こんにちは。ころすけです。
METARというものをご存知でしょうか?
METARは定時飛行場実況気象と言って、空港ごとに現在の周辺の気象状況を航空関係者に知らせる電文通報です。
本来的な用途としては航空関係者に対する情報ですが、最近ではインターネットで簡単に情報入手できるとあって、一般の方でもその存在を知っている方が増えています。
半面、METARは気象情報が数値やアルファベットを使ったコードで通報されるため、読み方の知識がないと内容が全く分からないものです。
今回はMETARの基本的な読み方と、初心者におすすめのMETAR入手先を紹介したいと思います。
METARの読み方
まずは例題として、ある日の新千歳空港で報じられたMETARを見てみましょう。
RJCC 191430Z 26005KT 9999 -SHSN FEW010 BKN050 M12/M15 Q1021 RMK 1ST010 5CU050 A3018
ご覧の通り数字とアルファベットの羅列なので、知識がなければ全く意味が分からないと思います。
ポイントとしては、基本的にスペースで区切られたひと塊で、1つの情報を表しているということです。
順を追って見ていきましょう。
1. 対象空港の地点略号
最初のアルファベット4文字は通報の対象空港を表していて、「RJCC」は新千歳空港を表しています。
この4レターコードは通称、ICAOコードと言って、航空業界では世界中の全ての空港が4文字のアルファベットで表されます。
日本の空港は「RJ(沖縄・南西諸島以外の空港)」もしくは「RO(沖縄・南西諸島の空港)」で始まるICAOコードが割り当てられています。
代表的な空港のICAOコードを以下に紹介しますので、参考にしてみてください。
・RJCC:新千歳空港
・RJSS:仙台空港
・RJAA:成田空港
・RJTT:羽田空港
・RJGG:中部国際空港
・RJBB:関西国際空港
・RJOO:大阪伊丹空港
・RJFF:福岡空港
・RJFK:鹿児島空港
・ROAH:那覇空港
2. 観測日時
続いての「191430Z」は観測日時を表しています。
航空業界では、末尾にZが付く時刻は世界標準時であることを意味していて、この場合は世界標準時の「19日14時30分」の意味になります。(月は省略されます。この例では1月でした。)
さらに日本は世界標準時から9時間進んでいますから、日本時間で言うと「19日23時30分」に発表されたMETARであると分かるのです。
なお、METARは新千歳や羽田、福岡などの大空港では30分毎、地方の空港では1時間ごとに情報が新しいものに更新されます。
3. 風向・風速
「26005KT」は風向・風速を表していて、260度の方向から5ノットの風が吹いていると解読します。
1ノット=約0.5m/sですから、例えば20ノットですと、いわゆる風速で10メートルの風が吹いていることになります。
また、風向の部分に数値が入らずに”VRB”と表記されることがあります。
これはVariableの意味で、風向が定まらない状態であることを表しています。
さらに「26025G30KT」のように、風速の後にG+数値が入る場合がありますが、これは最大瞬間風速を表しています。
この例では260度から平均風速25ノット、最大瞬間風速30ノットの意味で、風が強い日によく見られる表現です。
4. 視程
「9999」は視程(目で見て見通せる範囲)を表していて、9999=10km以上の視程の意味です。
同様に5000と報じられていれば、視程=5kmとなります。
なお、この視程はもう少し詳しく言うと、卓越視程というものになります。
卓越視程は一周360度の内、合計180度以上の範囲でその距離が見通せるという視程で、空港周辺の全体的な視界の程度を表しているのです。
5. 現在天気
「-SHSN」は降水現象などを表していて、この場合はしゅう雨性(対流性の雲からなる)弱い雪の意味になります。
記号やアルファベットは強度・周辺現象 / 特性 / 天気現象の組み合わせで報じられますが、以下のとおりです。
強度・周辺現象
・-:弱い
・(空白):並み
・+:強い
・VC:空港周辺で観測されている(Vicinity)
特性
・MI:地上付近の(霧が通報される場合に使用される)
・BC:散在した(霧が通報される場合に使用される)
・PR:部分的に(霧が通報される場合に使用される)
・DR:低い(Drifting)
・BL:高い(Blowing)
・SH:しゅう雨性の(Shower)
・TS:雷電性の(Thunder Storm)
・FZ:着氷性の(Freezing)
天気現象
・DZ:霧雨(Drizzle)
・RA:雨(Rain)
・SN:雪(Snow)
・SG:霧雪(Snow Grain)
・PL:凍雨(Ice Pellet)
・GR:雹(Hail)
・GS:雪あられ/氷あられ(Snow Pellet / Small Hail)
・BR:もや(Mist)
・FG:霧(Fog)
・FU:煙(Smoke)
・VA:火山灰(Volcanic Ash)
・DU:塵(Dust)
・SA:砂(Sand)
・HZ:煙霧(Haze)
・PO:塵旋風(Dust Whirl)
・SQ:スコール(Squall)
・FC:漏斗雲(Funnel Cloud)
・SS:砂塵嵐(Sand Storm)
・DS:砂塵嵐(Dust Storm)
一部を除いて英語表記を略したコードになっていますから、覚えやすいものが多いかと思います。
天気現象としてよく見られるのは、RA=雨、SN=雪、BR=もや、FG=霧の4種類程度なので、押さえておくと良いですね。
6. 雲の情報
「FEW010」や「BKN050」は雲量と雲底高度を表しています。
雲量は全天を8分割した割合で以下のように用語が変わります。
・FEW(Few:フュー)=雲量1/8~2/8
・SCT(Scattered:スキャタード)=雲量3/8~4/8
・BKN(Broken:ブロークン)=雲量5/8~7/8
・OVC(Overcast:オーバーキャスト)=雲量8/8
雲量に続く数字3桁は雲底高度/100ftを表しています。
すなわち、FEW010=雲量1/8~2/8の雲が1000ft、BKN050=雲量5/8~7/8の雲が5000ftに観測されていると解読されるのです。
ちなみに、BKN以上の雲量の雲底高度をCeilling=シーリングと言って、飛行機の離着陸可否判断に用いられます。
7. CAVOK
今回の例では表示されていませんが、観測時に視程が良く、特記すべき雲や天気現象がない場合は「CAVOK」と表示されます。
CAVOK=Cloud and Visibility OKの意味らしく、要するに天気は良好ということです。
8. 気温・露点温度
「M12/M15」はそれぞれ気温と露点温度が示されています。
前半が気温でこの場合はマイナス12度、後半は露点温度でマイナス15度です。
9. 高度計規正値
「Q1021」は飛行機に搭載された気圧高度計を補正する際の値で、ほぼ観測地点の気圧値になります。
Q1021=1021HPaです。
10. RMK
「RMK」以降は備考(Remarks)が付加情報として報じられます。
「1ST010」と「5CU050」は、先ほどの雲量・雲底高度で報じられた、Few 1000ftとBroken 5000ftの詳細を表しています。
STやCUは雲の形を表していて、十種雲形と呼ばれる10種類+1種類のうち8種類がMETARで通報される可能性があります。
・CI:巻雲(Cirrus)※通報されない
・CC:巻積雲(Cirrocumulus)※通報されない
・CS:巻層雲(Cirrostratus)※通報されない
・AC:高積雲(Altcumulus)
・AS:高層雲(Altstratus)
・NS:乱層雲(Nimbostratus)
・SC:層積雲(Stratocumulus)
・ST:層雲(Stratus)
・CU:積雲(Cumulus)
・CB:積乱雲(Cumlonimbus)
・TCU:塔状積雲(Tower Cumulus)※十種雲形ではない
これを踏まえると、1ST010=雲量1/8の”層雲”が1000ft、5CU050=雲量5/8の”積雲”が5000ftに観測されていると読み解けます。
雲形はST=層雲が通報されている場合は視程障害による運航制限、CB=積乱雲は飛行中の乱気流や回避のための経路迂回に繋がると考えられますので、注目すると良いでしょう。
最後の「A3018」は、高度計規正値を水銀柱ミリメートルの単位で表した値です。
A3018=30.18mmHgです。
なお、標準気圧と言われている1013HPa=29.92mmHgとなります。
METAR情報を入手可能なおすすめサイト
METARの情報は様々なサイトで確認することができますが、特に初心者の方はTime-j.netのMETAR情報がお薦めです。
このサイトのMETARでは、原文だけでなく、既に解読された内容も一緒に閲覧することができます。
原文を見て、自身で解読を試みながら答えを確認することができますので、METARの閲覧に不慣れな方にはおすすめです。
METARのページへはトップページから空港の天気→日本の空港→見たい空港と選べばOKですが、Google検索で「○○空港 METAR」と打てば1番目か2番目あたりの検索結果に「日本の空港の天気-METARとTAF-世界時計」と出ますので、アクセスも容易かと思います。
※検索結果から飛んだページが不具合でMETAR情報が空欄の場合、日本の空港→見たい空港と戻って選びなおしてみてください。
終わりに
いかがでしたか?
METARは実際にパイロットや、航空会社の運航管理者、また航空管制官も使用する専門的な気象通報です。
最初はなかなか読み解くのは難しいですが、慣れてくると通報から空港の気象状態を想像できるようになるので、空港で飛行機を見たり写真を撮ったりするのが趣味の方は是非マスターしていただきたいですね。
以上!