こんにちは。ころすけです。
みなさんは展望デッキで飛行機を見る際、飛行機のどこに注目するでしょうか?
飛行機の顔に注目する人もいれば、翼にぶら下がっているエンジンに注目する人もいるかもしれません。
そんな中で、「飛行機の胴体の上についているトゲトゲの突起物が気になる」という人もきっといるのではないでしょうか?
実はこれらの突起物は、飛行機が搭載している様々な無線設備のアンテナなのですが、何のアンテナなのかちょっと知りたいと思いませんか?
今回は飛行機のアンテナについての雑学を紹介します。
飛行機の上に付いている突起物は様々な無線機器のアンテナたち!
まずは下の画像を見てください。
飛行機のアンテナと言ってもその形や大きさは様々なのですが、下の画像では少なくとも矢印で示した箇所にアンテナが付いています。
これらはアンテナなので、何かしらの無線機器の電波を受信したり送信したりしているわけですが、その目的はそれぞれ異なっています。
細かいところまで踏み込んでいくと機種によって機体システムが異なりますから、アンテナの形状や数が機種ごとに異なる無線機器も当然あります。
ですが、無線機器の中にはアンテナの形や取り付け位置などがどの機種でも似通っているものがあって、ポイントさえ掴めば割と簡単に見分けることができるのです。
今回はそのような見分けが付きやすいアンテナについて、特徴や役割などを紹介していこうと思います。
飛行機のアンテナを見分けよう!
1. 四角く大きなお弁当箱のようなアンテナはWiFi用
以前から飛行機を見る機会が多い人であれば、最近の飛行機ではやたらと大きなお弁当箱のようなケースが胴体の上に載っている姿に違和感を感じているのではないでしょうか?
実はこれ、機内でのWiFiサービス用に改修して取り付けられたアンテナなんですね。
少し前にJALが国内線でのWiFiサービスを全面的に無料にして以来、ANAも追随して無料WiFiが拡充されたこともあり、今や胴体の上にWiFiアンテナを載せている飛行機はさほど珍しくなくなってきています。
少し低い角度から見ると、ポコッと出来物のように取り付けられたアンテナケースが否応にも目に留まりますね。
当然のことながらWiFiサービスを提供していないLCCのような機材では、WiFiアンテナらしきものは見えません。↓
ちょっと豆知識ですが、WiFiアンテナは他の突起物と比較してもかなり大きいため、取り付けると飛行時の抵抗が若干増してしまうそうです。
抵抗が増すということは燃料の効率がそれだけ悪くなるということなのですが、それを差し引いても旅客サービスに力を入れた方が利益になると、エアライン各社が見込んでいることの現れでもあるんですね。
2. 一番大きな三角形のアンテナは管制官との無線交信用
続いて紹介するのが、飛行機を横から見た時にWiFiアンテナの次に目立つであろう三角形のやや大きめのアンテナです。
下の画像のように三角形の突起を見たことはないでしょうか?
このアンテナは管制官との交信に使う無線機のアンテナで、VHFアンテナと呼ばれています。
VHFとはVery High Frequencyの略で、飛行機の無線交信ではこのVHFと呼ばれる周波数帯を使って無線通話のやり取りをしています。
なので一般にVHF無線機と言うと、飛行機の世界では管制官との交信用無線機のことを指すのです。
ところで、上の画像でも分かるようにVHFアンテナは胴体の上に2本ついています。
これはどういうことかと言うと、飛行機が搭載しているVHF無線機は1つではなく、仮に1つの無線機が故障しても問題がないように複数のVHF無線機を搭載しているからなのです。
搭載しているVHF無線機の数だけアンテナが付いているというわけですね。
さらに言うと、どの機種でもVHF無線機は通常3式搭載されています。
と言うことは3本目のアンテナがあるはずなのですが、気が付いたでしょうか?
正解は胴体の下側です。
矢印で示したように胴体の下側にも同じような三角形のアンテナが出ていることが分かりますね。
通常、3つあるVHF無線機の内の1つは管制との交信でメインに使い、もう1つを遭難無線と社内無線用として使っています。
さらに3つ目のVHF無線機はデータリンク(メール機能のようなもの)用として、管制や社内の運航管理基地とテキストメッセージを送受信するために使用しているのです。
機種によっては下側にアンテナが2本あるものもありますので、見る角度が良ければ覗いてみてはいかがでしょうか?
↓B737では胴体の上側にVHFアンテナが1本、下側に2本付いていることが分かります。
3. 垂直尾翼の付け根付近にある、やや大きめのアンテナは遭難無線用
続いては大抵胴体の一番後方、垂直尾翼の付け根に近いところにあるアンテナです。
このアンテナはELT(Emergency Locator Transmitter)と言って、飛行機が遭難した際に救難周波数の電波を発する無線機器のアンテナです。
ELTは万が一にも機体が墜落した際には、その衝撃で電波の発信がONになるようにできていますし、もちろんマニュアルで作動させることも可能です。
いずれにせよ出番がないことを祈りたい装置ですが、飛行機にはこのような緊急用の無線機器も装備されているのです。
4. 黒くて大きな2つのホクロは衰退中の航法装置用。
飛行機を上から見下ろした時、胴体の中央あたりに黒いホクロのようなものを見たことはないでしょうか?
これはADF(Automatic Direction Finder)と言って、地上に設置されたNDB(Non Directional Radio Beacon)と呼ばれる無線施設から発せられた電波の方向を探知する装置のアンテナです。
すなわち、飛行機の航法装置用のアンテナです。
ADFも通常2式装備していますから、アンテナも並んで2つ付いているというわけです。
ところがこのADFですが、実はNDBの施設自体がかなり古い時代のもので、現在ではNDBを頼りに飛行機の航法を行うことはほとんどなくなっています。
これまでは航空法上の制限で、ほとんど使用しないにも関わらず飛行機に装備されているのが普通でしたが、法律が緩和されてADFをそもそも搭載していない機材もちらほらあるようです。
↓ADFアンテナのあるB787(左)とADFアンテナのないB787(右)
機種によっては白色のカバーの場合もあります。
↓画像はエアバスA321(左)とE170(右)。
いずれにせよ、ADF装備機は今後なくなっていくと予想されますので、写真などに収めたい方は今のうちに撮っておくと良いかもしれませんね。
5. そのほか航法に使うアンテナいろいろ
ここまでで、見た目で分かりやすく、かつどの機種でもほとんど形状や様子が変わらないアンテナを紹介しました。
実は飛行機に付いているアンテナはまだまだあるのですが、これ以上はアンテナが小さかったり、機種によって異なっていたりと紹介することが難しいのです。
なのでここからはおまけとして、飛行機の航法に使う無線機器のアンテナ例をいくつか紹介したいと思います。
まずはB787の先頭部付近のアンテナです。↓
左側に小さく2つ並んで見えるポチも実はアンテナで、こちらはGPS装置のアンテナになります。
GPSも大抵の飛行機は2式搭載していますから、アンテナも2つなのです。
ちなみにGPSアンテナの右横にある丸い突起は赤く光る衝突防止灯ですね。
さらにもう少し先頭部分に近づくと、TCAS / トランスポンダーのアンテナがあります。
TCAS(Traffic Collision Alerting System)は飛行機同士の衝突防止装置で、飛行機同士が互いに電波をやり取りすることで接近を回避する装置です。
トランスポンダーは管制レーダーに便名や飛行高度情報を送るための装置で、実はTCASとトランスポンダーは同じ周波数を使用しているので、B787では1つのアンテナにまとめられているようです。
一方でこちらはB777の先頭部付近の様子です。↓
B787と同じようにGPSのアンテナが付いていますが、こちらは縦に並んでいます。
さらにTCASとトランスポンダーのアンテナも、B777ではそれぞれ区別して取り付けられています。
このように機種によって細かい部分が異なるものもありますし、小さすぎて「えっ?そこにもアンテナが!?」というものもあるのです。
終わりに
いかがでしたか?
今回の内容はどちらかと言うと飛行機のマニアックな一面だったかと思いますが、単に飛行機を眺めるだけであっても、飛行機の新たな面白さや発見に繋がると感じていただければと嬉しいです。
今後も飛行機のちょっとした豆知識を紹介していきますので、興味がありましたら是非そちらも覗いてみてください。
以上!