飛行機

飛行機の航法の最新技術について解説!~自機の位置を特定するのは意外と難しい~

こんにちは。ころすけです。

「航法」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

航法とは、ある目的地からある目的地まで、迷わず正確にたどり着くまでの技術や方法のことを言います。

目に見える道路やレールに沿って移動する自動車や鉄道と違い、飛行機にとって航法は非常に大切なもので、それゆえに年々進歩している分野でもあるのです。

進化を遂げる航法技術について解説します。

自機の位置を特定するのは意外と難しい

航法とは、ある目的地からある目的地まで正確にたどり着くための方法ですが、重要な要素は2つあります。

それは、①自分の位置を把握することと、②次に向かう先の方向を把握することです。

このうち、重要度で言えば①>>②という具合で、まず自分の位置を把握することが何より大切なのです。

見知らぬ場所で目的地に向かう場合を考えてみると分かりますが、地図や案内を見る場合でも、まず自分の現在地を確認しますよね?それと同じです。

そして飛行機にとって、実は上空で自分の位置を把握するということは、想像以上に難しいことなのです。

下の画像をご覧ください。

雲の上を飛ぶ飛行機

飛行機は空を飛んでいますから、当然、飛行高度よりも下一面に雲が広がることがあり得ます。

この状態で「自分がどこにいるのか?」と聞かれて、即答することはできるでしょうか?

国内であれば、何県の上空を飛んでいるのかさえ地上物標がなければ分かりませんし、ひょっとしたら知らない間に海の上に出ているかもしれません。

当然、自分が次へ向かう方向がどちらかも、自分の位置が分からないことには判断のしようがありません。

これは雲が広がっている場合だけではなく、太平洋のど真ん中を飛行している時も同じですし、ロシアのような大陸上空を飛行している場合でも似たような状況です。

それぐらい、飛行機にとって「自分がどこにいるのか?」を把握するのは難しいことで、航法を考える上で何より重要なのです。

【ひと昔前】飛行機が自分の位置を特定する方法

それでは飛行機がどのように自分の位置を把握するか?ですが、その昔は地上物標を目視で確認する地文航法や、星空を観察する天文航法が使われていました。

ただ、これはさすがに飛行機が飛び始めた大昔のころの話で、ここでのひと昔前の方法とは、旅客運送が当たり前になってから2000年ごろまでの話です。

飛行機は地上施設から発信された電波を受信することで、自分の位置を知り、向かうべき方向を判断していました。

もう少し正確に言うと、発射された電波を手繰り寄せるように、地上施設を電波の道で繋ぐように経路を決めていたのです。

航法用の電波を発信する施設を航法保安無線施設と言うのですが、これにはNDBやVOR/DME、ILSといった施設があります。

NDB(Non Directional radio Beacon:無指向性無線標識施設)やVOR(VHF Omni directional Radio range:超短波全方向式無線標識施設)/DME(Distance Measuring Equipment)は、主に巡航経路上に電波の道を作る航法施設です。

一方でILS(Instrument Landing System)は、着陸する飛行機が滑走路に向かって正確に真っすぐ降りてくるように、地上から電波のガイダンスを発信する装置です。

このようにして、「電波の道をたどる航法」が2、30年前までは主に取られていたのです。

航法保安施設が電波の道を作るイメージ

このうち、ILSは用いた航法は、今なお着陸の際の主たる航法の1つとして使用されています。

しかし、巡航経路や上昇、降下中の経路については、かなりの部分で次に紹介する次世代式の航法に変わってきているのです。

【最新技術】飛行機が自分の位置を特定する方法

2000年代以降になってからは、航空交通の需要増加と航法装置の技術的な進歩が相まって、より発展した航法が用いられるようになります。

それがRNAV(Area Navigation:広域航法)と呼ばれる航法です。

従来までの航法では、無線電波の発信元へ向かうか離れる方向にしか、飛行経路を作ることができませんでした。

もしも無線電波を横切るように飛行した場合、自分の正確な位置や進むべき進路が分からなくなってしまうからです。

RNAVではFMS(Flight Management System)という航法コンピューターを使って、電波で受信した情報や飛行機の挙動から、自機の座標を割り出して航法を行います。

座標と言うのは、東経○○度・北緯○○度というような緯度経度のことです。

飛行機が自機の緯度経度を正確に把握できるようになると、次に向かうべきチェックポイントを緯度経度で示した場合でも、向かうべき方向を判断できます。

これはつまり、これまで地上施設の配置によって制限されていた飛行経路ではなく、地上施設の位置に縛られない柔軟な飛行経路を自由に設定できることに繋がります。

従来航法と次世代航法の比較イメージ

では、最近の飛行機では、自機の座標位置をどのようにして割り出しているのでしょうか?

機種によってはここでは触れない手法を持っているものもありますが、一般に最近の飛行機では、以下の4つの方法で自機位置の座標を割り出すことが可能です。

1. 慣性航法装置を使う方法

まず始めが慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System)を使う方法で、簡単に言えば飛行機が出発点からどちらの向きに何歩進んだのかを、延々と積み上げていく方法です。

物体は静止した状態から移動する際、必ず外部から力(加速度)を受けます。

これは方向を変える時や加速する時、減速する時も同じです。

この受けた力を逐一測定して解析すると、出発地点からその時点までに移動した方向と距離の合計を割り出すことができます。

つまり、最初の出発点の座標を予め登録しておけば、慣性航法装置によって出発点から現在位置を特定できるのです。

慣性航法装置による位置特定のイメージ

実はこの手法は、2000年以前から太平洋上空を飛行する際、既に使われていた技術です。

太平洋上空は航法施設を設置する場所がないですから、早くからRNAVの考え方とほぼ同等の航法が採用されていたのです。

2. VORとDMEからの電波を使う方法

2つ目の方法は、VORからの方位電波と、DMEからの距離情報を解析する方法です。

VOR/DMEはVORとDMEが併設された航法施設のことで、それぞれ方位と飛行機までの距離を教えてくれます。

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「VOR/DMEを使うなんて、ひと昔前のやり方と同じなんじゃないの?」と思うかもしれませんが、ポイントはVOR/DMEに必ずしも向かって飛行するのではなく、電波の情報から相対的に飛行機の緯度経度を算出する点です。

下の図のように、ある地点からの方位と距離を知ることができれば、その点からの相対的な位置を1点に特定することができます。

ここで、ある地点の緯度経度が既に分かっていれば、相対的に自機の緯度経度も割り出せるというわけです。

VOR/DMEによる位置特定のイメージ

このある地点に該当するのがVOR/DMEで、FMSにはデータベースとして緯度経度が予め登録されているのです。

このようにVOR/DMEからの電波をただ辿るのではなく、緯度経度座標を割り出すことに使うわけですから、ひと昔前までのVOR/DMEの使い方とは異なるのです。

これは自機の座標を算出して飛行する、いわゆるRNAVの航法になりますから、ひと昔前まではできなかった無線電波を横切るような経路も飛行可能になるのです。

3. 2つのDMEからの電波を使う方法

3つ目の方法は、2つ目と同じくDMEを使用する方法ですが、2か所のDMEからの距離情報を利用する点がポイントです。

着眼点としてはVOR/DMEを使用する時と同じです。

下の図に示すように、もしもある2点からの距離が分かっている場合、それぞれの点から描いた円弧の交点が自機の位置だと割り出すことができます。

つまり、特定のある2点からの距離が分かれば、自分の位置を把握することができるのです。

ここでもある2点とは2か所のDMEのことを指していて、FMSに登録された既知の座標から、飛行機の座標を割り出すことができるのです。

DME/DMEによる位置特定のイメージ

2か所のDMEを利用してFMSで自機の座標を随時割り出していく方法を、DME/DMEアップデートと言ったりしますが、DME/DMEの方法は先のVOR/DMEやINSを用いた方法よりも精度が高いとされています。

4. GPSを使う方法

最後の方法は、飛行機に限らず、現在では最も一般的な位置特定の方法かもしれません。

今やスマホでは標準装備となった、GPS(Grobal Positioning System)を使用する方法です。

これはGPS衛星からの電波を受信して、測定された座標情報をそのまま使用します。(ちなみに実を言うとGPSは、原理的にはDME/DMEの手法を宇宙と地球上でやるのと同じ)

GPSによる位置特定のイメージ

GPSは先に紹介した、INS、VOR/DME、DME/DMEを用いた方法よりも精度が高いことが特徴です。

なのでFMSはGPS情報を優先して使用するよう、予め位置特定方法の優先順位を決めています。

このため、現在の旅客機では飛行中、ほとんどの場面でGPSを用いた自機位置特定が行われています。

今後の航法装置の主役はGPSです

このように、今後は飛行機が自分自身で位置を把握しながら飛行するRNAV航法が主流になるわけですが、その中でも今後中心になるのはGPSを用いた位置特定の方法です。

GPSは測定精度が高く、かつ利用できる範囲が地上設備の設置エリアに制限されることがありません。

さらにGPSの利用は、緯度経度のような平面上の位置だけでなく、飛行機の高度測定にも広がりつつあります。

先ほど、ILSは今なお着陸の際の主たる航法設備の1つとして使用されていると説明しました。

その大きな理由は、ILSによる降下角ガイダンスが、現時点でも精度が最も高いからです。

ILSは飛行機に対して、平面的な経路だけでなく、降下角のガイダンスも電波の道で示してくれます。

ILSと電波による降下ガイダンスのイメージ

着陸間際の飛行機にとって、降下角のガイダンスは平面的なガイダンスよりも高い精度が求められますが、ここに関しては電波の道を辿る方法が今なお広く利用されています。

最近では、GPSの測定精度を強化するGBAS(Ground Based Augmentation System)と呼ばれる仕組みが開発され、GPSによる降下角ガイダンスを用いた航法が広がりつつあります。

このILS(Instrument Landing System)に変わる航法はGLS(GBAS Landing System)と呼ばれます。

いずれにしても、今後の航空分野における航法のキーワードは「GPS」だと思っていただいて、間違いはないでしょう。

終わりに

いかがでしたか?

飛行機においては、新素材を使用した機材や高効率のエンジンなど、飛行機そのものに関する最新技術の報道は多いように思います。

ですがそれ以上に、飛行機の飛び方=航法の技術も、年々進化を遂げているのです。

興味がある方は是非、飛行機の航法について理解を深めてみてはいかがでしょうか?

 

以上!

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