こんにちは。ころすけです。
飛行機に乗っていて、窓の外の翼の動きが気になることはありませんか?
よく見ると、翼にはいろいろなパネルや突起などが付いているのが分かると思います。
その中に、翼のやや根本に近いところでパタパタと動いたり立ち上がったりするパネルが付いているのが見えるかと思います。
これは「スポイラー」と呼ばれる装置になるのですが、どのような働きをしているのかご存知でしょうか?
おそらく、「なんとなく見たことはあるけど、なんのために付いているのか正確には知らない」という人が多いのではないでしょうか?
今回はこのスポイラーについて、その役割を解説します。
スポイラーの役割は3つあります!
スポイラーは展開することによって空気抵抗を増し、同時に発生する揚力を抑える働きがあります。
このスポイラーですが、実はどのタイミングで使用されるかによって大きく3つの働きがあるのです。
その3つとは以下のとおりです。
1.飛行中に飛行機の増速を抑え、降下率を上げる役割
2.着陸後の減速におけるブレーキ補助としての役割
3.旋回時に機体を傾ける際の補助としての役割
これら3つの役割はそれぞれ用途が異なるので、少しずつスポイラーの動きも変わってきます。
これから3つの役割について詳しく解説していきますが、その際にスポイラーの動きについて注目していただきたいポイントがあります。
それは、
・パイロットが意図的に操作しているのか否か
・スポイラーが左右の翼で対称に動いているのかどうか
・開く角度がどのぐらいか
の3点です。
少し理解するのに難しい点があるかもしれませんが、「3つの役割があること」と「動きについて3つのポイントがあること」に着目すると、より発見があり、より理解が深まると思います。
それでは、順番に見ていきましょう。
スポイラーが果たす3つの役割
1.飛行中に飛行機の増速を抑え、降下率を上げる役割
飛行機が目的地に到着する3、40分ほど前から、時折ゴゴゴゴッ!と振動を感じることはありませんか?
そんな時に飛行機の翼上面に目をやると、下の写真のようになっていることがあります。
この翼の上でせり上がっているパネルが「スポイラー」です。
なぜ3、40分ほど前からと述べたかと言うと、大体目的地到着の3、40分ほど前が巡航高度から降下を開始するタイミングだからです。
この時にスポイラーを使う理由は「速度を上げずに効率よく素早く降下するため」になります。
理解をしやすくするために、スキーを例に挙げてみましょう。
飛行機の降下というのは、スキーで斜面を下る時のイメージとよく似ています。
スキーで斜面を下る時、緩やかな斜面であればそれほどスピードも出ずに、うまくブレーキを掛けながら下っていけますよね。
では、麓までいち早く降りようと斜面の急なコースを選んだ場合、どのようなことが起こるでしょうか?
急な斜面を下る場合、降下する角度が上がる分、どんどんスピードが増していってしまうことが想像できると思います。
飛行機の場合もこれと同じで、降下する角度を深くしようとした場合、急になればなるほど降下する速度を上げなければいけなくなってしまうのです。
飛行機には設計上定められた速度の上限があったり、航空管制上守らなければならない速度の上限があったりするので、あまり速度を上げて降下することは望ましくありません。
そんな時にスポイラーを使うと、速度を上げずに降下する角度を深くすることができるのです。
スポイラーが翼の抵抗となってくれるために、増速を抑えるブレーキの役割を果たしてくれるのです。
↑スポイラーを使わない場合
↑スポイラーを使った場合
スポイラーはパイロットがコックピットのレバーを引くことで左右対称に展開します。
また、この時に展開する度合いも、降下角を深めたい度合いによって調整することが可能です。
パイロットが引くレバーの位置を調整することで、スポイラーの展開度合いを変えて降下角を調整することができるのです。
・降下する際のブレーキとすることで速度を上げずに降下角を大きくできる
・左右のスポイラーは左右対称に展開する
・パイロットのレバー操作によって展開し、展開度合い(降下角)を調整可能
2.着陸後の減速におけるブレーキ補助としての役割
飛行機が滑走路に着陸するとすぐに、翼上面のスポイラーがガバッ!っとせり立つのを見たことはありませんか?
この時は下の写真のようになっています。
実はこれ、旅客機ではパイロットが手動で操作しているわけではなく、着陸すると自動的にせり上がるようになっているのです。
機種によって自動モードへの設定が必要だったりしますが、いずれにせよどの飛行機でも着陸時に展開するスポイラーの動きは自動で行われています。
着陸時にスポイラーが展開する理由は、展開して抵抗が増えることでブレーキの補助になってくれるからです。
せり上がったスポイラーパネルがそのまま抵抗になることに加え、スポイラーによって揚力が減少することもブレーキの補助に繋がっています。
揚力が減少すると機体を地面に押し付ける力が増すので、タイヤと地面の間の摩擦力が大きくなってブレーキの効きが良くなるのです。
スポイラーが展開する角度にも注目すると、写真では目いっぱいの角度まで展開しているのが分かると思います。
先ほどの降下角の調整と違い、可能な限り大きなブレーキが効くように作動するので、スポイラーの展開度合いの調整はないのです。
この時もスポイラーは左右の翼で対称な動きをします。
・着陸後に展開することで抵抗が増し、揚力が減って地面との摩擦が増えることでブレーキの補助となる
・左右のスポイラーは対称に展開するが、展開度合いの調整はなく、目いっぱいまでせり上がる
・基本的にパイロットによる操作はなく、着陸後に自動的に作動する
3.旋回時に機体を傾ける際の補助としての役割
最後の役割は少し難しいかもしれません。
飛行機が旋回をするためには飛行機を傾ける必要があり、その動きはエルロンと呼ばれる翼の先の装置によってなされます。
旋回のために飛行機を傾ける理由や、エルロンの働きについては別記事にて詳しく解説していますので、そちらもご覧になってください。↓
下の図のように飛行機は旋回する時、エルロンを使って左右の翼に揚力差を生み出すことにより機体を傾けます。
しかしこの時、左右で揚力に差が付くと、同時に発生する抗力のバランスも左右の翼で崩れてしまうのです。
こうなると抗力の差により、飛行機の機首は旋回方向とは逆向きに振れてしまうのです。
つまり、きれいに旋回するためにはこの抗力のバランスを取ってやる必要があります。
そのために旅客機などのハイテク機ではスポイラーが使われるのですが、この場合は左右非対称に作動する点がポイントです。
抗力が小さくなった片側のスポイラーだけ展開することで、抗力の差を打ち消すようになっているのです。
抗力が小さくなるのは揚力が小さくなる側、すなわちエルロンが上がる側ですから、旋回する時にエルロンと同時にスポイラーも上がるのです。
このようにすることで、機体が旋回していく方向と機体の機軸の方向がずれないようにバランスを取ることができるのです。
また、スポイラーを上げることで揚力も小さくなるわけですから、そもそもエルロンを大きく使わなくても揚力差を生みだす補助にもなります。
このスポイラーの動きですが、パイロットが意図的に調整するわけではありません。
パイロットは機体を傾けようと操縦桿を左右に回すのですが、その時の度合いに合わせてコンピューターが必要なスポイラーの動きを計算し、自動的に動きを調整してくれるのです。
・旋回時の揚力差、抗力差のバランスを取るために使われる
・左右のスポイラーはバランスを取るために必要な側だけが作動する
・スポイラーの展開量はコンピューターで計算され、パイロットは意図的な操作をしない
窓側に座ったらスポイラーに注目してみよう!
いかがでしたか?
少し難しい部分もあったかもしれませんが、飛行機の翼には操縦するための様々な工夫がなされていて、スポイラーもその1つなのです。
スポイラーの働きは1つではなくて、用途によって動きも少しずつ違うことを理解していただければ嬉しいです。
もしもこの記事を読んで興味が湧いた方は、ぜひ飛行機に乗る際に窓の外のスポイラーの動きに注目してみてください。
何も知らずに見ているだけではスポイラーはただバタバタと動くパネルにしか見えませんが、その役割を知った上で見るとまた印象が変わると思いますよ。
以上!