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飛行機オタク目線で景色を楽しむ!とある便の搭乗レビュー ~ANA335便 中部(名古屋)-熊本~

こんにちは。ころすけです。

みなさんは飛行機に乗るというと、どのような楽しみ方を思い浮かべますか?

「機内ではゆっくりくつろぎたい!通路側の席が良い!」という人も当然いるかと思います。

ですが、「せっかく飛行機に乗るんだから景色を楽しみたい!」「どんな街の上を通過するのか気になる!」という方はやはり多いのではないでしょうか?

僕は断然後者の方でして、やはり飛行機に搭乗する時には窓側の席を選びたくなります。

しかもただ漠然と景色を楽しむだけではなく、飛行機運航の専門知識を絡めた楽しみ方をするのです。

普通の人から見るとちょっとオタク気質な楽しみ方ですが、ひょっとしたら新たな飛行機の楽しみ方の参考になるかもしれません。

幸運にも先日、ANA335便(セントレア-熊本)に搭乗する機会がありました。

そこで今回は、僕がどのような点に注目していたかを交えつつ、フライトの様子をレビューしたいと思います。

ANA335便 セントレア-熊本の基本情報と使用機材

まずは搭乗便の基本情報を押さえておきましょう。

ANAの時刻表ではANA335便 セントレア-熊本の情報は以下のようになっています。

・便名:ANA335便

・区間:中部国際空港セントレア(NGO)-熊本(KMJ)

・出発時刻:17:40

・到着時刻:19:10

・運航機材:DHC-8-Q400

・距離:375ノーティカルマイル

まず注目したいのは運航機材であるDHC-8-Q400の部分ですね。

DHC-8-Q400ってどんな飛行機?と言う方はこちら。

駐機中のQ400の写真

DHC-8-Q400(ディーエイチシーダッシュエイトきゅうよんひゃく)はカナダのデ・ハビランド社製のターボプロップ機です。

愛称としては「きゅうよん」「ダッシュエイト」「ボンきゅう」などがよく聞かれます。

ボンきゅうの「ボン」って何?ってなりそうですが、これにはこの機体の複雑な歴史が関係しています。

DHCとはデ・ハビランド・カナダの頭文字で、元々Q400はデ・ハビランド・カナダというメーカーが開発していました。

その後、デ・ハビランド・カナダはボンバルディア社の民間旅客機部門として買収され、Q400は長らくボンバルディア製と言われてきました。

しかし最近ボンバルディアが民間旅客機部門を整理し、Q400の製造もまた別の会社に売却されます。

その会社が新たにデ・ハビランド・カナダとして再出発したことから、再びデ・ハビランド・カナダ製になったという異色の歴史があるのです。

つまりボンきゅうの「ボン」はボンバルディアの「ボン」なわけで、つい最近までボンバルディア社製であったことに由来します。

これだけでも胸が熱くなる面白い機体ですが、とりあえず第一印象を見て

「えっ?プロペラ機?なんかいまいち…」

と思う方も多いのではないでしょうか。

いやいや、そんなことはありません!

Q400には他のジェット旅客機にはない、乗って楽しいポイントがいくつもあるのです。

それがこちら。

① 高翼機なので翼が景色の邪魔にならない!

② ジェット旅客機よりも低高度を巡航するため、地上が近く見える!

③ ランディングギアが格納される様子が客席から見えて面白い!

④ 徒歩でのボーディングになるため搭乗時の臨場感がGood!

③はとってもマニアックなポイントですが、①と②については単純に景色を楽しみたい人にとっても魅力的なポイントではないでしょうか?

高翼機というのは胴体の上側に翼が付いている機体のことを言います。

さらにQ400はジェット旅客機ほど高高度での飛行に向いていないため、巡航高度がジェット旅客機よりも1万フィート(約3,000m)ほど低空を飛行することになります。

なので、Q400ではどの座席からでも翼が景色の邪魔にならず、特に山などの地上の景色はジェット機から見るよりも間近に迫って見えるのです。

④は好き嫌いがあるかもしれませんが、Q400はパッセンジャーボーディングブリッジを接続することができないので、搭乗する際はバスなどで機側に移動してから徒歩での搭乗になります。

天気の悪い日は最悪ですが、「さあ、これから飛行機に乗るぞ!」という臨場感が湧いてくること間違いなしですね。

セントレア-熊本の運航ルートを確認しよう!

続いては、セントレア-熊本の運航ルートを確認しておきましょう。

景色を楽しむには飛行機がどのようなルートを飛行するかは当然重要な情報ですし、左側の席に座るか右側の席に座るかの判断にも関わります。

まずはセントレアを出発した直後のルートです。

出発からPIONEまでの経路図

セントレアから熊本へ向かう場合、OUMI DEPARTUREというSID(標準出発経路)を辿ります。

このSIDはセントレアを北向きに離陸した場合はVENTOと呼ばれるウェイポイントで西に針路を向けてHIKNEへ、南向きに離陸した場合は離陸後すぐに伊勢湾内で右にほぼ180度の旋回をして、やはりHIKNEに向かう出発経路です。

HIKNEというのは三重県の彦根市からその名前が来ているウェイポイントで、ちょうど琵琶湖のほとりに位置しています。

その後、巡航経路(エンルート)への接続のためにPIONE TRANSITIONという経路を飛行しながら岡山県のPIONEというウェイポイントを目指します。

PIONE(ピオーネ)は葡萄の品種名のようで、葡萄生産で有名な岡山県にゆかりのある名称になっていますね。

この出発経路から分かる通り、セントレアを出発直後は三重県を横断して琵琶湖の景色が、HIKNE通過後はWAKITに至るまで京都の上空を通過し、左手に大阪や神戸の街並みを望むことができそうです。胸が躍りますね。

続いてエンルートの経路ですが、PIONE通過後は次のようにウェイポイントを結んで、熊本空港周辺のKAZMAというウェイポイントを目指します。

PIONE → Y28 → ONDOC → Y452 → OOITA → Y40 → KAZMA

エンルート(PIONEからKAZMA)

ちょうど山陽側の都市上空を通過しながら山口県の手前で針路をやや左に取り、豊後水道を横断して大分経由で熊本空港へ向かいます。

最後はKAZMAを通過して熊本空港に着陸するまでの経路です。

熊本空港の滑走路はRWY07(西側から進入)またはRWY25(東側から進入)の2パターンですが、Q400の場合は風向きによらずRWY07からの進入になります。

と言うのも、RWY25から進入する場合の計器着陸方式には特別な運航承認が必要なのですが、Q400はその運航承認を取得していないのです。

というわけで熊本空港まで着陸する飛行ルートは以下のようになります。

熊本空港への着陸経路

熊本空港の北側を一旦通過して有明海まで出た後、熊本市街の上を通過して熊本空港へ着陸します。

以上がセントレア-熊本空港の飛行経路の全容になるのですが、非常に見どころが多くて楽しいフライトになりそうですね。

いざ搭乗!セントレア-熊本のフライトレビュー

さあ、ここまで下準備が整ったところで、ここからはいよいよ僕が搭乗した実際のフライトのレビューをしたいと思います。

見どころは先ほどの飛行ルートから想像が付くかと思いますので、ここからは写真多めでサクサクいきたいと思います。

搭乗~離陸まで

セントレア空港国際線スポット

↑セントレアの国際線スポットです。少し雲はあるものの、景色を楽しむには十分な晴れ具合でしょうか?

コロナの影響で国際線はほとんど(全便?)飛んでいないわけでして、がらーんとした様子が悲しみを誘いますね…

セントレア空港国内線スポット

↑こちらは国内線スポットの様子。

国内線はゼロと言うわけではないですが、やはり飛行機はちらほらとしかいません。

Q400を真正面から見た画像

↑こちらが今回搭乗するANAウイングスのDHC-8-Q400です。

これは搭乗前に撮った写真ですが、こんな真正面から眺めることは滅多にないので新鮮ですね。雰囲気もいつもと違って見えます。

Q400へ搭乗

↑いよいよ搭乗です。やはり徒歩でのボーディングは風情がありますね。

飛行機自体はボーディングブリッジのあるGATE10のスポットにいたようですが、搭乗口はGATE10の真下にある国内線バスゲートのGATE101で、そのまま外を歩いて乗り込みました。

Q400の機内

↑機内の様子です。左側の席をチョイスしましたが、当然見える景色を計算した上での選択です。

搭乗率は50%ぐらい?という感じでした。

Q400の座席数が74席なので30人ちょっとというところです。

密が気になる昨今では多すぎずちょうど良いぐらいかもしれません。

Q400のエンジン始動

↑エンジンスタートです。

プロペラブレードって思ったよりも胴体に近い位置で回ってるんですよね。

完全に始動すると速すぎてブレードは肉眼で見えなくなるんですが、回転数が少ないとブレードがくっきり見えて若干恐怖を感じます。

Q400は機体も小さいので、ブッシュバックはせずにそのまま自走アウトです。

Q400のメインランディングギア

↑振り返るとメインランディングギアが見えますが、エンジンのカウリングと一体になっています。

普段ジェット旅客機の風景に慣れていると少し違和感がありますが、興味深いです。

↓さあ、いよいよ離陸です。RWY36をタクシーウェイA3Sからのインターセクションデパーチャーでした。

ランディングギアが格納される様子がこれまた興味深いですね!

OUMI DEPARTUREの飛行~ONDOC周辺まで

離陸後、機体は予想通りOUMI DEPARTUREに従って飛行を続けます。

四日市市街

↑離陸してしばらくしてから針路を西に取りました。見えてきたのは四日市の街ですね。

鈴鹿山脈上空

↑さらに鈴鹿山脈を飛び越えて滋賀県を目指します。

琵琶湖付近上空

↑右端に写っている湖は琵琶湖です。つまりこのあたりがウェイポイントHIKNE付近というわけです。

ここまではほぼSID(OUMI DEPARTURE)どおり飛行していることが分かります。

335便はこの後針路をほぼ真西に向けてPIONEを目指します。PIONE TRANSITIONのスタートです。

京都上空

↑何やら開けたエリアが視界に入ってきました。これは京都の街並みです。

↓画像に写っているランドマークを図示してみました。

京都上空(ランドマーク説明付き)

京都はひょっとしたら真下になって見えないかも?と思いましたが、抜群のポジションでしたね。

やや日が傾きかけているのと、薄い雲で視界が悪いのが残念ですが良しとしましょう。

京都タワー拡大

↑頑張って拡大すると京都タワーが確認できます。

伏見区のパチンコ屋拡大

↑ちょっとピントがずれてますが、途中やたらキラキラ光る建物があったので撮りました。

後で調べてみると、どうも伏見区にあるパチンコ屋のよう。

パチコン屋ってこんなに明るいんですねぇ。

GPSにてポジションチェックの様子

↑ここで一旦ポジションチェックです。

知っている方もいるかもしれませんが、飛行機の機内であってもGPSの電波を受信することが可能なのです。(窓にピタッとくっつけて数分粘らないと受信しないことが多いですが…)

もちろん機内モードはオンの状態で、ちゃんと機内モードのアイコンが出ています。

GPSは電波を受信するだけで発するわけではないので、機内モードでも使用可能ですし、もちろん違法性はありません。

ポジションを確認してみると、概ね予想した通りのエリアを飛行していることが分かります。

大阪市街上空

↑しばらくすると大阪の街並みが見えてきました。

真ん中のビル群が梅田周辺で、手前に伊丹空港も確認できます。

こうして見ると、空港の敷地がいかに大きいかを目の当たりにすることができますね。

淡路島付近上空

↑さらに進むと今度は兵庫県に入ります。

淡路島のほぼ全体の形が見えていますね。明石海峡大橋もなんとか確認できます。

神戸空港と関西空港

↑振り返ってみると神戸空港(左)関西国際空港(右)が1つの視界に入ってきました。

こうやって見ると2つの空港が目と鼻の先にあるのがよく分かりますね。

さらに加えて先ほどの伊丹空港もすぐ近くにあるわけですから、3つの空港から離発着する飛行機を取り扱う関西進入管制区の多忙な様子が伝わってきます。

瀬戸大橋付近上空

↑飛行機はさらに進んでこちらは瀬戸大橋。対岸に見える街は香川県の坂出市丸亀市

ぽこんと目立つ小さな山は丸亀市の飯野山だそうです。

このあたりから周りが暗くなり始めて、窓に機内の灯りが映り込むようになり始めました。

写真を撮る上ではちょっと残念な感じです。

広島付近でのポジションチェック

↑さらに進んだところで再びポジションチェックをします。

どうも広島県に入ったあたりで当初のルートからやや南にずれているようなのですが、これはおそらく、管制官からいくつか先のウェイポイントまでDirectの指示が出ているからでしょう。

例えば管制官が「All Nippon 335. Recleared direct OOITA.」と言うと、その地点からウェイポイントOOITAまで、予定のルートを無視して一直線にショートカットすることができるのです。

無線を聞いていたわけではないので詳細は不明ですが、このようなDirectの指示は状況に応じて頻繁に出されるため、このケースもDirectの指示が出たと見て間違いなさそうです。

ここから先、飛行機は豊後水道の海上を飛行するので、地上の景色からは一旦遠ざかります。

OOITA周辺~熊本空港への着陸

335便は順調に飛行して、いよいよ九州エリアに入りました。

実を言うと僕が左側の席をチョイスした一番の理由は、ここから先の景色を一番期待していたからなのですが、こちらを見てください。

阿蘇山付近でポジションチェック

最初にルートを確認した時、335便は熊本空港の北側を一旦西向きに通過するルートを飛行すると言いました。

と言うことは、熊本空港の近くであり、ほぼ真西に位置する阿蘇山のちょうどやや北側を通過することになるのです。

しかもこの段階では着陸に向けて高度を落とし始めていますから、阿蘇の山の景色がより近くダイナミックに見えるはずです。↓

阿蘇山を望む景色のイメージ

さあ、実際の景色を拝ませていただこうじゃありませんか。はいこちら!↓

阿蘇山方面を撮影した画像

マジですか???

ほぼ窓に映り込んだ自分の姿しか映っていませんね…

よーく見ると中央の白い雲は、おそらく阿蘇山の火口から出た噴煙か水蒸気だと思われます。

だから狙い自体に間違いはなかったはずなのです。なかったはずなのですが…いかんせん時間帯が遅すぎました!残念!

熊本市街の夜景

↑周りはすっかり暗くなって夜景が広がっています。

見えているのは熊本市街の夜景ですが、どうにも機内の灯りが映り込んで写真は残念なことこの上ありません。

本当にキレイだったんですけどねぇ。

旋回中に見える熊本空港の滑走路

もはや写真がきれいに撮れるかどうかなどどうでもよく、若干やけくそになっています。

最初に紹介したように熊本空港へは一旦有明海に出た後、左180度旋回をして戻ってくるようなアプローチの仕方をします。

上の写真は有明海上を左旋回中の写真ですが、右端に滑走路の灯火が確認できます。あれが熊本空港RWY07のアプローチライトPAPI(進入角指示灯)です。

これもきれいに収めたかったなぁ。

ランディングギアと熊本の夜景

↑さらにしばらくするとランディングギアが降ろされます。

これもきれいに撮れたら最高の1枚になるでしょうけれど、10年前に買ったコンパクトデジカメの性能にそこまで期待するわけにはいきません。

と、そんなこんなしている間に熊本空港に到着しました!

これにてフライトレビューの終了です!お疲れさまでした。

おまけ。熊本空港の現在

最後におまけですが、現在の熊本空港の様子について紹介しておきます。

僕も知らなかったのですが、現在、熊本空港は旧ターミナルビルの改修中で、2023年の春にニューターミナルがオープンする予定のようです。

リニューアル中の熊本空港ターミナル

では今のターミナルは?と言うと、上の写真の立ち位置から振り返った下の写真が臨時ターミナルビルになっています。↓

熊本空港の臨時ターミナル

ビルと言うよりもプレハブですかね。

元々あった貨物エリアに建てられているようです。

臨時ターミナルの到着ロビー 臨時ターミナルの出発カウンター

↑内部の様子がこちら。上段:到着エリア 下段:出発カウンター

骨組みやダクトがむき出しの構造ですが、当然ながら空港に必要なカウンターなどはちゃんとあります。

考え方によれば、この光景は今しか見られないわけですから、もしも興味があれば一度プレハブ版熊本空港ターミナルを訪れてみてはいかがでしょうか?

サクラコロッケとプレミアム赤牛バーガー

↑お腹がすいたので到着後にプレハブターミナルでいただいたサクラ(馬肉)コロッケ:200円とプレミアム赤牛バーガー:980円です。

ちょっと値は張りましたがおいしかったですよ!

終わりに

いかがでしたか?

今回はちょっとオタク目線で飛行機に搭乗したわけですが、景色の楽しみ方などは参考にしていただけるのではないでしょうか?

飛行機のルートを一から調べるにはそれなりの知識が必要になりますが、最近ではFlight Radar24などのサイトで、過去の便の飛行経路履歴を簡単にレビューすることができます。

飛行機は大体ほぼ同じルートを毎日飛行しているので、過去便の飛行ルートを見れば事前に当日の飛行ルートを予想することが可能なのです。

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みなさんも興味があれば、事前に飛行ルートを把握した上で窓からの景色を楽しんでみてはいかがでしょうか?

僕もまた機会がありましたら、今回叶わなかった阿蘇山の景色を拝めるようにチャレンジしてみたいと思います!

 

以上!



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