こんにちは。ころすけです。
「海外の空港は日本の空港よりも圧倒的に広い」
このような発言を聞くことってありませんか?
まあ単に「広い」という表現だけではいろいろな意味があるわけで、単純に敷地面積の話であったりターミナルビルの広さであったり、滑走路の本数を比べての発言だったりします。
ですが、「総じて日本の空港はどのような要素で考えても狭い」という認識が一般的にはあるような気がします。
かくいう僕も何となくそんなイメージを持っています。
そこでふと思いまして、今回は「空港の敷地面積」という観点で、実際に日本の空港と海外の空港を比較してみました。
果たして日本の空港は本当に狭いのでしょうか?
空港の広さ(敷地面積)を比較!日本代表は羽田空港。
今回比較を行うのは「空港の敷地面積」で、Google Earthの画像を使用しました。
やり方は単純で、Google Earthで特定の空港の画像をコピーし、その上から空港の敷地の縁を辿るように線でなぞります。
なぞって出来上がった輪郭を別画像として保存した後に、比較したい空港の画像と縮尺をそろえて、同じ画像内に重ねるように貼り付けるわけです。
日本の空港の代表は日本で最も敷地面積が広い羽田空港です。
参考までに羽田空港の敷地をGoogle Earth上で縁取ってみると下図のようになります。
赤線内が羽田空港の敷地です。
これから比較する海外の空港でもそうですが、輪郭以外にも滑走路は矩形を使って分かるようにしています。
上の羽田空港では2本ずつ平行な計4本の滑走路があることが分かりますね。
なお、「厳密にどこまでが空港の敷地であるか?」はGoogle Earthの画像上では分かりかねるところがあります。
なのでやや正確性に欠ける点があるかとは思いますが、そこまで厳密にやらなくともおおよその比較は可能かと思いますのでご了承ください。
比較する海外の空港は、離着陸回数や利用客数ランキング、日本発便との関連が深いか、各地域から分散してピックアップすること、などを考慮した以下の11空港です。
① ジョン・F・ケネディー空港(ニューヨーク、アメリカ)
② ロサンゼルス国際空港(ロサンゼルス、アメリカ)
③ シカゴ・オヘア空港(シカゴ、アメリカ)
④ ダラス・フォートワース空港(ダラス、アメリカ)
⑤ ハーツフィールドジャクソン・アトランタ空港(アトランタ、アメリカ)
⑥ フランクフルト空港(フランクフルト、ドイツ)
⑦ シャルル・ド・ゴール空港(パリ、フランス)
⑧ ヒースロー空港(ロンドン、イギリス)
⑨ 北京大興国際空港(北京、中国)
⑩ チャンギ空港(シンガポール)
⑪ シドニー国際空港(シドニー、オーストラリア)
羽田空港と海外の空港の敷地を重ね合わせて比較してみよう!
① ジョン・F・ケネディー空港
まず最初は世界最大の都市ニューヨークの玄関であるジョン・F・ケネディー空港からです。
アメリカの空港ということで、もっとバカでかいかと思っていましたが、重ね合わせて見るとほとんど羽田空港と変わらない大きさであることが分かります。
滑走路の本数も4本と羽田空港と変わりません。
滑走路の長さも長い方から4423m、3682m、3048m、2560mで、4000m級の滑走路がいくつもあるわけではありません。
羽田空港が3360m、3000m、2500m、2500mですから、JFK空港の方が全体的にやや長めです。
このあたりもあってJFK空港の方が若干広いように思えますが、それでもほとんど同じ程度と言えるかと思います。
② ロサンゼルス国際空港
続いては離発着回数で世界第4位(2019)のロサンゼルス国際空港です。
こちらは・・・以外にも羽田空港よりも敷地面積は狭く見えます。
比較しやすいように少し画像を回転させてみました。
これを見ても、ロサンゼルス空港はちょうど羽田空港のA滑走路、C滑走路(北西から南東方向の2本)と国内線ターミナル(A、C滑走路の間)を合わせた敷地よりもやや広い程度です。
ですが注目したいのは、その敷地の中でも滑走路が4本設置されている点です。
しかもその4本は2組に分かれていて、組になった2本はかなり近い位置関係にあります。
このため、滑走路の本数のわりに空港の敷地面積は小さくなっていると言えそうですね。
③ シカゴ・オヘア空港
次はユナイテッド航空のハブ空港であり、2019年には離発着回数世界No.1であったシカゴ・オヘア空港です。
羽田空港と並べて見ると、まずその滑走路の数に驚きます。
なんと合計8本もの滑走路があるのです。
当然、全体の敷地面積も羽田空港よりも随分大きく見えます(1.5倍ぐらい?)
このぐらいになると「やはり世界の空港は広いな」という印象を持つかもしれませんね。
④ ダラス・フォートワース空港
続いてこちらはアメリカン航空のハブ空港で、2019年の離発着回数は世界3位であったダラス・フォートワース空港です。
これもまた圧倒的な広さで滑走路も7本あります。
敷地面積では羽田空港がすっぽり収まるほどで、先ほどのシカゴ・オヘア空港よりも大きいです。
これもまた「さすがアメリカの空港だ」という声が聞こえてきそうな広さと言えるでしょう。
⑤ ハーツフィールドジャクソン・アトランタ空港
さらに続いてはデルタ航空のハブ空港であり、以前は離発着回数が世界1位でしたが、2019年は2位となったアトランタ空港です。
こちらは意外と小さくまとまっていて、面積だけですと羽田空港とさほど変わらないぐらいですが、滑走路は羽田空港よりも1本多い5本になります。
アトランタもまた2ペアの滑走路の間隔が狭く、滑走路本数のわりに敷地面積が小さくなっていますね。
⑥ フランクフルト空港
次はヨーロッパに目を移して、日本からの便も多いフランクフルト空港を見てみましょう。
こちらは少々比較が難しいですが、羽田空港よりも若干広い面積であるように見えます。
フランクフルト空港は北西側の滑走路だけ2800mですが、それ以外の3本は全て4000mと長い滑走路になっています。
特に南北向きに設置された指のように伸びた滑走路の配置は興味深いですね。
フランクフルト空港の周りは比較的畑が広がっているようですが、このような配置を確保できるのも総面積以上に「広い空港」であることの一要素かもしれません。
⑦ シャルル・ド・ゴール空港
前がドイツなら次はフランスでということで、パリのシャルル・ド・ゴール空港です。
こちらも羽田空港の2倍ほどの面積があるように見えます。
滑走路は4本で、さらにその配置のわりにこの広さなので、ターミナルビルやエプロンエリアにかなりの面積があることが想像されますね。
離着陸回数の規模としては羽田と同程度の年間45~50万回ほどですが、空港の敷地面積としてはかなり広い部類に入るのではないでしょうか?
⑧ ヒースロー空港
ドイツ、フランスときたらお次はイギリスです。ロンドンのヒースロー空港も離着陸回数の規模としては羽田やパリと同程度の45~50万回ほどです。
こちらは、なんと羽田空港よりもやや面積が狭く見えるほか、最も驚くのは滑走路が2本しかないことです。
滑走路が2本しかないので、敷地面積がさほど大きくないのは頷けますが、それでいて羽田空港と同等(正確にはやや多い)の離着陸回数を誇るのは別の意味で驚異的です。
これには管制上のからくりなどがあるのですが、離着陸回数が多い空港=滑走路が多い空港=敷地面積が広い空港が必ずしも成り立たないことを表す興味深い例だと思います。
⑨ 北京大興国際空港
次はアジアの空港に目を向けましょう。北京大興国際空港は、最近オープンした北京の新しい空港です。
北京と言えば北京首都国際空港でしたが、収容能力が限界を越えつつあるため、便数を分散するために北京大興空港が新たに作られました。
日本からの便も首都国際空港と大興空港に行く便が分かれていますが、新しい空港ということで大興空港を選びました。
滑走路の数は4本で、敷地面積も羽田空港よりは広いように見受けられます。
横風用の滑走路の配置がフランクフルトと似ているような気がしますが、このようないびつな位置取りができるということは、周辺の土地にある程度選択の自由があるということの表れなのかもしれません。
⑩ チャンギ空港
続いてはシンガポールのチャンギ空港です。
こちらも敷地面積はかなり広めの印象を受けます。
ロサンゼルスやパリなどの例と違って、3本ある滑走路が随分間隔をもって設置されています。
3本はいずれも4000mの長さがあり、敷地面積が大きくなるのもなるほどと言えますね。
実際は一番東側の滑走路は軍用のみであり、民間機用の敷地だけを見るとそこそこの広さの空港と言えるかもしれません。
⑪ シドニー国際空港
最後は南半球からもということで、オーストラリアからシドニー空港です。
こちらは羽田空港の敷地よりはやや狭いように見えますね。
滑走路も3本ですので妥当な広さかもしれません。
シドニー空港は市街地に近く、半分海上に突き出した空港で、羽田空港と周辺環境は近いと言えるかもしれません。
横風用滑走路の配置からも自由に使える土地の広さに制限があることが伺えますね。
まとめ 羽田空港は世界と比べて狭いのか?
ここまで11の空港を比較してみましたが、結論として日本の空港(羽田空港)は狭いのか?というと、「やはり世界の拠点空港の方が敷地面積は広い場合が多い」と言えるかと思います。
ですがシカゴやダラスのような例を除いて、滑走路の本数は世界と肩を並べる数の4本あり、敷地もそこまで圧倒的に狭いわけでもなさそうです。
ロンドン・ヒースローのように滑走路が2本しかない空港もあれば、ロサンゼルスのように2本の滑走路の間隔が狭く、それがゆえに敷地面積がさほど広くない例もあるわけです。
今回は触れませんが、これらの空港は管制上の運用で効率的に飛行機を捌いているのです。
ちょっと当初の趣旨からずれるかもしれませんが、便数が多い=空港も広いとは一概に言えないと発見できたことは、今回の検証で一番興味深い内容かもしれませんね。
以上!