のバランスのことを指しています。
つまり、機体全体の重量が前寄りか後ろ寄りかということです。
もちろん、飛行機が飛ぶためには左右方向のバランスも大切です。
ですが飛行機に乗せるお客さんや貨物の重さは全て、左右方向では機体のほぼ真ん中の位置にかかっています。
飛行機は形状も左右対称であるため、左右方向のバランスは特に気にしなくとも保たれているのです。
一方で前後方向のバランスはお客さんの数であったり、貨物を搭載する位置によって大きく変化します。
ですから前後方向のバランスを考えるというわけです。
重心が前すぎると機首上げが困難になる!失速速度も速くなる。
では、もしもこの重心位置がものすごく前寄りになっていたらどうなるでしょうか?
重心位置が前に寄ることで起こる不都合は1つではありませんが、代表的なものとして「機首上げ操作が困難になる」が挙げられます。
飛行機は離陸する時、十分な速度が得られたらゆっくりと機首を上げて上昇姿勢に移っていきます。
この時に重心が前に寄っていたらどうなるでしょう?
重心が前にあると、機首を持ち上げるのに大きな力が必要になることが想像できるかと思います。
離陸で機首が上がらなければ、なかなか浮揚せずに最悪の場合は大きな事故につながってしまいます。
また、パイロットは着陸する寸前も機首を少しだけ持ち上げるように飛行機を操作しています。
こうすることで飛行機の降下率をゆるやかにすることができ、着陸時の衝撃を少なくすることができるからです。
重心位置が前寄りで機首上げが困難になると、降下率を抑えることができずに衝撃の強い着陸になってしまう可能性があるのです。
さらに飛行機は安定して飛行している際、あまり速度を落としすぎると失速と呼ばれる状態に入ってしまいます。
失速状態に入ると翼の揚力が発生しなくなり、その瞬間に飛行機は姿勢を乱して自由落下状態になってしまうのです。
実は重心が前寄りになると、失速に入る速度が速くなってしまうのです。
このように離着陸時だけでなく、飛行中の安定性にも影響が出てくるのです。
重心が後ろに寄りすぎると尻もちをつきやすくなる!重心が後ろでも安定性が悪い。
一方で重心が後ろに寄り過ぎている場合はどうでしょう?
今度は反対に、ちょっとした操作で機首が簡単に上がるようになってしまいます。
先ほど、離陸の時も着陸の時も飛行機の機首を上げる操作をすると言いましたが、今度は機首を上げすぎて場合によっては尻もちをつく形になってしまうおそれがあるのです。
また、飛行機は機首が上がりすぎると失速するという特性を持っているのですが、このように重心が後ろ過ぎる場合も失速に対する懸念が高くなります。
すなわち、重心が前過ぎても後ろ過ぎても飛行中の安定性が悪いのです。
飛行機に許されている重心位置の幅はどれぐらい?なんと○○mしかありません!
では、具体的に飛行機の重心位置はどのあたりになければならないのでしょうか?
まずは下の図を見てください。
図にあるように飛行機にはお客さんや貨物の重さがかかるわけですが、これらは日によって重さが異なりますし、配置なども異なってきます。
また、飛行するために必要な燃料が翼の中のタンクに搭載されるわけですが、こちらも日によって搭載量が違うので重心位置に多少なりとも影響してきます。
このように毎飛行ごとに重心位置は大きく変化してしまいそうなわけですが、例としてB777-300で許容されている重心位置の幅を図示すると以下のとおりです。
なんと、ちょうど翼のある機体中央付近のたった2.6mほどの幅しか認められていないのです!
どれだけの数のお客さんが乗っても、どれだけの重さの貨物を搭載することになっても、この2.6mの幅の中に必ず重心位置が収まるようにしないといけないのです。
このように非常にシビアな調整が必要になるので、航空会社ではロードコントローラーという重心位置管理専門の担当を配置している場合がほとんどです。
ロードコントローラーはコンピューターを使って、毎飛行ごと貨物の搭載位置やお客さんの座席状況などを確認し、重心位置が間違いなく許容範囲に収まるように調整しているのです。
ロードコントローラーはパイロットや整備士のように国家資格ではありませんが、航空会社が独自に社内資格として定めていて、必要な訓練を受けなければ担うことができない役割になっているのです。
終わりに
いかがでしたか?
ひょっとしたら飛行機の運航で重心位置管理が重要であることは、一般に結構知られている事実かもしれません。
ですが、その許される重心位置がわずか2.6mの範囲であることは、なかなか知られていない事実だったのではないでしょうか?
僕自身、実は今回初めて許容される重心位置の範囲を計算してみたのですが、想像していた以上に許容幅が狭いものだと驚きました。
空港で飛行機を見る時に、どのあたりに重心位置があるのか想像しながら機体を眺めてみると、また違った飛行機の一面が見えてくるかもしれませんよ?
以上!