航空管制と言えば何を思い浮かべますか?
きっと多くの方が管制塔、いわゆるタワーを思い浮かべるのではないでしょうか?
そしてタワーの中で飛行機を見ながら離着陸の指示を出しているのが管制官です。
ではもし、タワーがない空港があると聞いたらどうですか?
さらにタワーどころか管制官もいない空港があると聞いたら?
今回は空港の種類について紹介します。
管制塔がない空港、管制官のいない空港がある
エアラインの旅客機が離着陸するような空港では、大抵の場合管制塔があって、その中では航空管制官が管制業務を行っています。
旅客機の運航は特別な事情がない限り、常に航空管制官に監視され、管制官の指示や許可を得ながら飛ぶ方式が取られています。
これを専門的な用語で言うと、計器飛行方式と言います。
とりわけ空港周辺の飛行や空港内の地上走行では、多数の飛行機が密集するので管制官がタイミング見計らって離陸、着陸の許可を飛行機に対して出しています。
この離着陸の監視を行っている場所が管制塔であり、中で管制業務を行っているのは「タワー」というコールサイン(無線での呼び出し呼称)の航空管制官です。
ですが、実は運航便数の規模などによっては管制塔がなく、中で働く管制官がいない空港があったりするのです。
具体的には、空港は離着陸のための航空管制の種類に従って以下の3つに分類されます
① タワー空港
② レディオ空港
③ リモート空港
この3種類の空港がそれぞれどのように違うのか見ていきましょう。
空港の種類は3種類
タワー空港
まず始めがタワー空港で、いわゆる「空港」の中でもっともイメージが湧くであろう空港です。
空港には管制塔があって、管制塔の中では航空管制官が離着陸する飛行機を監視しています。
日本の空港でタワー空港に分類される例が以下です。
・羽田空港 ・成田空港
・新千歳空港 ・函館空港
・秋田空港 ・仙台空港
・中部国際空港 ・伊丹空港
・関西国際空港 ・神戸空港
・高松空港 ・高知空港
・広島空港 ・福岡空港
・熊本空港 ・鹿児島空港
・那覇空港 などなど
主要な空港はもちろん、多くの空港がタワー空港となっています。
ところで、この「タワー」という語なんですが、実はこれは「管制塔」を意味しているわけではありません。
航空無線にはコールサインという呼び出し呼称があって、航空管制官は離着陸や巡航などフェーズに応じて担当する管制官が異なり、それぞれ異なったコールサインで呼ばれます。
このうち、離着陸を担当する管制官のコールサインが「タワー」なのです。
タワーの管制官は管制塔から目視で飛行機を監視し、離着陸する飛行機に対して離着陸の許可を出しています。
航空管制とのやり取りの例を挙げてみましょう。
離陸の時
「Japan Air XX, Wind 340° at 10, Runway 34 Cleared for Takeoff」
着陸の時
「All Nippon XX, Runway 16 Clear to Land, Wind 100° at 7 」
この「Clear」という語が「~を許可する」の意味になります。
例文のとおり、タワーの管制官は飛行機に対して離着陸の許可を管制塔から出しているのです。
画像は熊本空港ですが、ターミナルビルのすぐそばに管制官のいるタワーが建っています。↓

タワー空港は管制塔があって、航空管制官が離着陸の許可を出している
レディオ空港
次はレディオ空港ですが、聞きなれない言葉ではないでしょうか?
レディオ空港にも管制塔があって、中から離着陸する飛行機の監視がなされています。
ところが、このレディオ空港の管制塔にいる人ですが、実は航空管制官ではないんです。
レディオ空港にいるのは「航空管制運航情報官」と言って、航空管制官とは資格が違うのです。
この航空管制運航情報官も無線を使って飛行機とやり取りを行うのですが、その際のコールサインは「レディオ」となっています。
では「タワー」と「レディオ」では何が違うのでしょうか?
最大の違いは
飛行機に対して許可や指示が出せるのか、情報提供しかできないのか
になります。
具体的なレディオ空港での離着陸時の無線のやり取りを見てみましょう。
Japan Air XX, Runway 30, Runway is Clear, Wind 280° at 5
先ほどのタワーとのやり取りとは少し違いますね。
タワーでのClearは許可するの意味だったのですが、ここでの「Runway is Clear」というのは「滑走路上に障害物がないですよ」の意味になります。
2つのニュアンスを比べてどうでしょう?
レディオ空港では状況を単に報告しているだけであって、良いとかダメとか指示的な言葉になっていないんですね。
航空管制運航情報官は航空管制官と違って飛行機に対して指示や許可をすることができない資格なのです。
本当に離着陸しても問題がないかどうかはパイロット自身が判断します。
日本の空港でレディオ空港の例は以下のとおりです。
・稚内空港 ・山形空港
・福島空港 ・松本空港
・静岡空港 ・出雲空港
・佐賀空港 ・奄美空港 など
比較的便数が少ない空港がレディオ空港になっているのが分かります。
このような空港では管制官を配置して飛行機に指示を与えなくとも、運航上支障がないというわけです。
下の画像は佐賀空港の管制塔ですが、管制塔の中にいるの航空管制運航情報官でコールサインは「レディオ」です。↓

レディオ空港は管制塔があるけれど、航空管制官ではなく航空管制運航情報官が離着陸の情報提供を行っている
リモート空港
最後はリモート空港です。
このリモート空港はなんと基本的に管制塔がなく、離着陸する飛行機を現地で監視している人はいません。
リモートの名のとおり、近くの大規模空港の専用センターで監視モニターを使った遠隔監視が行われているのです。
この専用センターは「フライトサービスセンター」といって、新千歳、仙台、羽田、中部、伊丹、福岡、鹿児島の7つの空港にあり、それぞれ管轄のエリアが異なります。
このフライトサービスセンターで遠隔監視しているのは航空管制運航情報官で、現地の飛行機との無線交信もフライトサービスセンターから行っています。
この時のコールサインは「リモート」です。
例によって無線のやり取りを見てみましょう。
All Nippon XX, Wind 330° at 5, Obstruction not Reported on Runway
「滑走路内に離着陸に支障があるような障害物は報告されていません」の意味になります。
リモートは航空管制運航情報官なので、やはり飛行機に対して指示や許可などを出すことはできません。
リモート空港の例は以下になります。
・紋別空港 ・中標津空港
・大館能代空港 ・庄内空港
・八丈島空港 ・鳥取空港
・対馬空港 ・種子島空港
・久米島空港 ・与那国空港 など
1日数便の空港であったり、離島の空港が多いのが分かります。
このような空港では、遠隔監視で十分に運航することが可能なのです。
下の画像は大館能代空港ですが、周辺にタワーらしき建物は見当たりません。↓



リモート空港は管制塔がなく、航空管制運航情報官が遠隔地から離着陸の情報提供を行っている
航空管制業務と飛行情報業務
最後に豆知識ですが、航空管制官は飛行機に対して指示や許可ができ、航空管制運航情報官は情報提供しかできないと言いました。
これについてもう少し詳しく説明すると、実はそれぞれの従事する業務も定義の上で明確に分かれているのです。
航空管制官の従事する業務は「航空管制業務」と言い、飛行機に対して指示や許可を出す仕事です。
一方、航空管制運航情報官の業務は「飛行情報業務」と言い、飛行機に対して情報提供をする業務なのです。
いかがでしたか?
以上で3種類の空港の説明を終わりますが、以下にまとめをしておきます。
・空港には3種類ある(タワー空港、レディオ空港、リモート空港)
・タワー空港は管制塔があって航空管制官が離着陸の指示や許可を出している
・タワー空港は大規模空港を含む
・レディオ空港は管制塔があって航空管制運航情報官が離着陸の情報提供を行っている
・レディオ空港は比較的便数の少ない空港が多い
・リモート空港は管制塔がなく誰もいないが、遠隔地で航空管制運航情報官が離着陸の情報提供を行っている
・リモート空港は1日数便の空港や離島の空港が多い
以上!