生き方・働き方のヒント

日本の生産性が低い最大の理由。こんな仕組みじゃ当たり前です。

日本の労働生産性は世界的に見てかなり低いと言われています。

実際に働く身分で考えても、こんな状態で生産性が高いと言われれば疑問に思ってしまうぐらい「その通りだな」と感じるぐらいです。

昨今、生産性の低さが問題視され始め、働き方改革だのなんだの様々な呼びかけが行われています。

けれども、そもそも生産性が低いのはなぜなのか、その根本原因を見極めないことには何をやっても無駄に終わります。

日本の生産性が低い最大の原因を追究します。

最大の理由は個人のスキルを向上させることに重きを置いていないから

そもそも生産性を上げる方法は具体的に何があるでしょうか?

簡単に分類すると、方法は二つあると思います。

1.  人同士の連携の仕方を工夫して業務効率を上げる。

2.  個人の作業品質、作業速度を高めて業務効率を上げる。

1の例では、例えば情報共有を適切に行うとか、業務の意思決定プロセスを簡素化するとか、いわゆる「仕事のやり方」に関する改善が該当します。

一方で2は、個人のPC操作を速くするとか、業務に関する知識・技量を増やして問題解決速度を上げるとか、「個人の能力」に関する改善が該当します。

どちらも改善できれば生産性を上げる効果があると思いますが、より重視したいのは圧倒的に2の方なんですね。

それは以下の理由によります。

・やり方の改善は効果測定が難しい

・やり方のある面の改善は別のある面の改悪に繋がる場合がある

・個人スキルの改善は効果が明確

・個人スキルの改善が他の邪魔になることはない

やり方の改善は個人の好みで良くなったと感じる人もいれば、そうでない人もいるかもしれません。

また、例えば情報共有を適切にしようと改善案を立てたところ、今度は情報量が多くて処理しきれなくなったなんて事例もよくある話です。

一方で個人スキルの方は、向上させることによって発生するデメリットが見当たりません。

基本的にプラスの効果しかないんですね。

にも関わらず、多くの会社で取り組まれている生産性向上対策は、この「やり方」に関するものばかりです。

「個人の能力」をいかに高めるかに重きを置いている会社は少ないように感じます。

スポーツで考えると納得感があるかもしれません。

チームスポーツで勝とうとする場合、戦術の勉強も必要ですけど、勝とうと思ったらまず練習するのが第一ですよね。

個人個人の技量が高くなければ、いくら素晴らしい戦術を実践したところで強豪には勝てません。

また、勝てる戦術が何なのか、答えを出すのが難しいのも同じですね。

つまり、生産性を確実に上げる方法としては、いかに個人がスキルアップできる環境を作るかが重要なのです。

もしくは、いかに個人をスキルアップに仕向ける環境を作るかと考えてもいいと思います。

要点まとめ

確実に生産性を上げる方法 = いかに個人の能力向上を促す環境を作れるか

なぜ個人のスキルが向上しないのか?4つの問題

では日本の会社で個人の能力向上を促す環境が整っているか?と言えば残念ながらそうとは言えません。

むしろ、個人のスキル向上を阻む構造が根付いているように思われます。

具体的には以下の4つの点で構造上、制度上の問題を抱えていると思います。

1. 限りなくクビになりにくい雇用制度

日本では一度正社員として雇用されてしまえば、よほどの理由がない限りその人をクビにすることはできません。

つまり、会社が存続する限りはある程度の生活が保障されることになりますが、これは個人の能力向上の観点では言うまでもなく悪い方に働きます

それなりに仕事をしていれば生活が担保できる状況で、技量を磨いて上を目指そうとする人がどれだけいるでしょうか?

いわゆる共産主義的な側面が強い状況が生まれているのです。

もちろん、中には自主的な向上心を持っている人もいるでしょう。

しかし、会社全体の生産性を考える場合は、平均的な個人のスキルをいかに高めるかが重要になります。

共産主義的な社会では競争原理が働きづらいことは、過去の歴史が証明していますね。

現実の日本の社会でも窓際族とか社内ニート、ぶら下がり社員なんて言葉が生まれるぐらいですから状況は明白です。

雇用が守られることを否定しているわけではありませんが、生産性を上げることが本当に必要と考えるのであれば、部分的な制度変更はする必要があると言えます。

問題点まとめ

過剰に雇用が保護された環境では、技量向上が疎かになる人が多くなる

2. 時間に価値をおきすぎる働き方

日本の会社では仕事の成果よりも仕事に費やした時間の方が重視されてしまう傾向があります。

上司が帰らないと帰りづらい

むしろ残業した方が手取りがよい

このような状況では、いかに成果を出すかよりも、どのように会社での時間を過ごすかが重要になってしまいます

これはスキル向上の面でもあまり望ましくありません。

なぜなら、自分のスキルを向上させる際にどこで時間を費やしたかに焦点が当たってしまうからです。

普通、自身のスキルを本気で向上させようとすれば、帰宅後や休日のプライベートの時間もある程度使って取り組む必要があります。

けれども、会社で過ごす時間に重きが置かれてしまうと、必然的にプライベートの時間を業務のための勉強に割く意味が薄れてしまいます

プライベートは会社での時間ではないからです。

こうなるとなかなか個人の技量は向上しません。

実際、業務時間以外で業務に関係する自主的な課題に取り組む人は少ないように思われます。

日本の社会人は先進国一勉強をしていないとも言われているぐらいですが、その原因の一つは会社での時間に重きを置く働き方にあると言えるのです。

問題点まとめ

会社での時間が重視されると自宅学習を疎かにする人が増える

3. 定期的に素人を大量獲得する新卒採用

最近ではいくらか事情は変わってきているようですが、依然として日本の就職活動では新卒の時の結果が大きく影響してきます。

基本的には新卒で就職を逃した場合、後からいくら努力をしてもやり直すことは難しいと認識している人が多いのが実態です。

また、新卒一括採用では運の要素も絡んできます。

たまたま自分が就職活動した時期が売り手市場であれば選択肢が広がる一方で、運悪く就職氷河期に当たってしまった場合は辛い思いをすることになるのです。

このような風潮が世の中に広がっていると、「働くとは巡り合わせの要素が強いもの」との意識が根付いてしまいます。

これでは自分自身で努力して自身の価値を高め、道を切り開いていく志向が生まれにくくなってしまいます。

また、新卒採用は専門スキルを持っていない素人として雇うことがほとんどです。

これは、必要なスキルをつける時間は入社後に会社の中で与えられるとの意識に繋がりやすくなります

このように新卒一括採用が根強い環境では、どうしても働くことに対して運任せ、受け身姿勢のマインドが育ちやすくなってしまうのです。

問題点まとめ

新卒一括採用では、仕事に対して運任せ、受け身の姿勢が育ちやすい

4. 総合職(ジェネラリスト)育成志向の限界

日本の採用スタイルではスペシャリストよりもジェネラリストの方が重要視される傾向があります。

一般的に大卒以上で入社する場合、大半の人が総合職として入社します。

また、入社後もジョブローテーションと称して専門性が確定せず、いくつもの部署を経験させられる場合も非常に多いのが特徴です。

総合職は「仕事は誰でもどんな職種でも同様にこなすことができる」が前提の職種の在り方です。

きちんと考えれば分かりそうなものですが、実はこれはかなり過大な要求を働く側に課していることになります。

特に最近の社会では以下の点でなおさらです。

・グローバル化に伴い事業範囲が広くなってきている

・技術の革新により、使いこなすべきツールの数と難易度が上がってきている

・ツールの性能向上により、高品質のアウトプットが求められるようになった

総合職としてあらゆる部署に配属される場合、その度に広い事業領域を把握し、新しいツールを使って業務に取り組まなければならないのですから、その難易度はどんどん上がってきているのです。

一人の人間の能力には限界がありますから、こうなると技量を高めようにも、一つ一つの技量が中途半端なまま次の部署への異動というケースが増えてきます

もちろん、ジェネラリストの育成自体を否定しているわけではありません。

しかし、ジェネラリストは言ってみればファイブツールプレイヤー、万能人間なわけで、育てるのであれば一握りの選ばれた人間に絞るべきだと思います。

総合職=ジェネラリストの難易度が上がっている今の社会で、大半の新卒が総合職として活躍できるという理屈は限界がきていると思うのです。

その結果としては、中途半端に技量を持った人材が多数生まれる結果となり、全体的なスキル向上には繋がらなくなってしまうのです。

問題点まとめ

総合職の難易度は上がっており、中途半端な技量レベルの人材が多数生まれかねない

人手不足と言うよりスキル不足

労働生産性の向上が叫ばれる最大の背景に人手不足という問題があります。

人手が不足しているから生産性を高めないと企業の運営能力を維持できないからです。

ですが、一部の単純労働現場を除いて、本当に足りていないのは人手ではなく圧倒的にスキルです。

より正確に言えば、「スキルを持った人材が足りていない」のです。

実際の会社を見ていると、例えば新卒社員に即戦力であるかのように仕事を放り投げたり、一人の社員に作業を集中させてしまったりする現実があります。

スキルを持った人材がいない、または限られているため、消去法による人選や業務量の偏りが発生してしまっているんですね。

このような実態を考えると、やはり「やり方」に重きをおいた改善施策よりは「個人の能力」に重きをおいた施策を本気で考えるべきだと思います。

問題点が分かれば解決しようがある

まず第一に重要なのは、問題点を正確に見極めることです。

おそらく、「個人の能力を上げるって言ってもそんな簡単にできない」って意見の人もいるかと思います。

けれども、できるできないの問題はその次であって、まずは問題点を見極めて、その問題点に焦点を当てた議論を活発化させることが重要です。

長所なのか短所なのか、日本人は周りの空気に追随する志向が非常に強い国民です。

だから「個人の能力を上げることが何より重要だ!」という風潮が世の中に広まれば、追随してそれが多数派の意見になってくる可能性は考えられます。

国全体の問題として考えた場合は非常に時間のかかる問題です。

しかし会社レベル、自分の所属する部署レベルであれば問題点を浸透させることは可能です。

まとめ

・日本の生産性が悪いのは個人のスキル向上に取り組んでいないから

・日本の会社の構造や制度は個人のスキルが向上しにくい環境である

・まずは問題点を見極めて発信し、指摘が世の中の多数派となるようにすべき

 

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